トップ 大阪大学 1992年 理系 第5問

大阪大学 1992年 理系 第5問 解説

数学A/確率数学A/場合の数数学B/確率分布・統計的推測数学1/図形計量テーマ/場合分け
大阪大学 1992年 理系 第5問 解説

方針・初手

1辺の長さが1の正方形の4頂点の座標がすべて整数であることから、各板の辺は必ず座標軸に平行となる。したがって、板は $xy$ 平面上の $1 \times 1$ の格子状の「マス目」に配置されることと同値である。 まずは板を配置できるマス目の総数を求め、その中で「原点を頂点の1つとするマス」がいくつあるかを特定する。 そのうえで、(1) は期待値の線形性(和の期待値は期待値の和)を利用すると、面倒な確率分布の計算を回避して簡潔に答えを導くことができる。

解法1

1辺の長さが1の正方形の4頂点の座標がすべて整数であることから、各板の辺は座標軸に平行である。

条件 (イ) より、板の頂点の $x$ 座標および $y$ 座標は $-n$ 以上 $n$ 以下の整数である。 したがって、1枚の板が占める領域は、ある整数 $k, l$ ($-n \le k \le n-1, -n \le l \le n-1$) を用いて $k \le x \le k+1$ かつ $l \le y \le l+1$ と表される $1 \times 1$ の領域(以下、「マス」と呼ぶ)である。

$k$ の選び方は $n - (-n) = 2n$ 通り、$l$ の選び方も $2n$ 通りあるので、板を配置できるマスの総数は

$$ (2n) \times (2n) = 4n^2 \text{ 個} $$

である。 条件 (ロ) より、4枚の板は重ならないため、これら $4n^2$ 個のマスから異なる4つを選んで板を配置することになる。どの配置も同様に確からしいので、ある特定の1つのマスに板が配置される確率は

$$ \frac{{}_{4n^2-1}\mathrm{C}_{3}}{{}_{4n^2}\mathrm{C}_{4}} = \frac{4}{4n^2} = \frac{1}{n^2} $$

である。

(1)

頂点の1つが原点 $(0,0)$ となるようなマスは、以下の4個である。

求める期待値は、これら4個のマスに配置される板の枚数の期待値である。 期待値の線形性(加法性)により、全体の期待値は「それぞれのマスに板が配置される確率」の和に等しい。 したがって、求める期待値は

$$ 4 \times \frac{1}{n^2} = \frac{4}{n^2} $$

である。

(2)

(1) の結果より、満たすべき条件は

$$ \frac{4}{n^2} \le \frac{1}{100} $$

である。 $n$ は自然数であるから $n^2 > 0$ であり、両辺に $100n^2$ を掛けて整理すると

$$ n^2 \ge 400 $$

$n$ は $2$ 以上の自然数であるから、これを満たす最小の $n$ は

$$ n = 20 $$

である。

解法2

(1) について、期待値の定義に従って確率分布から直接計算する別解を示す。

解法1と同様に、板を配置できるマスの総数は $4n^2$ 個であり、そのうち原点を頂点とするマスは $4$ 個である。 原点を頂点とする4個のマスのうち、$k$ 個($k=0, 1, 2, 3, 4$)のマスに板が配置される確率を $P_k$ とすると、

$$ P_k = \frac{{}_{4}\mathrm{C}_{k} \cdot {}_{4n^2-4}\mathrm{C}_{4-k}}{{}_{4n^2}\mathrm{C}_{4}} $$

となる。求める期待値 $E$ は、定義より

$$ E = \sum_{k=0}^{4} k P_k $$

である。 ここで、組合せの性質 $k \cdot {}_{4}\mathrm{C}_{k} = 4 \cdot {}_{3}\mathrm{C}_{k-1}$ を用いると、

$$ \begin{aligned} E &= \sum_{k=1}^{4} k \cdot \frac{{}_{4}\mathrm{C}_{k} \cdot {}_{4n^2-4}\mathrm{C}_{4-k}}{{}_{4n^2}\mathrm{C}_{4}} \\ &= \frac{4}{{}_{4n^2}\mathrm{C}_{4}} \sum_{k=1}^{4} {}_{3}\mathrm{C}_{k-1} \cdot {}_{4n^2-4}\mathrm{C}_{4-k} \end{aligned} $$

$j = k-1$ とおくと、和の範囲は $j=0$ から $3$ となり、

$$ E = \frac{4}{{}_{4n^2}\mathrm{C}_{4}} \sum_{j=0}^{3} {}_{3}\mathrm{C}_{j} \cdot {}_{4n^2-4}\mathrm{C}_{3-j} $$

ここで、恒等式 $(1+x)^3(1+x)^{4n^2-4} = (1+x)^{4n^2-1}$ の $x^3$ の係数を両辺で比較することで得られる公式(ヴァンデルモンドの畳み込み)

$$ \sum_{j=0}^{3} {}_{3}\mathrm{C}_{j} \cdot {}_{4n^2-4}\mathrm{C}_{3-j} = {}_{4n^2-1}\mathrm{C}_{3} $$

を用いると、

$$ \begin{aligned} E &= \frac{4 \cdot {}_{4n^2-1}\mathrm{C}_{3}}{{}_{4n^2}\mathrm{C}_{4}} \\ &= 4 \times \frac{(4n^2-1)!}{3!(4n^2-4)!} \times \frac{4!(4n^2-4)!}{(4n^2)!} \\ &= 4 \times \frac{4}{4n^2} \\ &= \frac{4}{n^2} \end{aligned} $$

となり、解法1と同じ結果が得られる。 (2) については解法1と同様であるため省略する。

解説

確率変数の和の期待値は、各事象が互いに独立でなくても「それぞれの期待値の和」に等しいという「期待値の線形性」を利用できるかが最大の鍵である。これに気づけば (1) は暗算レベルで処理できる。 解法2のように定義通りに立式することも自然な発想であるが、二項係数の積の和を計算する工夫が求められるため、計算量は増える。このような場合の検算や、より確実な処理として和の期待値の性質は常に意識しておきたい。 問題文の「1辺の長さが1」「頂点が整数座標」という条件から、配置が「格子状のマス目」に限定されることを正確に読み取ることがスタート地点となる。

答え

(1)

$$ \frac{4}{n^2} $$

(2)

$$ n = 20 $$

自分の記録

ログインすると保存できます。

誤りを報告

解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。