大阪大学 2018年 理系 第5問 解説

方針・初手
(1) については、$n$ 試合目から $n+1$ 試合目への遷移を考え、確率 $a_n$ に関する 2 項間漸化式を立てて解く。
(2) については、B が連勝せずにちょうど 2 試合勝つ確率 $b_n$ を求める。アプローチとしては大きく分けて 2 つある。 1つ目は、(1) と同様に漸化式を用いる方法である。「B が $k$ 回勝ち、直前の試合結果が A か B か」という状態を細かく分けて連立漸化式を立てる。 2つ目は、$n$ 試合中 B が勝つ 2 試合の位置(パターン)をすべて数え上げ、それぞれのパターンの確率を計算して足し合わせる直接計算による方法である。
ここでは、漸化式を用いた解法を 解法1、パターンを数え上げる解法を 解法2 として解説する。
解法1
(1)
$n$ 試合目に A が勝つ確率が $a_n$ であるから、B が勝つ確率は $1-a_n$ である。 $n+1$ 試合目に A が勝つのは、以下の 2 つの排反な場合がある。
- $n$ 試合目に A が勝ち、$n+1$ 試合目も A が勝つ(確率 $p$)
- $n$ 試合目に B が勝ち、$n+1$ 試合目に A が勝つ(確率 $q$)
したがって、次の漸化式が成り立つ。
$$ a_{n+1} = p a_n + q(1 - a_n) $$
整理すると、
$$ a_{n+1} = (p - q)a_n + q $$
特性方程式 $\alpha = (p - q)\alpha + q$ を解くと、$(1 - p + q)\alpha = q$ となる。 問題の条件 $0 < p < 1, 0 < q < 1$ より $1 - p > 0$ かつ $q > 0$ であるから、$1 - p + q > 0$ であり、分母は $0$ にならない。よって、
$$ \alpha = \frac{q}{1 - p + q} $$
漸化式は次のように変形できる。
$$ a_{n+1} - \frac{q}{1 - p + q} = (p - q) \left( a_n - \frac{q}{1 - p + q} \right) $$
ゆえに、数列 $\left\{ a_n - \frac{q}{1 - p + q} \right\}$ は、初項 $a_1 - \frac{q}{1 - p + q}$、公比 $p - q$ の等比数列である。 初期条件より 1 試合目に A が勝つ確率は $a_1 = p$ であるから、初項は
$$ a_1 - \frac{q}{1 - p + q} = p - \frac{q}{1 - p + q} = \frac{p(1 - p + q) - q}{1 - p + q} = \frac{(p - q)(1 - p)}{1 - p + q} $$
したがって、一般項は次のようになる。
$$ a_n - \frac{q}{1 - p + q} = \frac{(p - q)(1 - p)}{1 - p + q} (p - q)^{n-1} $$
$$ a_n = \frac{q}{1 - p + q} + \frac{1 - p}{1 - p + q} (p - q)^n $$
(2)
$n$ 試合目終了時点で、B が連勝せずにちょうど $k$ 回勝っており、かつ $n$ 試合目に A が勝つ確率を $A_k(n)$、B が勝つ確率を $B_k(n)$ とする。 求める確率 $b_n$ は、$b_n = A_2(n) + B_2(n)$ である。
問題の条件(B は連勝しない)から、B が勝った次の試合は必ず A が勝つ。したがって、各 $k$ について次の漸化式が成り立つ。
$$ \begin{cases} A_k(n+1) = p A_k(n) + q B_k(n) \\ B_k(n+1) = (1 - p) A_{k-1}(n) \end{cases} $$
1 試合目の結果より、初期条件は $A_0(1) = p, B_1(1) = 1 - p$ であり、これ以外の $A_k(1), B_k(1)$ はすべて $0$ である。これを $k=0, 1, 2$ の順に解いていく。
(i) $k=0$ のとき
$B_0(n) = 0$ より、$A_0(n+1) = p A_0(n)$ となる。 $A_0(1) = p$ であるから、$A_0(n) = p^n$ である。
(ii) $k=1$ のとき
$n \geqq 2$ において、$B_1(n) = (1 - p) A_0(n-1) = (1 - p) p^{n-1}$ となる。 これを $A_1(n+1)$ の式に代入すると、
$$ A_1(n+1) = p A_1(n) + q(1 - p) p^{n-1} $$
両辺を $p^{n+1}$ で割ると、
$$ \frac{A_1(n+1)}{p^{n+1}} = \frac{A_1(n)}{p^n} + \frac{q(1 - p)}{p^2} $$
数列 $\left\{ \frac{A_1(n)}{p^n} \right\}$ は、公差 $\frac{q(1 - p)}{p^2}$ の等差数列である。 ここで、$A_1(2) = p A_1(1) + q B_1(1) = p \cdot 0 + q(1 - p) = q(1 - p)$ より、初項に相当する値は $\frac{A_1(2)}{p^2} = \frac{q(1 - p)}{p^2}$ である。 したがって、$n \geqq 2$ において、
$$ \frac{A_1(n)}{p^n} = \frac{A_1(2)}{p^2} + (n - 2) \frac{q(1 - p)}{p^2} = (n - 1) \frac{q(1 - p)}{p^2} $$
$$ A_1(n) = (n - 1) q (1 - p) p^{n-2} $$
(iii) $k=2$ のとき
$n \geqq 3$ において、$B_2(n) = (1 - p) A_1(n-1) = (1 - p) \cdot (n - 2) q (1 - p) p^{n-3}$ より、
$$ B_2(n) = (n - 2) q (1 - p)^2 p^{n-3} $$
これを $A_2(n+1)$ の式に代入すると、
$$ A_2(n+1) = p A_2(n) + q \cdot (n - 2) q (1 - p)^2 p^{n-3} $$
両辺を $p^{n+1}$ で割ると、
$$ \frac{A_2(n+1)}{p^{n+1}} = \frac{A_2(n)}{p^n} + (n - 2) \frac{q^2 (1 - p)^2}{p^4} $$
$n \geqq 3$ に対して、階差数列の和をとると、
$$ \frac{A_2(n)}{p^n} = \frac{A_2(3)}{p^3} + \sum_{j=3}^{n-1} (j - 2) \frac{q^2 (1 - p)^2}{p^4} $$
ここで $A_2(3) = p A_2(2) + q B_2(2)$ であるが、$n=2$ の時点で B が 2 回勝つことは連勝を意味するため、$A_2(2) = 0, B_2(2) = 0$ となり、$A_2(3) = 0$ である。 したがって、
$$ \frac{A_2(n)}{p^n} = 0 + \frac{q^2 (1 - p)^2}{p^4} \sum_{k=1}^{n-3} k = \frac{(n - 3)(n - 2)}{2} \frac{q^2 (1 - p)^2}{p^4} $$
$$ A_2(n) = \frac{(n - 2)(n - 3)}{2} q^2 (1 - p)^2 p^{n-4} $$
以上より、求める確率 $b_n$ は、
$$ \begin{aligned} b_n &= A_2(n) + B_2(n) \\ &= \frac{(n - 2)(n - 3)}{2} q^2 (1 - p)^2 p^{n-4} + (n - 2) q (1 - p)^2 p^{n-3} \\ &= (n - 2) q (1 - p)^2 p^{n-4} \left\{ \frac{n - 3}{2} q + p \right\} \end{aligned} $$
解法2
(2) の別解
$n$ 試合の勝敗結果のうち、B が連勝せずにちょうど 2 試合勝つパターンを分類して確率を求める。 $n$ 試合中 A は $n-2$ 試合、B は 2 試合勝つ。
(i) $n$ 試合目が A の場合
B が勝つ 2 試合は $1$ 試合目から $n-1$ 試合目の間にあり、連勝しないため、B は必ず A と A の間、または左端(1試合目)に位置する。 $n-2$ 個の A を並べたとき、その左端および A 同士の間は $(n-2)$ 箇所ある。この $(n-2)$ 箇所から 2 箇所を選んで B を入れると、条件を満たす勝敗パターンがすべて得られる。 したがって、このパターンの総数は ${}_{n-2}\mathrm{C}_{2} = \frac{(n-2)(n-3)}{2}$ 通りである。
これらの各パターンの確率は、1試合目の勝者が誰であるかにかかわらず一定になる。
- 1試合目が A のとき(確率は $p$): 2 つの B はどちらも直前が A であるため、「A が勝った次の試合に B が勝つ」遷移が 2 回起こる。B の直後は必ず A なので、「B が勝った次の試合に A が勝つ」遷移も 2 回起こる。残る $n-5$ 回の遷移はすべて「A の次に A」である。 確率は $p \cdot (1-p)^2 \cdot q^2 \cdot p^{n-5} = p^{n-4} q^2 (1-p)^2$ となる。
- 1試合目が B のとき(確率は $1-p$): 1 つ目の B には直前の試合がなく、直後は A である。2 つ目の B は直前も直後も A である。よって、「A の次に B」が 1 回、「B の次に A」が 2 回起こる。残る $n-4$ 回の遷移はすべて「A の次に A」である。 確率は $(1-p) \cdot (1-p)^1 \cdot q^2 \cdot p^{n-4} = p^{n-4} q^2 (1-p)^2$ となる。
いずれの場合も確率は等しいため、(i) の条件を満たす確率は以下のようになる。
$$ \frac{(n - 2)(n - 3)}{2} p^{n-4} q^2 (1 - p)^2 $$
(ii) $n$ 試合目が B の場合
B は連勝しないため、$n-1$ 試合目は必ず A である。もう 1 つの B は、$1$ 試合目から $n-2$ 試合目までのどこかにある。 これは、$n-2$ 個の A を並べたとき、その左端および A 同士の間の $(n-2)$ 箇所から 1 箇所を選んで B を入れる方法に等しい。 したがって、このパターンの総数は ${}_{n-2}\mathrm{C}_{1} = n-2$ 通りである。
これらの各パターンの確率も一定になる。
- 1試合目が A のとき(確率は $p$): 1 つ目の B は直前も直後も A である。2 つ目の B($n$試合目)は直前が A で直後の試合はない。よって、「A の次に B」が 2 回、「B の次に A」が 1 回起こる。「A の次に A」は $n-4$ 回。 確率は $p \cdot (1-p)^2 \cdot q^1 \cdot p^{n-4} = p^{n-3} q (1-p)^2$ となる。
- 1試合目が B のとき(確率は $1-p$): 1 つ目の B は直前がなく直後が A である。2 つ目の B は直前が A で直後の試合はない。よって、「A の次に B」が 1 回、「B の次に A」が 1 回起こる。「A の次に A」は $n-3$ 回。 確率は $(1-p) \cdot (1-p)^1 \cdot q^1 \cdot p^{n-3} = p^{n-3} q (1-p)^2$ となる。
いずれの場合も確率は等しいため、(ii) の条件を満たす確率は以下のようになる。
$$ (n - 2) p^{n-3} q (1 - p)^2 $$
(i) と (ii) は排反であるから、求める確率 $b_n$ はこれらの和である。
$$ \begin{aligned} b_n &= \frac{(n - 2)(n - 3)}{2} p^{n-4} q^2 (1 - p)^2 + (n - 2) p^{n-3} q (1 - p)^2 \\ &= (n - 2) q (1 - p)^2 p^{n-4} \left\{ \frac{n - 3}{2} q + p \right\} \end{aligned} $$
解説
(1) は確率漸化式の基本問題である。特性方程式から得られる値の分母が $0$ にならないことの確認は忘れてはならない。
(2) は「B の勝利数」と「連勝の有無」という条件が加わるため、難易度が上がる。 解法1のように、状態を拡張して連立漸化式を立てる方法は、機械的な計算で答えに辿り着けるため、見落としや数え間違いを防ぎやすい強力な手法である。 解法2のようにパターンを数え上げる場合は、「勝敗の並び方が異なっても、条件を満たせば確率が一定になる」という美しい性質を利用すると計算量を減らすことができる。これは、1試合目の勝敗が A の場合は初期確率に $p$ がかかる一方で遷移 $A \to B$ が 1 回増え、B の場合は初期確率に $1-p$ がかかる一方で遷移 $A \to B$ が 1 回減るため、結果的に $(1-p)$ と $p$ の乗数が相殺されることによる。
答え
(1)
$$ a_n = \frac{q}{1 - p + q} + \frac{1 - p}{1 - p + q} (p - q)^n $$
(2)
$$ b_n = (n - 2) q (1 - p)^2 p^{n-4} \left\{ \frac{n - 3}{2} q + p \right\} $$
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