大阪大学 2019年 理系 第2問 解説

方針・初手
与えられた漸化式 $z_n = (1 - w)z_{n-1} + wz_{n-2}$ を変形して $z_n$ の一般項を求めることから始める。
係数の和が $(1 - w) + w = 1$ であることに着目し、$z_n - z_{n-1} = -w(z_{n-1} - z_{n-2})$ と変形することで、数列 $\{z_n\}$ の階差数列が等比数列になることを利用する。これにより $z_n$ を $w$ を用いて表し、各設問の条件を代入して図形や確率を処理していく。
解法1
漸化式 $z_n = (1 - w)z_{n-1} + wz_{n-2} \quad (n \ge 3)$ は、次のように変形できる。
$$ z_n - z_{n-1} = -w(z_{n-1} - z_{n-2}) $$
数列 $\{z_{n+1} - z_n\}$ は、初項 $z_2 - z_1 = (1 - w) - 1 = -w$、公比 $-w$ の等比数列である。したがって、$n \ge 1$ について次が成り立つ。
$$ z_{n+1} - z_n = (-w)^n $$
$n \ge 2$ のとき、$z_n$ は階差数列の和を用いて次のように表される。
$$ z_n = z_1 + \sum_{k=1}^{n-1} (z_{k+1} - z_k) = 1 + \sum_{k=1}^{n-1} (-w)^k $$
ここで $w \neq -1$ (すなわち $-w \neq 1$)のとき、等比数列の和の公式より
$$ z_n = 1 + \frac{-w(1 - (-w)^{n-1})}{1 - (-w)} = 1 - \frac{w(1 - (-w)^{n-1})}{1 + w} = \frac{1 + w - w + w(-w)^{n-1}}{1 + w} = \frac{1 - (-w)^n}{1 + w} $$
この式は $n=1$ のとき $z_1 = \frac{1 - (-w)}{1+w} = 1$ となり、$n=1$ でも成立する。また、$w = -1$ のときは、
$$ z_n = 1 + \sum_{k=1}^{n-1} 1^k = 1 + (n - 1) = n $$
となる。
(1)
$a = 4, b = 3$ のとき、
$$ w = \cos\frac{4\pi}{6} + i\sin\frac{4\pi}{6} = \cos\frac{2\pi}{3} + i\sin\frac{2\pi}{3} = \frac{-1 + \sqrt{3}i}{2} $$
である。このとき $-w = \frac{1 - \sqrt{3}i}{2} = \cos\left(-\frac{\pi}{3}\right) + i\sin\left(-\frac{\pi}{3}\right)$ であるから、各階差ベクトル $z_{k+1} - z_k$ は大きさが $1$ で、直前の階差ベクトルから偏角が $-\frac{\pi}{3}$ ずつ回転していくことを意味する。
順に計算すると、
$$ z_1 = 1 $$
$$ z_2 = z_1 + (-w) = 1 + \left(\frac{1}{2} - \frac{\sqrt{3}}{2}i\right) = \frac{3}{2} - \frac{\sqrt{3}}{2}i $$
$$ z_3 = z_2 + (-w)^2 = z_2 + \left(-\frac{1}{2} - \frac{\sqrt{3}}{2}i\right) = 1 - \sqrt{3}i $$
$$ z_4 = z_3 + (-w)^3 = z_3 - 1 = -\sqrt{3}i $$
$$ z_5 = z_4 + (-w)^4 = z_4 + \left(-\frac{1}{2} + \frac{\sqrt{3}}{2}i\right) = -\frac{1}{2} - \frac{\sqrt{3}}{2}i $$
$$ z_6 = z_5 + (-w)^5 = z_5 + \left(\frac{1}{2} + \frac{\sqrt{3}}{2}i\right) = 0 $$
$$ z_7 = z_6 + (-w)^6 = 0 + 1 = 1 = z_1 $$
したがって、点 $z_1, z_2, \cdots, z_7$ をこの順に線分で結ぶと、原点を一つの頂点とし、時計回りに描かれる一辺の長さが $1$ の正六角形となる。
(2)
$a = 2, b = 1$ のとき、
$$ w = \cos\frac{2\pi}{4} + i\sin\frac{2\pi}{4} = i $$
である。$w \neq -1$ であるから、一般項の式に $w = i, n = 63$ を代入して、
$$ z_{63} = \frac{1 - (-i)^{63}}{1 + i} $$
ここで $(-i)^4 = 1$ より、
$$ (-i)^{63} = (-i)^{60} \cdot (-i)^3 = 1^{15} \cdot i = i $$
したがって、
$$ z_{63} = \frac{1 - i}{1 + i} = \frac{(1 - i)^2}{(1 + i)(1 - i)} = \frac{1 - 2i - 1}{2} = -i $$
(3)
$z_{63} = 0$ となる条件を考える。
$w = -1$ のときは $z_{63} = 63 \neq 0$ となるため不適である。$w \neq -1$ のとき、$z_{63} = 0$ となるのは
$$ \frac{1 - (-w)^{63}}{1 + w} = 0 \iff (-w)^{63} = 1 $$
のときである。$w = \cos\theta + i\sin\theta$ (ただし $\theta = \frac{a\pi}{3+b}$)とおくと、$-w = \cos(\theta + \pi) + i\sin(\theta + \pi)$ であるから、ド・モアブルの定理より
$$ (-w)^{63} = \cos(63(\theta + \pi)) + i\sin(63(\theta + \pi)) = 1 $$
これが成り立つための条件は、$k$ を整数として
$$ 63(\theta + \pi) = 2k\pi \iff \theta = \frac{2k - 63}{63}\pi $$
となることである。ここで $2k - 63$ は奇数であるから、$\theta$ は $\frac{\text{奇数}}{63}\pi$ の形となる。また、$w \neq -1$ より $\theta \neq \pi + 2l\pi$ ($l$ は整数)、すなわち $\theta$ は 奇数$\times\pi$ ではない。
$\theta = \frac{a}{3+b}\pi$ であるから、条件を満たすには、分数 $\frac{a}{3+b}$ を通分して分母を $63$ としたとき分子が奇数となり、かつ $\frac{a}{3+b}$ 自身が奇数でないことが必要十分である。
さいころの目より $1 \le a \le 6, 1 \le b \le 6$ であるから、$4 \le 3+b \le 9$。これを満たす $(a, b)$ を $3+b$ の値で場合分けして探す。
(i)
$3+b = 4$ ($b = 1$) のとき
$\frac{a}{4} = \frac{63a}{252} = \frac{\text{奇数}}{63}$ となるには、$63a = 4 \times \text{奇数}$ となることが必要。よって $a$ は $4$ の倍数となり、$a = 4$ のみ。このとき $\frac{a}{3+b} = 1$ (奇数) となり、$w = -1$ となるため不適。
(ii)
$3+b = 5$ ($b = 2$) のとき
$\frac{a}{5} = \frac{\text{奇数}}{63}$ となるには $63a = 5 \times \text{奇数}$ より $a$ は $5$ の倍数。$a = 5$ のとき $\frac{a}{3+b} = 1$ となり不適。
(iii)
$3+b = 6$ ($b = 3$) のとき
$\frac{a}{6} = \frac{21a}{126} = \frac{\text{奇数}}{63} \iff 21a = 2 \times \text{奇数}$
よって $a$ は偶数。$a = 2, 4, 6$ を調べる。
- $a = 2$ のとき $\frac{2}{6} = \frac{21}{63}$ (分子は奇数) かつ $1$ でないため適する。
- $a = 4$ のとき $\frac{4}{6} = \frac{42}{63}$ (分子は偶数) となり不適。
- $a = 6$ のとき $\frac{6}{6} = 1$ となり不適。 よって $(a, b) = (2, 3)$ は適する。
(iv)
$3+b = 7$ ($b = 4$) のとき
$\frac{a}{7} = \frac{9a}{63} = \frac{\text{奇数}}{63}$
分子 $9a$ が奇数になればよいので、$a$ は奇数。$a = 1, 3, 5$ はすべて $\frac{a}{7} < 1$ を満たし、適する。 よって $(a, b) = (1, 4), (3, 4), (5, 4)$。
(v)
$3+b = 8$ ($b = 5$) のとき
$\frac{a}{8} = \frac{\text{奇数}}{63} \iff 63a = 8 \times \text{奇数}$ より $a$ は $8$ の倍数。さいころの目においてこれを満たす $a$ は存在しない。
(vi)
$3+b = 9$ ($b = 6$) のとき
$\frac{a}{9} = \frac{7a}{63} = \frac{\text{奇数}}{63}$
分子 $7a$ が奇数になればよいので、$a$ は奇数。$a = 1, 3, 5$ はすべて $\frac{a}{9} < 1$ を満たし、適する。 よって $(a, b) = (1, 6), (3, 6), (5, 6)$。
以上より、条件を満たす $(a, b)$ の組は
$$ (2, 3), (1, 4), (3, 4), (5, 4), (1, 6), (3, 6), (5, 6) $$
の $7$ 通りである。全事象は $6 \times 6 = 36$ 通りであるから、求める確率は $\frac{7}{36}$ である。
解説
隣接3項間の漸化式 $z_n = (1 - w)z_{n-1} + wz_{n-2}$ は、係数の和が $1$ になることから階差数列を利用する基本形である。(1) は複素数平面における等比数列の図形的意味(回転と等長移動)を問うており、ここでは絶対値が $1$ の複素数をかけているため正多角形が現れる。(3) は偏角に関する条件から整数問題に帰着させる良問である。等比数列の和の公式を用いる際の $w \neq -1$ という場合分けと除外条件を忘れないように注意したい。
答え
(1)
複素数平面上の点 $1$, $\frac{3}{2} - \frac{\sqrt{3}}{2}i$, $1 - \sqrt{3}i$, $-\sqrt{3}i$, $-\frac{1}{2} - \frac{\sqrt{3}}{2}i$, $0$ をこの順に結んでできる正六角形。(作図略)
(2)
$-i$
(3)
$\frac{7}{36}$
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