東北大学 1968年 文系 第3問 解説

注意
画像の一部が不鮮明で、特に第1の不等式が $(\vec{p}, \vec{q}) \leqq 1$ のようにも見えますが、$\vec{q}$ が未定義であるため、文脈から $(\vec{p}, \vec{p}) \leqq 1$ と解釈して解答解説を作成します。
方針・初手
ベクトル $\vec{p}$ を成分表示 $\vec{p} = (x, y)$ でおき、与えられた内積の不等式を $x, y$ の代数的な不等式に変換する。 (1) では、それらが表す3つの円の内部・外部の共通部分を図示する。境界となる円同士の交点を正確に求めることが第一歩である。 (2) は、領域 $D$ 内の「異なる2点」を結ぶ線分上の点の集合を考える問題である。これは $D$ の凸包(convex hull)を考えたうえで、端点(円弧上の点や頂点)のうち、真の内分点として表現できないものを除外する作業となる。
解法1
(1)
$\vec{p} = (x, y)$ とおく。内積の定義より、与えられた不等式は以下のように書き換えられる。
$$ (\vec{p}, \vec{p}) \leqq 1 \iff x^2 + y^2 \leqq 1 $$
$$ (\vec{p} - \vec{a}, \vec{p} - \vec{a}) \geqq 1 \iff (x - 1)^2 + (y - 1)^2 \geqq 1 $$
$$ (\vec{p} - \vec{b}, \vec{p} - \vec{b}) \geqq 1 \iff (x + 1)^2 + (y - 1)^2 \geqq 1 $$
これらが表す領域は、原点を中心とする半径 $1$ の円の内部(境界含む)であり、かつ点 $(1, 1)$ を中心とする半径 $1$ の円の外部(境界含む)、かつ点 $(-1, 1)$ を中心とする半径 $1$ の円の外部(境界含む)である。
境界となる円をそれぞれ $C_0 : x^2 + y^2 = 1$、$C_A : (x - 1)^2 + (y - 1)^2 = 1$、$C_B : (x + 1)^2 + (y - 1)^2 = 1$ とする。 $C_0$ と $C_A$ の交点を求める。
$$ \begin{cases} x^2 + y^2 = 1 \\ x^2 + y^2 - 2x - 2y + 1 = 0 \end{cases} $$
第2式から第1式を引いて整理すると、
$$ -2x - 2y + 2 = 0 \iff x + y = 1 $$
これを $x^2 + y^2 = 1$ に代入して解くと、$(x, y) = (1, 0), (0, 1)$ となる。 同様にして、$C_0$ と $C_B$ の交点は $(x, y) = (-1, 0), (0, 1)$ となる。
したがって、求める領域 $D$ は、これら3つの円弧で囲まれた部分となる。
(2)
点 $S(x, y)$ は、領域 $D$ 内の異なる2点 $Q(x_1, y_1), R(x_2, y_2)$ を結ぶ線分上の点であるから、$0 < t < 1$ なる実数 $t$ を用いて次のように表される。
$$ x = tx_1 + (1 - t)x_2, \quad y = ty_1 + (1 - t)y_2 $$
まず、領域 $D$ に属する任意の点 $(X, Y)$ について、(1) で求めた交点を通る直線との関係を調べる。 $(X - 1)^2 + (Y - 1)^2 \geqq 1$ を展開すると、
$$ X^2 + Y^2 - 2X - 2Y + 2 \geqq 1 $$
$D$ の点は $X^2 + Y^2 \leqq 1$ を満たすので、これを上式に適用すると、
$$ 1 - 2X - 2Y + 2 \geqq X^2 + Y^2 - 2X - 2Y + 2 \geqq 1 $$
$$ 3 - 2(X + Y) \geqq 1 \implies X + Y \leqq 1 $$
同様に、$(X + 1)^2 + (Y - 1)^2 \geqq 1$ と $X^2 + Y^2 \leqq 1$ から、
$$ -X + Y \leqq 1 $$
が得られる。すなわち、$D$ 内のすべての点は $X + Y \leqq 1$ および $-X + Y \leqq 1$ を満たす。
$Q, R \in D$ であるから、これらを内分する点 $S(x, y)$ についても、
$$ x + y = t(x_1 + y_1) + (1 - t)(x_2 + y_2) \leqq t \cdot 1 + (1 - t) \cdot 1 = 1 $$
$$ -x + y = t(-x_1 + y_1) + (1 - t)(-x_2 + y_2) \leqq t \cdot 1 + (1 - t) \cdot 1 = 1 $$
が成り立つ。 さらに、$Q \neq R$ であり、関数 $f(X, Y) = X^2 + Y^2$ は狭義凸関数であるため、
$$ x^2 + y^2 < t(x_1^2 + y_1^2) + (1 - t)(x_2^2 + y_2^2) \leqq t \cdot 1 + (1 - t) \cdot 1 = 1 $$
となる。したがって、点 $S$ の座標は以下の不等式系を満たす。
$$ x^2 + y^2 < 1 \quad \text{かつ} \quad x + y \leqq 1 \quad \text{かつ} \quad -x + y \leqq 1 $$
逆に、この不等式系を満たす領域(これを $E$ とする)内の任意の点 $S$ が、条件を満たすことを確認する。
(i) $S$ が直線 $x + y = 1$ 上(ただし $x^2 + y^2 < 1$ より $0 < x < 1$)にあるとき $S$ は $D$ に属する2点 $(1, 0)$ と $(0, 1)$ の内分点として表せる。
(ii) $S$ が直線 $-x + y = 1$ 上(ただし $x^2 + y^2 < 1$ より $-1 < x < 0$)にあるとき $S$ は $D$ に属する2点 $(-1, 0)$ と $(0, 1)$ の内分点として表せる。
(iii) $S$ が $E$ の内部($x + y < 1, -x + y < 1, x^2 + y^2 < 1$)にあるとき $S$ を中心とする十分小さな円を考え、その円の直径の両端を $Q, R$ とすれば、$Q, R \in D$ にとることができるため、内分点として表せる。
以上より、点 $S$ の動く範囲は領域 $E$ である。
解説
(1) は基本的な不等式の領域図示問題である。境界となる円同士の交点を正確に計算することで、領域の形状(単位円の内部から、上部の2つの円弧分をえぐり取った形)が明らかになる。
(2) は「異なる2点を結ぶ線分の通過領域」を問う問題であり、図形的には「凸包(convex hull)」を考えることに相当する。えぐれている部分の頂点同士を結ぶ線分は領域に含まれるが、円弧 $x^2 + y^2 = 1$ は狭義凸な曲線であるため、その上の点は「領域内の異なる2点の真の内分点」になり得ない(もし内分点になるとすれば、両端点は円盤の外側に飛び出してしまう)という事実が最大のポイントである。
答え
(1) 領域 $D$ は、以下の3つの不等式を同時に満たす部分である。
$$ x^2 + y^2 \leqq 1, \quad (x - 1)^2 + (y - 1)^2 \geqq 1, \quad (x + 1)^2 + (y - 1)^2 \geqq 1 $$
図示すると、円 $x^2 + y^2 = 1$ の内部(境界含む)のうち、点 $(1, 0)$ と $(0, 1)$ を結ぶ円弧 $(x - 1)^2 + (y - 1)^2 = 1$ の下側、および点 $(-1, 0)$ と $(0, 1)$ を結ぶ円弧 $(x + 1)^2 + (y - 1)^2 = 1$ の下側の部分となる。境界線はすべて含む。
(2) 点 $S$ の動く範囲は、以下の不等式を同時に満たす部分である。
$$ x^2 + y^2 < 1, \quad x + y \leqq 1, \quad -x + y \leqq 1 $$
図示すると、円 $x^2 + y^2 = 1$ の内部のうち、直線 $x + y = 1$ の下側かつ直線 $-x + y = 1$ の下側の部分となる。 境界線については、
- 線分 $x + y = 1$ ($0 < x < 1$) は含む
- 線分 $-x + y = 1$ ($-1 < x < 0$) は含む
- 円弧 $x^2 + y^2 = 1$ ($y < 0$) は含まない
- 3つの頂点 $(1, 0), (-1, 0), (0, 1)$ は含まない
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