東京工業大学 1961年 理系 第4問 解説

方針・初手
線分 $AB$ の中点を原点とする座標系を設定し、定数 $a$ と点 $C$ の座標を表すパラメータ $c$ を用いて各円の中心や半径を表す。 2つの円の共通外接線をヘッセの標準形(法線ベクトルを用いた形)で設定し、中心からの距離の条件から接線のパラメータを決定する。その後、接点 $P, Q$ をベクトルを用いて表し、中点 $M$ の座標からパラメータ $c$ を消去して軌跡の図形を求める。
解法1
線分 $AB$ の長さを $2a$ $(a>0)$ とし、$AB$ の中点を原点 $O$、直線 $AB$ を $x$ 軸とする座標系をとる。 このとき、$A(-a, 0), B(a, 0)$ と表せる。 また、任意の点 $C$ は線分 $AB$ 上の点であるから、$C(c, 0)$ $(-a < c < a)$ とする。
線分 $AC, BC$ を直径とする円をそれぞれ $C_1, C_2$ とし、その中心を $O_1, O_2$、半径を $r_1, r_2$ とすると、
$$ O_1 \left( \frac{c-a}{2}, 0 \right), \quad r_1 = \frac{a+c}{2} $$
$$ O_2 \left( \frac{c+a}{2}, 0 \right), \quad r_2 = \frac{a-c}{2} $$
となる。
共通外接線の1つを $l$ とし、その法線ベクトルを $\vec{n} = (\cos\alpha, \sin\alpha)$ とする。 $l$ の方程式は原点からの距離に関するパラメータ $p$ を用いて $x \cos\alpha + y \sin\alpha = p$ と表せる。 中心 $O_1, O_2$ から直線 $l$ までの距離はそれぞれ $r_1, r_2$ であり、$O_1, O_2$ は $l$ に関して同じ側にあるため、
$$ \frac{c-a}{2} \cos\alpha - p = -r_1 = -\frac{a+c}{2} \quad \cdots (1) $$
$$ \frac{c+a}{2} \cos\alpha - p = -r_2 = -\frac{a-c}{2} \quad \cdots (2) $$
が成り立つ(右辺の符号を正に置いた場合は $p$ の符号が逆転するだけで結果は同値である)。
(2) の両辺から (1) の両辺を引くと、
$$ a \cos\alpha = c \implies \cos\alpha = \frac{c}{a} $$
これより、$\sin\alpha$ は次のように求まる。
$$ \sin\alpha = \pm \sqrt{1 - \left(\frac{c}{a}\right)^2} = \pm \frac{\sqrt{a^2-c^2}}{a} $$
直線 $l$ 上の接点 $P, Q$ は、円の中心から法線ベクトル $\vec{n}$ 方向にそれぞれ $r_1, r_2$ だけ進んだ点であるから、位置ベクトルは
$$ \vec{OP} = \vec{OO_1} + r_1 \vec{n}, \quad \vec{OQ} = \vec{OO_2} + r_2 \vec{n} $$
と表せる。 線分 $PQ$ の中点 $M(x, y)$ の位置ベクトル $\vec{OM}$ は、
$$ \begin{aligned} \vec{OM} &= \frac{\vec{OP} + \vec{OQ}}{2} \\ &= \frac{\vec{OO_1} + \vec{OO_2}}{2} + \frac{r_1+r_2}{2} \vec{n} \end{aligned} $$
ここで、右辺の各項は次のように計算できる。
$$ \frac{\vec{OO_1} + \vec{OO_2}}{2} = \left( \frac{c}{2}, 0 \right) $$
$$ \frac{r_1+r_2}{2} = \frac{a}{2} $$
したがって、$\vec{OM}$ は以下のようになる。
$$ \vec{OM} = \left( \frac{c}{2}, 0 \right) + \frac{a}{2} (\cos\alpha, \sin\alpha) $$
$x, y$ 成分についてそれぞれ比較すると、
$$ x = \frac{c}{2} + \frac{a}{2} \cdot \frac{c}{a} = c $$
$$ y = 0 + \frac{a}{2} \left( \pm \frac{\sqrt{a^2-c^2}}{a} \right) = \pm \frac{\sqrt{a^2-c^2}}{2} $$
となる。 点 $C$ が線分 $AB$ 上を動くとき、$-a < c < a$ であるから $x$ の変域は $-a < x < a$ となる。 $y$ についての式を変形して両辺を2乗すると、
$$ y^2 = \frac{a^2-c^2}{4} = \frac{a^2-x^2}{4} \implies x^2 + 4y^2 = a^2 $$
したがって、点 $M$ は楕円 $x^2 + 4y^2 = a^2$ 上の点であり、$x$ の変域から長軸の端点 $(\pm a, 0)$ は除く。
解法2
図形的な性質を用いた別解を示す。 線分 $AB$ の長さを $2a$ とし、その中点を原点 $O$、直線 $AB$ を $x$ 軸にとる。 円 $C_1, C_2$ の中心を $O_1, O_2$、半径を $r_1, r_2$ とし、共通外接線を $l$、接点を $P, Q$ とする。
接線の性質より $O_1 P \perp l, O_2 Q \perp l$ であるから、$O_1 P \parallel O_2 Q$ となり、四角形 $O_1 P Q O_2$ は台形(または長方形)をなす。 線分 $PQ$ の中点を $M$、線分 $O_1 O_2$ の中点を $N$ とすると、台形の中点連結定理より
$$ MN \parallel O_1 P, \quad MN = \frac{r_1+r_2}{2} $$
が成り立つ。 ここで、$O_1$ は $AC$ の中点、$O_2$ は $BC$ の中点であるから、線分 $O_1 O_2$ の長さは
$$ O_1 O_2 = \frac{1}{2} AC + \frac{1}{2} BC = \frac{1}{2} AB = a $$
で一定である。 同様に、$MN$ の長さも一定となる。
$$ MN = \frac{1}{2} (r_1 + r_2) = \frac{1}{2} \cdot \frac{AB}{2} = \frac{a}{2} $$
また、$N$ は $O_1 O_2$ の中点であり、各々の座標を考えれば $N$ は線分 $OC$ の中点でもある。
点 $M$ から $x$ 軸に下ろした垂線の足を $H$ とすると、$MN \perp l$ より $\angle MNH = \angle P O_1 O_2$ (これを $\theta$ とする)となる。 中心間の距離と半径の差を考えると、$\cos\theta = \frac{|r_1-r_2|}{O_1 O_2} = \frac{|c|}{a}$ とわかる($c$ は $O$ から $C$ の $x$ 座標)。 よって、直角三角形 $MNH$ において
$$ NH = MN \cos\theta = \frac{a}{2} \cdot \frac{|c|}{a} = \frac{|c|}{2} $$
となり、$H$ は $N$ からさらに $C$ 方向に $\frac{|c|}{2}$ 進んだ点、すなわち点 $C$ と完全に一致する。 したがって、$M$ の $x$ 座標は常に $C$ の $x$ 座標 $c$ と等しい。
このとき $y$ 座標の絶対値は、
$$ MH = MN \sin\theta = \frac{a}{2} \sqrt{1 - \left(\frac{c}{a}\right)^2} = \frac{\sqrt{a^2-c^2}}{2} $$
となる。 以後は解法1と同様にして、$M(x, y)$ と置くことで $x^2 + 4y^2 = a^2$ を得る。
解説
幾何と座標計算(ベクトル)の融合問題である。 直線の方程式を傾きなどを置いて計算しようとすると処理が非常に煩雑になるが、法線ベクトルや図形的性質(台形の中点連結定理)を利用すると、極めてすっきりと解き進めることができる。 特に、解法1で用いた「中心から接点へのベクトル」を利用する表現は、円の接線を扱う際の強力な定石である。 また、計算を進めると点 $M$ の $x$ 座標が常に点 $C$ の $x$ 座標に一致するという美しい性質が現れるのが本問の興味深い点である。
答え
線分 $AB$ の中点を中心とし、線分 $AB$ を長軸、長さが $AB$ の半分の線分を短軸とする楕円。(ただし、長軸の端点 $A, B$ を除く)
(※線分 $AB$ の中点を原点 $O$、直線 $AB$ を $x$ 軸にとり $AB=2a$ としたとき、方程式 $x^2 + 4y^2 = a^2$ $(-a < x < a)$ で表される図形)
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