東京工業大学 1985年 理系 第5問 解説

方針・初手
3人の状況は対等であるため、特定の1人(たとえば自分)に注目して得点の期待値を計算する。 自分が引いたカードの数が $k$ であり、かつ自分だけが最大数となる条件を数式で表し、そのときの「確率と得点の積」をすべて足し合わせることで期待値を求める。
解法1
3人を X, Y, Z とし、各人が引いたカードの数をそれぞれ $x, y, z$ とする。これらは $1$ から $n$ までの整数をとる。 対称性から、誰の得点の期待値も等しいため、Xの得点の期待値を求める。 3人がカードを引く結果の全事象は $n^3$ 通りであり、これらは同様に確からしい。
Xだけが最大数を出したときのみ、Xに得点が発生する。 このとき、$x=k$ ($1 \le k \le n$) とすると、Y, Z は $k$ より小さい数を出さなければならない。したがって、 $1 \le y \le k-1$ かつ $1 \le z \le k-1$ を満たす必要がある。($k=1$ のときは条件を満たす $y, z$ は存在せず、Xの得点は $0$ となる) このような $(y, z)$ の組は、各 $k$ に対して $(k-1)^2$ 通り存在する。
Aの場合
Xだけが最大数 $k$ を出したとき、Xの得点は $k$ である。 この事象が起こる確率は $\frac{(k-1)^2}{n^3}$ であるから、Aの場合の期待値 $E_A$ は
$$ E_A = \sum_{k=1}^n k \cdot \frac{(k-1)^2}{n^3} = \frac{1}{n^3} \sum_{k=1}^n k(k-1)^2 $$
となる。$\sum$ の計算を工夫するため、$m = k-1$ とおく。$k=1$ のとき $m=0$ であり、$k=n$ のとき $m=n-1$ となる。
$$ \sum_{k=1}^n k(k-1)^2 = \sum_{m=1}^{n-1} (m+1)m^2 $$
$$ = \sum_{m=1}^{n-1} (m^3 + m^2) $$
$$ = \frac{1}{4}(n-1)^2 n^2 + \frac{1}{6}(n-1)n(2n-1) $$
$$ = \frac{n(n-1)}{12} \left\{ 3n(n-1) + 2(2n-1) \right\} $$
$$ = \frac{n(n-1)(3n^2 - 3n + 4n - 2)}{12} $$
$$ = \frac{n(n-1)(3n^2 + n - 2)}{12} $$
$$ = \frac{n(n-1)(n+1)(3n-2)}{12} $$
よって、求める期待値 $E_A$ は
$$ E_A = \frac{1}{n^3} \cdot \frac{n(n-1)(n+1)(3n-2)}{12} = \frac{(n-1)(n+1)(3n-2)}{12n^2} $$
Bの場合
Xだけが最大数 $k$ を出したとき、Xの得点は $y+z$ である。 各 $(x, y, z) = (k, y, z)$ の事象が起こる確率は $\frac{1}{n^3}$ である。 したがって、Bの場合の期待値 $E_B$ は
$$ E_B = \sum_{k=1}^n \sum_{y=1}^{k-1} \sum_{z=1}^{k-1} (y+z) \cdot \frac{1}{n^3} $$
となる。ここで、期待値の計算に必要な和 $\sum_{y=1}^{k-1} \sum_{z=1}^{k-1} (y+z)$ を計算する。
$$ \sum_{y=1}^{k-1} \sum_{z=1}^{k-1} (y+z) = \sum_{y=1}^{k-1} \left( \sum_{z=1}^{k-1} y + \sum_{z=1}^{k-1} z \right) $$
$$ = \sum_{y=1}^{k-1} \left\{ y(k-1) + \frac{1}{2}k(k-1) \right\} $$
$$ = (k-1) \sum_{y=1}^{k-1} y + \frac{1}{2}k(k-1) \sum_{y=1}^{k-1} 1 $$
$$ = (k-1) \cdot \frac{1}{2}k(k-1) + \frac{1}{2}k(k-1) \cdot (k-1) $$
$$ = k(k-1)^2 $$
これを $E_B$ の式に代入すると、
$$ E_B = \frac{1}{n^3} \sum_{k=1}^n k(k-1)^2 $$
となり、これはAの場合の期待値の計算式と全く同一になる。 よって、
$$ E_B = \frac{(n-1)(n+1)(3n-2)}{12n^2} $$
解説
AとBで得点の定め方が異なるにもかかわらず期待値が一致するのは、Xが単独で最大数 $k$ を出したという条件下において、「他の2人が出した数の和 $y+z$」の平均が $k$ に等しくなるためである(対称性から $y$ の平均が $\frac{k}{2}$、$z$ の平均が $\frac{k}{2}$ となる)。 また、$\sum_{k=1}^n k(k-1)^2$ の計算においては、展開して各乗の和の公式を用いるよりも、$m=k-1$ のように置き換えることで計算ミスを防ぎやすくなる。
答え
Aの場合: $\frac{(n-1)(n+1)(3n-2)}{12n^2}$
Bの場合: $\frac{(n-1)(n+1)(3n-2)}{12n^2}$
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