東京工業大学 1991年 理系 第4問 解説

方針・初手
- (1)は $x \geqq 0$ における導関数 $f'(x)$ の符号条件を考える。$f(x)$ が増加し続けるためには、 $x \geqq 0$ で常に $f'(x) \geqq 0$ が成り立つ必要がある。軸の位置による場合分けを用いて、$(a, b)$ の条件を求める。
- (2)は逆関数の定積分を直接計算するのではなく、$y = f(x)$ の置換積分を用いて $x$ の定積分に変換する。その後、(1)で求めた $(a,b)$ の条件を用いて、得られた式の最小値を求める。
解法1
(1) $f(x) = x^3 + ax^2 + (b-a-1)x$ より、導関数は以下となる。
$$ f'(x) = 3x^2 + 2ax + b - a - 1 $$
$f(x)$ が $x \geqq 0$ で増加するための条件は、$x \geqq 0$ のすべての $x$ において $f'(x) \geqq 0$ が成り立つことである。
$g(x) = f'(x)$ とおき、平方完成する。
$$ g(x) = 3\left(x + \frac{a}{3}\right)^2 - \frac{a^2}{3} + b - a - 1 $$
放物線 $y = g(x)$ の軸は直線 $x = -\frac{a}{3}$ である。この軸の位置によって場合分けを行う。
(i) 軸が $x \geqq 0$ の範囲にあるとき
$-\frac{a}{3} \geqq 0$、すなわち $a \leqq 0$ のとき、 $x \geqq 0$ における $g(x)$ の最小値は頂点の $y$ 座標 $g\left(-\frac{a}{3}\right)$ である。
条件は $g\left(-\frac{a}{3}\right) \geqq 0$ であるから、以下の不等式を得る。
$$ -\frac{a^2}{3} + b - a - 1 \geqq 0 $$
$$ b \geqq \frac{1}{3}a^2 + a + 1 $$
(ii) 軸が $x < 0$ の範囲にあるとき
$-\frac{a}{3} < 0$、すなわち $a > 0$ のとき、 $x \geqq 0$ における $g(x)$ は単調に増加するため、最小値は $g(0)$ である。
条件は $g(0) \geqq 0$ であるから、以下の不等式を得る。
$$ b - a - 1 \geqq 0 $$
$$ b \geqq a + 1 $$
以上より、点 $(a, b)$ の満たす範囲 $G$ は、
$$ \begin{cases} b \geqq \frac{1}{3}a^2 + a + 1 & (a \leqq 0) \\ b \geqq a + 1 & (a > 0) \end{cases} $$
これを図示すると、放物線 $b = \frac{1}{3}a^2 + a + 1$ の $a \leqq 0$ の部分と、直線 $b = a + 1$ の $a > 0$ の部分をつないだ曲線を境界とし、その境界線を含む上側の領域となる。(なお、点 $(0, 1)$ において放物線と直線は傾き $1$ で滑らかに接続される)
(2) 求める定積分を $I = \int_{0}^{b} f^{-1}(y) dy$ とおく。
$y = f(x)$ と置換積分を行う。両辺を微分すると $dy = f'(x) dx$ である。
積分区間について確認する。$y=0$ のとき $f(0) = 0$ より $x=0$ である。また、$x=1$ のときの $f(x)$ の値を調べると、
$$ f(1) = 1^3 + a\cdot 1^2 + (b - a - 1)\cdot 1 = b $$
となる。$f(x)$ は $x \geqq 0$ で単調増加であるから、$y$ が $0$ から $b$ まで変化するとき、$x$ は $0$ から $1$ まで変化する。
よって、定積分は以下のように書き直せる。
$$ I = \int_{0}^{1} x f'(x) dx $$
部分積分法を用いて計算を進める。
$$ I = \Bigl[x f(x)\Bigr]_0^1 - \int_{0}^{1} f(x) dx $$
$$ = 1 \cdot f(1) - 0 - \int_{0}^{1} \{x^3 + ax^2 + (b-a-1)x\} dx $$
$$ = b - \left[ \frac{1}{4}x^4 + \frac{a}{3}x^3 + \frac{b-a-1}{2}x^2 \right]_0^1 $$
$$ = b - \left( \frac{1}{4} + \frac{a}{3} + \frac{b-a-1}{2} \right) $$
$$ = b - \frac{1}{4} - \frac{a}{3} - \frac{b}{2} + \frac{a}{2} + \frac{1}{2} $$
$$ = \frac{1}{6}a + \frac{1}{2}b + \frac{1}{4} $$
点 $(a,b)$ は(1)で求めた範囲 $G$ を動くため、この条件下での $I$ の最小値を求める。
(ア) $a \leqq 0$ のとき
条件 $b \geqq \frac{1}{3}a^2 + a + 1$ を用いて $b$ を消去し、下方評価を行う。
$$ I \geqq \frac{1}{6}a + \frac{1}{2}\left(\frac{1}{3}a^2 + a + 1\right) + \frac{1}{4} $$
$$ = \frac{1}{6}a^2 + \frac{2}{3}a + \frac{3}{4} $$
$$ = \frac{1}{6}(a^2 + 4a) + \frac{3}{4} $$
$$ = \frac{1}{6}(a + 2)^2 - \frac{4}{6} + \frac{3}{4} $$
$$ = \frac{1}{6}(a + 2)^2 + \frac{1}{12} $$
$a \leqq 0$ において、$a = -2$ のとき最小値 $\frac{1}{12}$ をとる。このとき $b = \frac{1}{3}(-2)^2 - 2 + 1 = \frac{1}{3}$ となり、等号を成立させる点 $\left(-2, \frac{1}{3}\right)$ は $G$ 内に存在する。
(イ) $a > 0$ のとき
条件 $b \geqq a + 1$ を用いて同様に評価する。
$$ I \geqq \frac{1}{6}a + \frac{1}{2}(a + 1) + \frac{1}{4} = \frac{2}{3}a + \frac{3}{4} $$
$a > 0$ であるため、$I > \frac{3}{4}$ となる。
(ア)、(イ) より、 $a \leqq 0$ で得られた最小値 $\frac{1}{12}$ と $a > 0$ の範囲の下限 $\frac{3}{4}$ を比較すると $\frac{1}{12} < \frac{3}{4}$ であるから、$I$ の最小値は $\frac{1}{12}$ である。
解法2
(2) 逆関数の定積分を図形的に評価する。
$x \geqq 0$ において $y = f(x)$ は単調増加であり、$f(0) = 0$、$f(1) = b$ である。$xy$ 平面上において、曲線 $y = f(x)$ と $y$ 軸、および直線 $y = b$ で囲まれた部分の面積が $\int_{0}^{b} f^{-1}(y) dy$ に相当する。
この面積は、長方形の面積から $x$ 軸側の面積を引くことで求められるため、以下の関係式が成り立つ。
$$ \int_{0}^{b} f^{-1}(y) dy = 1 \cdot b - \int_{0}^{1} f(x) dx $$
これを計算する。
$$ = b - \int_{0}^{1} \{x^3 + ax^2 + (b-a-1)x\} dx $$
$$ = b - \left[ \frac{1}{4}x^4 + \frac{a}{3}x^3 + \frac{b-a-1}{2}x^2 \right]_0^1 $$
$$ = \frac{1}{6}a + \frac{1}{2}b + \frac{1}{4} $$
ここで、求める値を $k = \frac{1}{6}a + \frac{1}{2}b + \frac{1}{4}$ とおく。これを $b$ について解くと以下のようになる。
$$ b = -\frac{1}{3}a + 2k - \frac{1}{2} $$
これは $ab$ 平面上において、傾きが $-\frac{1}{3}$、 $b$ 切片が $2k - \frac{1}{2}$ の直線を表す。点 $(a, b)$ が領域 $G$ を動くとき、この直線が領域 $G$ と共有点をもつような $b$ 切片の最小値を考えればよい。
$a > 0$ における領域の境界線 $b = a + 1$ は傾きが $1$ であり、傾きが負の直線と接することはないため、放物線 $b = \frac{1}{3}a^2 + a + 1 \ (a \leqq 0)$ と接するときを調べる。
放物線の接線の傾きが $-\frac{1}{3}$ となる $a$ の値を求める。
$$ \frac{d}{da}\left(\frac{1}{3}a^2 + a + 1\right) = -\frac{1}{3} $$
$$ \frac{2}{3}a + 1 = -\frac{1}{3} $$
$$ a = -2 $$
これは $a \leqq 0$ を満たす。このときの接点の座標は $\left(-2, \frac{1}{3}\right)$ であり、直線がこの接点を通るときに切片、すなわち $k$ も最小となる。
したがって求める最小値は、
$$ k = \frac{1}{6}(-2) + \frac{1}{2}\left(\frac{1}{3}\right) + \frac{1}{4} = -\frac{1}{3} + \frac{1}{6} + \frac{1}{4} = \frac{1}{12} $$
解説
- (1)は微分して2次関数の定符号問題に帰着させる典型的な問題である。定義域が $x \geqq 0$ と制限されているため、軸の位置に着目した丁寧な場合分けが求められる。
- (2)は「逆関数の定積分」というテーマの頻出問題である。逆関数を直接求めることはできないため、$y = f(x)$ による置換積分を用いるか、長方形の面積を用いた図形的な関係式を利用して $x$ の積分に持ち込むのが定石である。
- 関数の最小化については、解法1のように1文字消去して2次関数の最小値に帰着させる代数的な手法と、解法2のように線形計画法の考え方を用いて図形的に視覚化する手法がある。どちらでも対応できるようにしておきたい。
答え
(1)
$ab$ 平面において、放物線 $b = \frac{1}{3}a^2 + a + 1$ の $a \leqq 0$ の部分と、直線 $b = a + 1$ の $a > 0$ の部分を境界とし、境界線を含む上側の領域。(図は省略)
(2)
$\frac{1}{12}$
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