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東京大学 2010年 文系 第3問 解説

数学A/確率テーマ/確率漸化式
東京大学 2010年 文系 第3問 解説

方針・初手

1回の操作で箱 $L$ のボールの個数がどのように変化するかを、現在の個数で場合分けして整理する。最初の1回の操作による状態遷移から、残り回数の操作で目標の状態(ボールが30個)に達する確率の漸化式を立てる。これが状態遷移を伴う確率漸化式の定石である。

解法1

(1)

1回の操作で箱 $L$ のボールの個数 $x$ がどのように変化するかを考える。

(i)

$0 \leqq x \leqq 15$ のとき 表が出た場合、箱 $R$ から箱 $L$ に $x$ 個移すため、箱 $L$ のボールは $2x$ 個になる。 裏が出た場合、箱 $L$ から箱 $R$ に $x$ 個移すため、箱 $L$ のボールは0個になる。

箱 $L$ のボールが0個になった場合、それ以降の操作で移すボールの個数は0個となり、ボールの個数は0個のまま変化しない。したがって、その後に箱 $L$ のボールが30個になる確率は0であるから、$m \geqq 1$ において $P_{m-1}(0) = 0$ となる。

これより、$m \geqq 2$ のとき、1回目の操作による場合分けから以下の式が成り立つ。

$$ P_m(x) = \frac{1}{2} P_{m-1}(2x) + \frac{1}{2} P_{m-1}(0) = \frac{1}{2} P_{m-1}(2x) $$

(ii)

$16 \leqq x \leqq 30$ のとき 表が出た場合、箱 $R$ から箱 $L$ に $30-x$ 個移すため、箱 $L$ のボールは $x + (30-x) = 30$ 個になる。 裏が出た場合、箱 $L$ から箱 $R$ に $30-x$ 個移すため、箱 $L$ のボールは $x - (30-x) = 2x - 30$ 個になる。

箱 $L$ のボールが30個になった場合、それ以降の操作で移すボールの個数は0個となり、ボールの個数は30個のまま変化しない。したがって、その後に箱 $L$ のボールが30個になる確率は1であるから、$m \geqq 1$ において $P_{m-1}(30) = 1$ となる。

これより、$m \geqq 2$ のとき、1回目の操作による場合分けから以下の式が成り立つ。

$$ P_m(x) = \frac{1}{2} P_{m-1}(30) + \frac{1}{2} P_{m-1}(2x-30) = \frac{1}{2} + \frac{1}{2} P_{m-1}(2x-30) $$

(2)

(1) で得られた漸化式を用いて、$P_{2n}(10)$ を求める。

$x=10$ は $0 \leqq x \leqq 15$ を満たすので、(i) の式を用いると

$$ P_m(10) = \frac{1}{2} P_{m-1}(20) $$

ここで $x=20$ は $16 \leqq x \leqq 30$ を満たすので、(ii) の式を用いると

$$ P_{m-1}(20) = \frac{1}{2} + \frac{1}{2} P_{m-2}(10) $$

これらをまとめると、

$$ P_m(10) = \frac{1}{2} \left( \frac{1}{2} + \frac{1}{2} P_{m-2}(10) \right) = \frac{1}{4} P_{m-2}(10) + \frac{1}{4} $$

$m=2n$($n$ は自然数)とすると、

$$ P_{2n}(10) = \frac{1}{4} P_{2(n-1)}(10) + \frac{1}{4} $$

この漸化式を変形すると、

$$ P_{2n}(10) - \frac{1}{3} = \frac{1}{4} \left( P_{2(n-1)}(10) - \frac{1}{3} \right) $$

となるので、数列 $\{ P_{2n}(10) - \frac{1}{3} \}$ は公比 $\frac{1}{4}$ の等比数列である。

初項に対応する $P_2(10)$ を求める。$m=2$ のとき、上記の漸化式より

$$ P_2(10) = \frac{1}{4} P_0(10) + \frac{1}{4} $$

$P_0(10)$ は「0回の操作の後(すなわち初期状態)で箱 $L$ のボールが30個である確率」である。初期状態では箱 $L$ のボールは10個なので条件を満たさず、$P_0(10) = 0$ である。よって、

$$ P_2(10) = \frac{1}{4} $$

これより、数列 $\{ P_{2n}(10) - \frac{1}{3} \}$ の初項は

$$ P_2(10) - \frac{1}{3} = \frac{1}{4} - \frac{1}{3} = -\frac{1}{12} $$

したがって、一般項は

$$ P_{2n}(10) - \frac{1}{3} = -\frac{1}{12} \left( \frac{1}{4} \right)^{n-1} = -\frac{1}{3} \left( \frac{1}{4} \right)^n $$

$$ P_{2n}(10) = \frac{1}{3} \left\{ 1 - \left( \frac{1}{4} \right)^n \right\} $$

解説

状態遷移を整理し、漸化式を立てる典型的な確率の問題である。吸収壁(ボールが0個または30個になるとそこから状態が変化しない)をもつランダムウォークの一種として捉えることができる。操作回数 $m$ について順方向に追うのではなく、1回目の操作結果をもとに $m-1$ 回の確率へ帰着させる考え方が本問の要となる。また、$P_0(x)$ という「0回操作した後の確率」を正しく解釈できるかが計算の完遂に影響する。

答え

(1)

$0 \leqq x \leqq 15$ のとき、$y=2x$ として

$$ P_m(x) = \frac{1}{2} P_{m-1}(2x) $$

$16 \leqq x \leqq 30$ のとき、$y=2x-30$ として

$$ P_m(x) = \frac{1}{2} P_{m-1}(2x-30) + \frac{1}{2} $$

(2)

$$ P_{2n}(10) = \frac{1}{3} \left\{ 1 - \left( \frac{1}{4} \right)^n \right\} $$

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