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東京大学 2022年 文系 第4問 解説

数学A/確率数学C/平面ベクトルテーマ/確率漸化式テーマ/場合分け
東京大学 2022年 文系 第4問 解説

方針・初手

コインの裏が出るたびに、進む方向が $\vec{v_0}, \vec{v_1}, \vec{v_2}$ の順にローテーションすることに着目する。 $N$ 回のコイン投げ全体を「裏が出たタイミング」で区切り、それぞれの区間で出た表の回数を文字でおく。 $\vec{v_0}, \vec{v_1}, \vec{v_2}$ は互いに $120^\circ$ の角をなす単位ベクトルであるため、原点 $O$ に戻る条件は「各方向へ進んだ回数がすべて等しいこと」に帰着される。

解法1

$N$ 回のコイン投げのうち、裏が $K$ 回出たとする。 最初から1回目の裏が出るまでに出た表の回数を $a_0$、$j$ 回目の裏が出てから $j+1$ 回目の裏が出るまで($j=K$ のときは最後まで)に出た表の回数を $a_j$ $(0 \le j \le K)$ とする。 $a_0, a_1, \dots, a_K$ は非負整数であり、その和は表の総回数 $N-K$ に等しい。

$$ \sum_{j=0}^{K} a_j = N - K $$

$n$ 回目のコイン投げで表が出たとき、1回目から $n$ 回目までの裏の回数を $k$ とすると、点 $X$ は $\vec{v_k}$ の方向に $1$ だけ移動する。 したがって、各 $j$ $(0 \le j \le K)$ について、$\vec{v_j}$ の方向への移動回数は $a_j$ 回である。 点 $X_N$ の位置ベクトルは次のように表される。

$$ \overrightarrow{OX_N} = \sum_{j=0}^{K} a_j \vec{v_j} $$

ここで $\vec{v_k} = \left( \cos \frac{2k\pi}{3}, \sin \frac{2k\pi}{3} \right)$ であり、$\vec{v_{k+3}} = \vec{v_k}$ が成り立つ。 また、$\vec{v_0} + \vec{v_1} + \vec{v_2} = \vec{0}$ より $\vec{v_2} = -\vec{v_0} - \vec{v_1}$ である。 $A = \sum_{j \equiv 0 \pmod 3} a_j$、$B = \sum_{j \equiv 1 \pmod 3} a_j$、$C = \sum_{j \equiv 2 \pmod 3} a_j$ とおくと、

$$ \overrightarrow{OX_N} = A \vec{v_0} + B \vec{v_1} + C \vec{v_2} = (A - C)\vec{v_0} + (B - C)\vec{v_1} $$

$\vec{v_0}$ と $\vec{v_1}$ は一次独立であるから、$X_N = O \iff \overrightarrow{OX_N} = \vec{0}$ となる条件は以下のようになる。

$$ A - C = 0 \text{ かつ } B - C = 0 \iff A = B = C $$

このとき、表の総回数は $A + B + C = 3A$ となり、$3$ の倍数であることが必要である。

(1)

$N=5$ のとき、$A=B=C=m$($m$ は非負整数)とおくと、表の総回数は $3m$ 回である。 $3m \le 5$ より $m=0, 1$ のいずれかである。

(i)

$m=0$ のとき

表の回数は 0 回、裏の回数は 5 回である。 このようになるコインの出方は「裏裏裏裏裏」の 1 通りのみである。

(ii)

$m=1$ のとき

表の回数は 3 回、裏の回数 $K$ は $5-3=2$ 回である。 $K=2$ より、表の回数の列は $a_0, a_1, a_2$ の 3 つとなる。 $A = a_0 = 1$、$B = a_1 = 1$、$C = a_2 = 1$ を満たす必要があるため、$(a_0, a_1, a_2) = (1, 1, 1)$ に限られる。 このようになるコインの出方は「表裏表裏表」の 1 通りのみである。

以上より、$X_5 = O$ となるコインの出方は $1 + 1 = 2$ 通りである。 コインの出方は全部で $2^5 = 32$ 通りであり、これらは同様に確からしいので、求める確率は

$$ \frac{2}{32} = \frac{1}{16} $$

である。

(2)

$N=98$ で、表が 90 回、裏が 8 回出る場合を考える。 表の総回数が 90 回であるから、$A + B + C = 90$ が成り立つ。 $X_{98} = O$ となる条件は $A = B = C$ であるから、$A = B = C = 30$ となる。 裏の回数 $K=8$ より、表の回数の列は $a_0, a_1, \dots, a_8$ の 9 つとなる。 $A, B, C$ の定義より、以下の連立方程式が得られる。

$$ \begin{cases} a_0 + a_3 + a_6 = 30 \\ a_1 + a_4 + a_7 = 30 \\ a_2 + a_5 + a_8 = 30 \end{cases} $$

これを満たす非負整数の組 $(a_0, a_3, a_6)$ の個数は、異なる 3 つのものから重複を許して 30 個選ぶ重複組合せの総数に等しい。

$$ {}_{30+3-1}\mathrm{C}_{3-1} = {}_{32}\mathrm{C}_{2} = \frac{32 \times 31}{2} = 496 \text{ 通り} $$

組 $(a_1, a_4, a_7)$ および $(a_2, a_5, a_8)$ の選び方も同様にそれぞれ 496 通りある。 これらは互いに独立に選ぶことができるため、条件を満たす非負整数の組 $(a_0, a_1, \dots, a_8)$ の総数は $496^3$ 通りである。 各組 $(a_0, a_1, \dots, a_8)$ を定めると、コインの出方(表と裏の並び順)は一意に定まる。 したがって、$X_{98} = O$ かつ表が 90 回、裏が 8 回出るようなコインの出方は $496^3$ 通りである。 $N=98$ 回のコインの出方は全部で $2^{98}$ 通りあり、各事象の確率は $\left(\frac{1}{2}\right)^{98}$ であるから、求める確率は

$$ \frac{496^3}{2^{98}} = \frac{(16 \times 31)^3}{2^{98}} = \frac{(2^4 \times 31)^3}{2^{98}} = \frac{2^{12} \times 31^3}{2^{98}} = \frac{31^3}{2^{86}} $$

である。

解説

裏が出るたびに進む方向が切り替わると捉えると整理しやすい。 $\vec{v}_0 + \vec{v}_1 + \vec{v}_2 = \vec{0}$ を用いると、原点に戻る条件は各方向への移動回数が等しいことに帰着する。 (2) ではその条件が 3 組の非負整数解の個数を数える問題になる。

答え

(1)

$$ \frac{1}{16} $$

(2)

$$ \frac{31^3}{2^{86}} $$

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