東京大学 1982年 理系 第6問 解説

方針・初手
サイコロの回転操作により、1の目が「上面」「側面」「底面」のどの位置に移動するか、その推移確率を考える。 回転軸は向かい合う面の中心を通る直線の3本であり、それぞれについて右回りと左回りの2通りの回転があるため、操作は合計6通りあり、これらが同様に確からしく選ばれる。 状態の遷移を確率漸化式で表し、極限を計算する。
解法1
(1) 初期状態(0回目の操作後)において、1の目は上面にあるとする。
1回目の操作において、選ばれる軸と回転の向きは6通りである。 このうち、上面と底面の中心を通る軸まわりの回転(2通り)が選ばれた場合、1の目は上面にとどまる。 その他の2組の向かい合う面の中心を通る軸まわりの回転(4通り)が選ばれた場合、1の目は側面に移動する。底面へ移動する操作はない。 したがって、各確率を求めると以下のようになる。
$$ p_1 = \frac{2}{6} = \frac{1}{3} $$
$$ q_1 = \frac{4}{6} = \frac{2}{3} $$
$$ r_1 = 0 $$
(2) 第 $n-1$ 回目の操作後における1の目の位置から、第 $n$ 回目の操作後の位置への推移確率を考える。
(i) 1の目が上面にある場合 (1)と同様に、次の操作で上面、側面、底面に移動する確率はそれぞれ $\frac{1}{3}, \frac{2}{3}, 0$ である。
(ii) 1の目が底面にある場合 対称性より、次の操作で上面、側面、底面に移動する確率はそれぞれ $0, \frac{2}{3}, \frac{1}{3}$ である。
(iii) 1の目が側面にある場合 1の目がある面を貫く軸まわりの回転(2通り)と、上面および底面を貫く軸まわりの回転(2通り)の計4通りの操作では、1の目は側面のままである。 残りの1組の面の中心を貫く軸まわりの回転(2通り)では、一方の回転で1の目は上面へ、もう一方の回転で底面へと移動する。 よって、次の操作で上面、側面、底面に移動する確率はそれぞれ $\frac{1}{6}, \frac{4}{6}=\frac{2}{3}, \frac{1}{6}$ である。
以上の遷移をまとめることで、以下の漸化式が得られる。
$$ p_n = \frac{1}{3} p_{n-1} + \frac{1}{6} q_{n-1} $$
$$ q_n = \frac{2}{3} p_{n-1} + \frac{2}{3} q_{n-1} + \frac{2}{3} r_{n-1} $$
$$ r_n = \frac{1}{6} q_{n-1} + \frac{1}{3} r_{n-1} $$
(3) 任意の $k \geqq 0$ に対して、1の目は上面、側面、底面のいずれかにあるため、確率の総和について以下の式が成り立つ。
$$ p_k + q_k + r_k = 1 $$
これを(2)で求めた $q_n$ の式に適用すると、次のように定数となる。
$$ q_n = \frac{2}{3} (p_{n-1} + q_{n-1} + r_{n-1}) = \frac{2}{3} \cdot 1 = \frac{2}{3} $$
よって、$n \geqq 1$ において $q_n = \frac{2}{3}$ であるから、その極限は以下のようになる。
$$ q = \lim_{n \to \infty} q_n = \frac{2}{3} $$
次に、$p_n$ の漸化式に $q_{n-1} = \frac{2}{3}$ を代入する。
$$ p_n = \frac{1}{3} p_{n-1} + \frac{1}{6} \cdot \frac{2}{3} = \frac{1}{3} p_{n-1} + \frac{1}{9} $$
この漸化式を変形する。
$$ p_n - \frac{1}{6} = \frac{1}{3} \left( p_{n-1} - \frac{1}{6} \right) $$
数列 $\left\{ p_n - \frac{1}{6} \right\}$ は初項 $p_1 - \frac{1}{6} = \frac{1}{3} - \frac{1}{6} = \frac{1}{6}$、公比 $\frac{1}{3}$ の等比数列である。
$$ p_n - \frac{1}{6} = \frac{1}{6} \left( \frac{1}{3} \right)^{n-1} = \frac{1}{2} \left( \frac{1}{3} \right)^n $$
$$ p_n = \frac{1}{6} + \frac{1}{2} \left( \frac{1}{3} \right)^n $$
$n \to \infty$ のとき $\left( \frac{1}{3} \right)^n \to 0$ であるから、$p$ の極限は以下のようになる。
$$ p = \lim_{n \to \infty} p_n = \frac{1}{6} $$
同様に、$r_n$ の漸化式に $q_{n-1} = \frac{2}{3}$ を代入する。
$$ r_n = \frac{1}{3} r_{n-1} + \frac{1}{6} \cdot \frac{2}{3} = \frac{1}{3} r_{n-1} + \frac{1}{9} $$
この漸化式を変形する。
$$ r_n - \frac{1}{6} = \frac{1}{3} \left( r_{n-1} - \frac{1}{6} \right) $$
数列 $\left\{ r_n - \frac{1}{6} \right\}$ は初項 $r_1 - \frac{1}{6} = 0 - \frac{1}{6} = -\frac{1}{6}$、公比 $\frac{1}{3}$ の等比数列である。
$$ r_n - \frac{1}{6} = -\frac{1}{6} \left( \frac{1}{3} \right)^{n-1} = -\frac{1}{2} \left( \frac{1}{3} \right)^n $$
$$ r_n = \frac{1}{6} - \frac{1}{2} \left( \frac{1}{3} \right)^n $$
$n \to \infty$ のとき $\left( \frac{1}{3} \right)^n \to 0$ であるから、$r$ の極限は以下のようになる。
$$ r = \lim_{n \to \infty} r_n = \frac{1}{6} $$
解説
推移確率を正確に立式し、連立漸化式を解く典型的な確率漸化式の問題である。 各面が上面、底面、側面にくる推移確率を丁寧に場合分けして調べることが第一歩となる。 (3)において、$p_n + q_n + r_n = 1$ に気づくことで $q_n$ が定数数列になることがわかり、連立漸化式が1つずつの独立した漸化式へと帰着される構造になっている。 極限値 $p=1/6, q=2/3, r=1/6$ は、十分な回数の操作を行えば1の目が6つの面のどの位置にも均等な確率で存在するという直感的な結果とも一致しており、検算として機能する。
答え
(1)
$p_1 = \frac{1}{3}, \ q_1 = \frac{2}{3}, \ r_1 = 0$
(2)
$p_n = \frac{1}{3} p_{n-1} + \frac{1}{6} q_{n-1}$ $q_n = \frac{2}{3} p_{n-1} + \frac{2}{3} q_{n-1} + \frac{2}{3} r_{n-1}$ $r_n = \frac{1}{6} q_{n-1} + \frac{1}{3} r_{n-1}$
(3)
$p = \frac{1}{6}, \ q = \frac{2}{3}, \ r = \frac{1}{6}$
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