九州大学 1984年 理系 第2問 解説

方針・初手
硬貨を投げるたびに点数が変わるため、状態の推移に注目して確率の漸化式を立てるのが基本方針である。
点数が「偶数である」状態と「奇数である」状態の2つのみが存在することに着目する。$n$ 回投げたあとで点数が奇数である確率は、全体から偶数である確率を引いた $1 - a_n$ となる。これを利用して $n$ 回目から $n+1$ 回目(または $n-1$ 回目から $n$ 回目)の推移を考える。
解法1
(1)
$n$ 回硬貨を投げたあとでの点数が偶数になるのは、次の2つの排反な事象のいずれかが起こる場合である。
(i) $n-1$ 回投げたあとで点数が偶数であり、$n$ 回目に裏が出る。 $n-1$ 回投げたあとで点数が偶数である確率は $a_{n-1}$ であり、裏が出る確率は $1-p$ であるから、この事象が起こる確率は $a_{n-1}(1-p)$ である。
(ii) $n-1$ 回投げたあとで点数が奇数であり、$n$ 回目に表が出る。 $n-1$ 回投げたあとで点数が奇数である確率は $1 - a_{n-1}$ であり、表が出る確率は $p$ であるから、この事象が起こる確率は $(1 - a_{n-1})p$ である。
したがって、$n$ 回投げたあとでの点数が偶数である確率 $a_n$ は、これら2つの確率の和となるため、
$$a_n = a_{n-1}(1-p) + (1 - a_{n-1})p$$
が成り立つ。これを展開して整理すると、
$$\begin{aligned} a_n &= a_{n-1} - p a_{n-1} + p - p a_{n-1} \\ &= a_{n-1}(1 - 2p) + p \end{aligned}$$
となり、題意は示された。
(2)
(1)で求めた漸化式 $a_n = (1 - 2p)a_{n-1} + p$ を変形する。
特性方程式 $\alpha = (1 - 2p)\alpha + p$ を解くと、
$$2p\alpha = p$$
$0 < p < 1$ より $p \neq 0$ であるから、両辺を $2p$ で割って、
$$\alpha = \frac{1}{2}$$
これを用いて元の漸化式を変形すると、次のようになる。
$$a_n - \frac{1}{2} = (1 - 2p)\left(a_{n-1} - \frac{1}{2}\right)$$
これは、数列 $\left\{ a_n - \frac{1}{2} \right\}$ が、公比 $1 - 2p$ の等比数列であることを示している。
ここで、初項 $a_1$ は「1回硬貨を投げたあとで点数が偶数である確率」である。0点から始まり、1回目に裏が出れば点数は0(偶数)のままであるから、
$$a_1 = 1 - p$$
である。したがって、数列 $\left\{ a_n - \frac{1}{2} \right\}$ の初項は、
$$a_1 - \frac{1}{2} = 1 - p - \frac{1}{2} = \frac{1}{2} - p$$
となる。ゆえに、数列 $\left\{ a_n - \frac{1}{2} \right\}$ の一般項は、
$$a_n - \frac{1}{2} = \left(\frac{1}{2} - p\right)(1 - 2p)^{n-1}$$
これを $a_n$ について解き、整理する。
$$\begin{aligned} a_n &= \frac{1}{2} + \frac{1}{2}(1 - 2p)(1 - 2p)^{n-1} \\ &= \frac{1}{2} + \frac{1}{2}(1 - 2p)^n \end{aligned}$$
(3)
問題の条件より $0 < p < 1$ であるから、各辺を $-2$ 倍して、
$$-2 < -2p < 0$$
各辺に $1$ を加えて、
$$-1 < 1 - 2p < 1$$
したがって、(2)の一般項において $n \to \infty$ とすると、$(1 - 2p)^n \to 0$ となる。
ゆえに、求める極限は、
$$\begin{aligned} \lim_{n \to \infty} a_n &= \lim_{n \to \infty} \left\{ \frac{1}{2} + \frac{1}{2}(1 - 2p)^n \right\} \\ &= \frac{1}{2} + \frac{1}{2} \cdot 0 \\ &= \frac{1}{2} \end{aligned}$$
解説
確率漸化式の極めて標準的な問題である。2つの状態(今回は「点数が偶数」と「点数が奇数」)を行き来する推移を漸化式で表現する手法は頻出であり、確実に押さえておきたい。
(2)では隣接2項間漸化式を等比数列の形に帰着させて解く。初項 $a_1$ を求める際に、初期状態(0点)から1回操作を行った結果を正確に反映させることが重要である。
(3)の極限計算では、公比 $1-2p$ の絶対値が $1$ より小さいことを、条件 $0 < p < 1$ から導いて明記する必要がある。この記述を怠ると減点対象になる可能性がある。
答え
(1) 本文参照
(2) $a_n = \frac{1}{2} + \frac{1}{2}(1 - 2p)^n$
(3) $\lim_{n \to \infty} a_n = \frac{1}{2}$
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