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東京大学 1986年 理系 第2問 解説

数学C/式と曲線数学2/積分法数学2/三角関数テーマ/二次曲線テーマ/面積・体積
東京大学 1986年 理系 第2問 解説

方針・初手

座標平面上に楕円を配置し、領域を数式で表現することから始める。楕円の面積に関する問題では、「円に変換して幾何的に求める手法」と「定積分を直接計算する手法」が代表的である。本問はどちらの手法でも解決可能であるため、両方の解法を示す。 計算をスムーズに進めるための鍵は、与えられたヒントを利用して、平行移動の距離を三角関数の値に結びつけることである。

解法1

長軸の長さが $4$、短軸の長さが $2$ である楕円を、座標平面の原点を中心とし、長軸を $x$ 軸、短軸を $y$ 軸に重ねて配置しても一般性を失わない。 このとき、楕円の方程式は次のように表される。

$$ \frac{x^2}{2^2} + \frac{y^2}{1^2} = 1 \iff \frac{x^2}{4} + y^2 = 1 $$

領域 $A$ は不等式 $\frac{x^2}{4} + y^2 \leqq 1$ で表される。 また、平行移動の距離を $d = \frac{1}{2}(\sqrt{6}-\sqrt{2})$ とする。$A$ を短軸の方向(ここでは $y$ 軸の正の向きとする)に $d$ だけ平行移動した領域 $B$ は、次の不等式で表される。

$$ \frac{x^2}{4} + (y-d)^2 \leqq 1 $$

与えられた条件 $\cos\frac{\pi}{12} = \frac{1}{4}(\sqrt{6}+\sqrt{2})$ を用いて、$d$ と三角関数の関係を調べる。

$$ \sin^2\frac{\pi}{12} = 1 - \cos^2\frac{\pi}{12} = 1 - \frac{8+4\sqrt{3}}{16} = \frac{8-4\sqrt{3}}{16} = \left( \frac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{4} \right)^2 $$

$\sin\frac{\pi}{12} > 0$ であるから、$\sin\frac{\pi}{12} = \frac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{4}$ となる。 したがって、平行移動の距離 $d$ は $d = 2\sin\frac{\pi}{12}$ と表せる。

領域 $A, B$ を $x$ 軸方向に $\frac{1}{2}$ 倍に縮小する変換 $(x, y) \to (X, Y) = \left(\frac{x}{2}, y\right)$ を行う。 この変換により、領域 $A, B$ はそれぞれ以下の領域 $A', B'$ に移る。

$$ A' : X^2 + Y^2 \leqq 1 $$

$$ B' : X^2 + (Y-d)^2 \leqq 1 $$

求める面積 $M$ は、領域 $C' = A' \cap B'$ の面積 $M'$ の $2$ 倍となる。すなわち $M = 2M'$ である。

$A'$ と $B'$ の境界線の交点の $Y$ 座標は、$X^2 + Y^2 = 1$ と $X^2 + (Y-d)^2 = 1$ を連立して、

$$ Y^2 = (Y-d)^2 \iff 2dY = d^2 \iff Y = \frac{d}{2} = \sin\frac{\pi}{12} $$

このとき $X^2 = 1 - \sin^2\frac{\pi}{12} = \cos^2\frac{\pi}{12}$ より、$X = \pm \cos\frac{\pi}{12}$ となる。 交点を $\mathrm{P}\left(\cos\frac{\pi}{12}, \sin\frac{\pi}{12}\right), \mathrm{Q}\left(-\cos\frac{\pi}{12}, \sin\frac{\pi}{12}\right)$ とし、原点を $\mathrm{O}$ とすると、線分 $\mathrm{OP}$ が $X$ 軸の正の向きとなす角は $\frac{\pi}{12}$ である。

領域 $C'$ は直線 $Y = \frac{d}{2}$ に関して上下対称であるから、$Y \geqq \frac{d}{2}$ の部分の面積 $S_1$ を求めて $2$ 倍すればよい。 $S_1$ は、中心角が $\pi - 2 \cdot \frac{\pi}{12} = \frac{5\pi}{6}$ である扇形 $\mathrm{OPQ}$ の面積から、三角形 $\mathrm{OPQ}$ の面積を引いたものである。

$$ S_1 = \frac{1}{2} \cdot 1^2 \cdot \frac{5\pi}{6} - \frac{1}{2} \cdot 1^2 \cdot \sin\frac{5\pi}{6} = \frac{5\pi}{12} - \frac{1}{4} $$

したがって、$M' = 2S_1 = \frac{5\pi}{6} - \frac{1}{2}$ となる。 以上より、求める面積 $M$ は、

$$ M = 2M' = 2 \left( \frac{5\pi}{6} - \frac{1}{2} \right) = \frac{5\pi}{3} - 1 $$

解法2

解法1と同様に、領域 $A, B$ の不等式および $d = 2\sin\frac{\pi}{12}$ を導く。

領域 $A$ の境界 $\frac{x^2}{4} + y^2 = 1$ と領域 $B$ の境界 $\frac{x^2}{4} + (y-d)^2 = 1$ の交点を求める。 辺々を引くと $y^2 - (y-d)^2 = 0$ となり、$y = \frac{d}{2} = \sin\frac{\pi}{12}$ を得る。 このとき、$\frac{x^2}{4} = 1 - \sin^2\frac{\pi}{12} = \cos^2\frac{\pi}{12}$ より、$x = \pm 2\cos\frac{\pi}{12}$ である。

領域 $A$ と $B$ の共通部分 $C$ は、直線 $y = \frac{d}{2}$ に関して対称である。 したがって、面積 $M$ は $y \geqq \frac{d}{2}$ の部分の面積の $2$ 倍として、以下の定積分で求められる。

$$ M = 2 \int_{-2\cos\frac{\pi}{12}}^{2\cos\frac{\pi}{12}} \left( \sqrt{1 - \frac{x^2}{4}} - \sin\frac{\pi}{12} \right) dx $$

この定積分を計算するために、$x = 2\sin\theta$ と置換する。 $dx = 2\cos\theta d\theta$ であり、積分区間は $x$ が $-2\cos\frac{\pi}{12}$ から $2\cos\frac{\pi}{12}$ に変化するとき、$\sin\theta$ は $-\cos\frac{\pi}{12}$ から $\cos\frac{\pi}{12}$、すなわち $-\sin\frac{5\pi}{12}$ から $\sin\frac{5\pi}{12}$ に変化するため、$\theta$ は $-\frac{5\pi}{12}$ から $\frac{5\pi}{12}$ ととれる。 被積分関数は偶関数であるから、

$$ M = 2 \cdot 2 \int_{0}^{\frac{5\pi}{12}} \left( \cos\theta - \sin\frac{\pi}{12} \right) \cdot 2\cos\theta d\theta $$

$$ M = 8 \int_{0}^{\frac{5\pi}{12}} \left( \cos^2\theta - \sin\frac{\pi}{12}\cos\theta \right) d\theta $$

半角の公式を用いて変形する。

$$ M = 4 \int_{0}^{\frac{5\pi}{12}} \left( 1 + \cos 2\theta - 2\sin\frac{\pi}{12}\cos\theta \right) d\theta $$

$$ M = 4 \left[ \theta + \frac{1}{2}\sin 2\theta - 2\sin\frac{\pi}{12}\sin\theta \right]_{0}^{\frac{5\pi}{12}} $$

$$ M = 4 \left( \frac{5\pi}{12} + \frac{1}{2}\sin\frac{5\pi}{6} - 2\sin\frac{\pi}{12}\sin\frac{5\pi}{12} \right) $$

ここで、積和の公式または $\sin\frac{5\pi}{12} = \cos\frac{\pi}{12}$ を用いると、 $2\sin\frac{\pi}{12}\sin\frac{5\pi}{12} = 2\sin\frac{\pi}{12}\cos\frac{\pi}{12} = \sin\frac{\pi}{6} = \frac{1}{2}$ である。 また、$\sin\frac{5\pi}{6} = \frac{1}{2}$ であるから、

$$ M = 4 \left( \frac{5\pi}{12} + \frac{1}{4} - \frac{1}{2} \right) = 4 \left( \frac{5\pi}{12} - \frac{1}{4} \right) = \frac{5\pi}{3} - 1 $$

解説

楕円の面積に関する問題では、本問の解法1のように「円に変換して図形的に処理する」手法が非常に強力である。楕円のまま積分計算を押し通すことも可能だが(解法2)、計算量が膨らみやすいため、面積の拡大・縮小の性質を利用できると見通しが良くなる。 また、本問では与えられた余弦の値から、平行移動の距離が $\sin\frac{\pi}{12}$ に関連していることを見抜く必要がある。図形的な変換の工夫と、三角関数の相互関係や各種公式を正確に扱う計算力が問われる良問である。

答え

$$ M = \frac{5\pi}{3} - 1 $$

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