東京大学 1986年 理系 第1問 解説

方針・初手
三角形 $ABC$ が領域 $D$ に含まれるための $a, b, c$ に関する条件を求めることから始める。領域 $D$ は $x \geqq 0, y \geqq 0$ かつ双曲線 $xy = 1$ の下側にある。三角形の各辺が $D$ に含まれる条件を調べ、$a, c$ および $b, c$ の関係式(不等式)を導く。その後、三角形の面積 $S$ を $a, b, c$ で表し、得られた不等式の条件下で $S$ の最大値を評価する。
解法1
領域 $D$ は不等式 $x \geqq 0$, $y \geqq 0$, $xy \leqq 1$ で表される。 三角形 $ABC$ が $D$ に含まれるためには、その境界線および内部のすべての点 $(x, y)$ で $xy \leqq 1$ が成り立つ必要がある。 $A(a, 0)$, $B(0, b)$, $C\left(c, \frac{1}{c}\right)$ はそれぞれ $x$ 軸上、$y$ 軸上、第1象限の点である。 $x \geqq 0, y \geqq 0$ のもとで、特定の $x$ に対して $y$ の値が最大のときに $xy$ の値も最大となるため、三角形の「上側の境界」となる辺 $AC$ および辺 $BC$ 上の点すべてが $D$ に含まれれば、三角形全体も $D$ に含まれる。
辺 $AC$ 上の点を $P$ とすると、媒介変数 $t$ ($0 \leqq t \leqq 1$) を用いて、
$$ P\left( (1-t)a + tc, \frac{t}{c} \right) $$
と表せる。点 $P$ が $D$ に含まれる条件は、
$$ \{ (1-t)a + tc \} \cdot \frac{t}{c} \leqq 1 $$
である。$u = \frac{a}{c}$ とおくと、
$$ \{ (1-t)uc + tc \} \cdot \frac{t}{c} = u t(1-t) + t^2 = (1-u)t^2 + ut \leqq 1 $$
となる。これを $f(t) = (1-u)t^2 + ut$ とおく。 すべての $t$ ($0 \leqq t \leqq 1$) において $f(t) \leqq 1$ となる条件を求める。 $f(0) = 0 \leqq 1$, $f(1) = 1 \leqq 1$ である。
(i)
$1-u \geqq 0$ すなわち $u \leqq 1$ のとき
$f(t)$ は下に凸または直線のグラフとなり、$0 \leqq t \leqq 1$ における最大値は $f(0)$ または $f(1)$ のいずれかである。これらは共に $1$ 以下であるため、条件を満たす。
(ii)
$1-u < 0$ すなわち $u > 1$ のとき
$f(t)$ は上に凸の放物線となり、頂点の $t$ 座標は $t = \frac{u}{2(u-1)}$ である。 もし $\frac{u}{2(u-1)} < 1$ すなわち $u > 2$ であれば、頂点は区間 $(0, 1)$ 内に存在し、最大値は
$$ f\left( \frac{u}{2(u-1)} \right) = \frac{u^2}{4(u-1)} $$
となる。これが $1$ 以下となるには $u^2 \leqq 4(u-1)$ より $(u-2)^2 \leqq 0$ となり、$u=2$ を得るが、$u>2$ と矛盾する。 もし $\frac{u}{2(u-1)} \geqq 1$ すなわち $1 < u \leqq 2$ であれば、区間 $0 \leqq t \leqq 1$ で $f(t)$ は単調増加となり、最大値は $f(1) = 1 \leqq 1$ となるため、条件を満たす。
(i), (ii) より、辺 $AC$ が $D$ に含まれるための必要十分条件は $u \leqq 2$、すなわち $a \leqq 2c$ である。
同様に、辺 $BC$ 上の点を $Q$ とすると、$t$ ($0 \leqq t \leqq 1$) を用いて
$$ Q\left( tc, (1-t)b + \frac{t}{c} \right) $$
と表せる。点 $Q$ が $D$ に含まれる条件は、
$$ tc \left\{ (1-t)b + \frac{t}{c} \right\} = bct(1-t) + t^2 \leqq 1 $$
となる。$v = bc$ とおくと、先ほどと全く同じ形の式 $v t(1-t) + t^2 \leqq 1$ を得る。 したがって、辺 $BC$ が $D$ に含まれる条件は $v \leqq 2$、すなわち $bc \leqq 2$ である。
(なお、辺 $AB$ 上の点は $(x,y) = ((1-t)a, tb)$ であり、$xy = ab t(1-t) \leqq \frac{ab}{4} = \frac{uv}{4} \leqq \frac{2 \times 2}{4} = 1$ となり常に $D$ に含まれる。)
次に、三角形 $ABC$ の面積 $S$ を求める。座標を用いて面積を計算すると、
$$ S = \frac{1}{2} \left| a \cdot \frac{1}{c} + 0 \cdot 0 + c \cdot b - \left( 0 \cdot c + b \cdot a + \frac{1}{c} \cdot 0 \right) \right| = \frac{1}{2} \left| \frac{a}{c} + bc - ab \right| $$
$u = \frac{a}{c}$, $v = bc$ を代入すると $ab = \frac{a}{c} \cdot bc = uv$ となるため、
$$ S = \frac{1}{2} | u + v - uv | = \frac{1}{2} | 1 - (u-1)(v-1) | $$
ここで、$u \leqq 2$ かつ $v \leqq 2$ であり、$a \geqq 0, b \geqq 0$ より $u \geqq 0, v \geqq 0$ である。 したがって $-1 \leqq u-1 \leqq 1$ および $-1 \leqq v-1 \leqq 1$ となる。 これらの積の範囲は
$$ -1 \leqq (u-1)(v-1) \leqq 1 $$
であるから、各辺を $-1$ 倍して $1$ を加えると、
$$ 0 \leqq 1 - (u-1)(v-1) \leqq 2 $$
となる。よって、絶対値はそのまま外れ、面積 $S$ は
$$ S = \frac{1}{2} \{ 1 - (u-1)(v-1) \} \leqq \frac{1}{2} \times 2 = 1 $$
面積が最大値 $1$ をとるのは、$(u-1)(v-1) = -1$ のときである。 $u-1, v-1 \in [-1, 1]$ より、これを満たすのは以下の2つの場合のみである。
(1)
$u-1 = 1$ かつ $v-1 = -1$ のとき
$u = 2, v = 0$ となり、このとき $a = 2c, b = 0$ である。
(2)
$u-1 = -1$ かつ $v-1 = 1$ のとき
$u = 0, v = 2$ となり、このとき $a = 0, b = \frac{2}{c}$ である。
いずれの場合も3点は同一直線上になく、正常な三角形を形成する。
解説
双曲線 $xy = 1$ によって切り取られる領域 $D$ が凸領域でないため、3頂点が $D$ に含まれるだけでは三角形全体が $D$ に含まれるとは限らない。線分が双曲線をはみ出さないための条件を正しく立式できるかが最大の山場である。 式変形においては、$u = \frac{a}{c}$、$v = bc$ とおき換えることで、辺 $AC, BC$ の条件式が対称で非常に見通しのよい形になり、面積 $S$ の最大値の評価も容易になる。
答え
$a = 2c, b = 0$ または $a = 0, b = \frac{2}{c}$ の場合。 最大値は $1$
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