東京大学 1986年 理系 第3問 解説

方針・初手
- (1) は、平面 $S_0$ 上の2つの一次独立なベクトルと内積が $0$ になるようなベクトルを求め、その長さを $1$ に調整する。
- (2) は、平面の回転において「平面の法線ベクトルと回転軸の方向ベクトルのなす角(内積)が保たれる」ことに着目する。法線ベクトルの成分を文字でおき、内積の条件と長さが $1$ であるという条件から $y$ についての不等式を導く。
解法1
(1)
平面 $S_0$ は三点 $A\left(0, 0, \frac{1}{2}\right)$, $B\left(0, \frac{1}{2}, 1\right)$, $C(1, 0, 1)$ を通る。これらから平面上の2つのベクトルを作る。
$$ \vec{AB} = \left( 0, \frac{1}{2}, \frac{1}{2} \right), \quad \vec{AC} = \left( 1, 0, \frac{1}{2} \right) $$
平面 $S_0$ に垂直なベクトルの一つを $\vec{n} = (a, b, c)$ とおくと、$\vec{n} \cdot \vec{AB} = 0$ かつ $\vec{n} \cdot \vec{AC} = 0$ が成り立つので、
$$ \begin{cases} \frac{1}{2}b + \frac{1}{2}c = 0 \\ a + \frac{1}{2}c = 0 \end{cases} $$
これを解くと、$c = -b$ かつ $c = -2a$ より、$b = 2a$, $c = -2a$ となる。 よって、$\vec{n}$ は実数 $a$ を用いて次のように表せる。
$$ \vec{n} = (a, 2a, -2a) = a(1, 2, -2) $$
求めるベクトル $\vec{n}_0$ は長さが $1$ であるから、$|\vec{n}_0| = 1$ より、
$$ \sqrt{a^2 + (2a)^2 + (-2a)^2} = 1 $$
$$ \sqrt{9a^2} = 1 \iff 3|a| = 1 \iff a = \pm \frac{1}{3} $$
したがって、求める長さ $1$ のベクトル $\vec{n}_0$ は以下の通りである。
$$ \vec{n}_0 = \pm \left( \frac{1}{3}, \frac{2}{3}, -\frac{2}{3} \right) $$
(2)
直線 $l$ は二点 $D(1, 0, 0)$, $E(0, 1, 0)$ を通るので、その方向ベクトルの一つを $\vec{d}$ とすると、
$$ \vec{d} = \vec{DE} = (-1, 1, 0) $$
平面 $S_0$ を直線 $l$ を軸として回転させて得られる平面 $S$ の単位法線ベクトル $\vec{n} = (x, y, z)$ は、(1) で求めた $\vec{n}_0$ を直線 $l$ の周りに回転させたものである。 回転操作において、ベクトルと回転軸のなす角は不変であるため、内積は保存される。 (1) より $\vec{n}_0$ は逆向きのものが2つ存在するが、一つの平面 $S_0$ に対して2つの法線ベクトルが存在するだけであり、どちらを選んで回転させても、得られる平面の集合とその法線ベクトル全体の集合は同じになる。 ここでは $\vec{n}_0 = \left( \frac{1}{3}, \frac{2}{3}, -\frac{2}{3} \right)$ が回転して $\vec{n} = (x, y, z)$ に移った場合を考える。
内積が保存されることから、
$$ \vec{n} \cdot \vec{d} = \vec{n}_0 \cdot \vec{d} $$
$$ -x + y = -\frac{1}{3} + \frac{2}{3} = \frac{1}{3} $$
よって、$x = y - \frac{1}{3}$ となる。 (※ $\vec{n}_0 = \left( -\frac{1}{3}, -\frac{2}{3}, \frac{2}{3} \right)$ を選んだ場合は $-x + y = -\frac{1}{3}$ となり、これは同じ平面 $S$ の逆向きの法線ベクトルを表すので、$|y|$ の取り得る値の範囲に影響はない)
また、$\vec{n}$ は長さ $1$ のベクトルであるから、$x^2 + y^2 + z^2 = 1$ が成り立つ。 これに $x = y - \frac{1}{3}$ を代入すると、
$$ \left( y - \frac{1}{3} \right)^2 + y^2 + z^2 = 1 $$
$$ 2y^2 - \frac{2}{3}y + \frac{1}{9} + z^2 = 1 $$
$$ 2\left( y^2 - \frac{1}{3}y \right) + z^2 = \frac{8}{9} $$
$$ 2\left( y - \frac{1}{6} \right)^2 - \frac{1}{18} + z^2 = \frac{8}{9} $$
$$ 2\left( y - \frac{1}{6} \right)^2 + z^2 = \frac{17}{18} $$
ここで、$z$ は実数であるから $z^2 \ge 0$ である。したがって $y$ が満たすべき条件は、
$$ 2\left( y - \frac{1}{6} \right)^2 \le \frac{17}{18} $$
$$ \left( y - \frac{1}{6} \right)^2 \le \frac{17}{36} $$
$$ -\frac{\sqrt{17}}{6} \le y - \frac{1}{6} \le \frac{\sqrt{17}}{6} $$
$$ \frac{1 - \sqrt{17}}{6} \le y \le \frac{1 + \sqrt{17}}{6} $$
この $y$ の範囲において、$|y|$ の最大値と最小値を考える。 $4 < \sqrt{17} < 5$ であるから、
$$ \frac{1 - \sqrt{17}}{6} < 0 < \frac{1 + \sqrt{17}}{6} $$
よって、$y$ の変域は $0$ を含むため、$|y|$ の最小値は $0$ である。 また、両端点の絶対値を比較すると、
$$ \left| \frac{1 - \sqrt{17}}{6} \right| = \frac{\sqrt{17} - 1}{6} $$
$$ \left| \frac{1 + \sqrt{17}}{6} \right| = \frac{\sqrt{17} + 1}{6} $$
であり、明らかに $\frac{\sqrt{17} - 1}{6} < \frac{\sqrt{17} + 1}{6}$ である。 したがって、$|y|$ の最大値は $\frac{\sqrt{17} + 1}{6}$ となる。
解説
(1) は空間図形における法線ベクトルの基本的な求め方である。外積を用いても素早く計算できる。 (2) は「直線を軸とした回転」の扱いが問われている。回転によって座標を直接求めるのは計算が煩雑になりやすいため、「回転軸方向の成分(内積)が保存されること」と「ベクトルの大きさが保存されること」を連立させて条件式を導くのが空間図形の定石である。 $y$ の範囲を求めた後、$|y|$ の最大・最小を答える際に、範囲が負から正にまたがっているため最小値が $0$ になる点に注意が必要である。
答え
(1)
$$ \vec{n}_0 = \pm \left( \frac{1}{3}, \frac{2}{3}, -\frac{2}{3} \right) $$
(2)
最大値: $\frac{\sqrt{17} + 1}{6}$
最小値: $0$
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