東京大学 1988年 理系 第1問 解説

方針・初手
一次変換 $f$ を表す行列を $A = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}$ とおき、問題文の3つの条件を成分 $a, b, c, d$ の不等式として立式する。
逆変換が存在することは、行列 $A$ の行列式 $|A| = ad - bc \neq 0$ であることと同値であるため、得られた不等式から $ad - bc \neq 0$ を導く。
後半の証明は、像 $f(P)$ の座標を文字でおき、逆行列を用いて点 $P$ の座標を表現し、その符号を判定する。
解法1
一次変換 $f$ を表す行列を $A = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}$ とおく。
条件 (i) より、点 $(1,0)$ の像は
$$ \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a \\ c \end{pmatrix} $$
であり、これが第4象限の内部にあるため、
$$ a > 0, \quad c < 0 $$
が成り立つ。
条件 (ii) より、点 $(0,1)$ の像は
$$ \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} b \\ d \end{pmatrix} $$
であり、これが第2象限の内部にあるため、
$$ b < 0, \quad d > 0 $$
が成り立つ。
条件 (iii) より、点 $(1,1)$ の像は
$$ \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 1 \\ 1 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a+b \\ c+d \end{pmatrix} $$
であり、これが第1象限の内部にあるため、
$$ a+b > 0, \quad c+d > 0 $$
が成り立つ。
これらの不等式から、$a > -b$, $d > -c$ が得られる。
$b < 0, c < 0$ より $-b > 0, -c > 0$ であるから、正の数どうしの積をとって、
$$ ad > (-b)(-c) $$
すなわち
$$ ad > bc $$
が成り立つ。よって、$ad - bc > 0$ であり、$ad - bc \neq 0$ を満たすので、行列 $A$ は正則である。
したがって、$f$ には逆変換が存在する。
次に、点 $P$ の座標を $(x, y)$ とし、その像 $f(P)$ の座標を $(X, Y)$ とおく。
仮定より $f(P)$ は第1象限の内部にあるため、
$$ X > 0, \quad Y > 0 $$
である。
$f$ には逆変換が存在するため、
$$ \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = A^{-1} \begin{pmatrix} X \\ Y \end{pmatrix} = \frac{1}{ad - bc} \begin{pmatrix} d & -b \\ -c & a \end{pmatrix} \begin{pmatrix} X \\ Y \end{pmatrix} $$
と表せる。成分を計算すると、
$$ x = \frac{dX - bY}{ad - bc}, \quad y = \frac{-cX + aY}{ad - bc} $$
となる。
ここで、前半の証明により $ad - bc > 0$ である。
また、$d > 0$, $-b > 0$, $X > 0$, $Y > 0$ より、
$$ dX - bY > 0 $$
であるから、$x > 0$ となる。
さらに、$-c > 0$, $a > 0$, $X > 0$, $Y > 0$ より、
$$ -cX + aY > 0 $$
であるから、$y > 0$ となる。
$x > 0$ かつ $y > 0$ であるから、点 $P(x, y)$ も第1象限の内部にある。
解説
一次変換の基本性質と逆行列を用いた座標の表現を問う典型的な証明問題である。
各象限の「内部」という表現から、境界(軸上)を含まない厳密な不等式($>$ または $<$)を用いて立式することが第一歩となる。
逆変換の存在証明では、行列式 $ad-bc \neq 0$ を示すことが目標となるが、本問では不等式をうまく組み合わせることで、さらに強く $ad-bc > 0$ であることが示される。
後半の証明は、仮定である「$X>0, Y>0$」から結論である「$x>0, y>0$」を導くために、関係式を $x, y$ について解く(つまり逆行列を左から掛ける)という自然な発想ができれば、あとは各文字の符号を確認するだけで容易に完答できる。
答え
前半:略(解法1の証明を参照)
後半:略(解法1の証明を参照)
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