東京大学 2001年 理系 第4問 解説

方針・初手
- (1)与えられた漸化式 $a_{n+2} = a_{n+1} + a_n$ から具体的に $a_3, a_4$ を計算し、$b_1, b_2, b_3$ の値を求める。その後、複素数平面上の3点を通る円の方程式を、座標平面上の円 $x^2 + y^2 + lx + my + n = 0$ と同一視して係数を決定する。
- (2)漸化式の両辺を $a_{n+1}$ で割ることで、$b_{n+1}$ と $b_n$ の関係式 $b_{n+1} = 1 + \frac{1}{b_n}$ を導く。(1)で求めた円 $C$ の方程式を用いて、数学的帰納法によりすべての $b_n$ が円 $C$ 上にあることを証明する。あるいは、一次分数変換(メビウス変換)による軌跡の考え方を利用して示すこともできる。
解法1
(1) 与えられた漸化式 $a_{n+2} = a_{n+1} + a_n$ に $a_1 = 1, a_2 = i$ を順次代入し、$a_3, a_4$ を求める。
$$ a_3 = a_2 + a_1 = 1 + i $$
$$ a_4 = a_3 + a_2 = (1 + i) + i = 1 + 2i $$
定義 $b_n = \frac{a_{n+1}}{a_n}$ に従い、$b_1, b_2, b_3$ を計算する。
$$ b_1 = \frac{a_2}{a_1} = i $$
$$ b_2 = \frac{a_3}{a_2} = \frac{1+i}{i} = \frac{(1+i)(-i)}{i(-i)} = 1 - i $$
$$ b_3 = \frac{a_4}{a_3} = \frac{1+2i}{1+i} = \frac{(1+2i)(1-i)}{(1+i)(1-i)} = \frac{1 - i + 2i + 2}{1^2 + 1^2} = \frac{3}{2} + \frac{1}{2}i $$
複素数平面上の点を $xy$ 平面上の座標と同一視して考える。3点 $(0, 1), (1, -1), \left( \frac{3}{2}, \frac{1}{2} \right)$ を通る円 $C$ の方程式を $x^2 + y^2 + lx + my + n = 0$ とおく。各点の座標を代入すると、以下の連立方程式を得る。
$$ \begin{cases} 1 + m + n = 0 \quad \cdots \text{①} \\ 2 + l - m + n = 0 \quad \cdots \text{②} \\ \frac{5}{2} + \frac{3}{2}l + \frac{1}{2}m + n = 0 \quad \cdots \text{③} \end{cases} $$
①より $n = -m - 1$ である。これを②に代入すると、
$$ 2 + l - m + (-m - 1) = 0 \iff l - 2m = -1 \quad \cdots \text{④} $$
同様に③に代入して両辺を2倍すると、
$$ 5 + 3l + m + 2(-m - 1) = 0 \iff 3l - m = -3 \quad \cdots \text{⑤} $$
④, ⑤の連立方程式を解く。⑤より $m = 3l + 3$ となり、これを④に代入して、
$$ l - 2(3l + 3) = -1 \iff -5l = 5 \iff l = -1 $$
このとき $m = 0$、$n = -1$ となる。したがって、円 $C$ の方程式は
$$ x^2 + y^2 - x - 1 = 0 \iff \left( x - \frac{1}{2} \right)^2 + y^2 = \frac{5}{4} $$
ゆえに、円 $C$ の中心は点 $\left( \frac{1}{2}, 0 \right)$ すなわち複素数 $\frac{1}{2}$ であり、半径は $\frac{\sqrt{5}}{2}$ である。
(2) すべての自然数 $n$ について、「$a_{n+1} \neq 0$ であり、点 $b_n$ は円 $C$ 上にある」ことを数学的帰納法で示す。 点 $z$ が中心 $\frac{1}{2}$、半径 $\frac{\sqrt{5}}{2}$ の円 $C$ 上にある条件は、$\left| z - \frac{1}{2} \right| = \frac{\sqrt{5}}{2}$ である。両辺を2乗して整理すると、
$$ \left( z - \frac{1}{2} \right) \left( \bar{z} - \frac{1}{2} \right) = \frac{5}{4} \iff z\bar{z} - \frac{1}{2}(z + \bar{z}) - 1 = 0 $$
$$ \iff z + \bar{z} = 2z\bar{z} - 2 \quad \cdots \text{(*)} $$
となる。また、原点 $z=0$ について $\left| 0 - \frac{1}{2} \right| = \frac{1}{2} \neq \frac{\sqrt{5}}{2}$ であるから、原点は円 $C$ 上にない。
(I)
$n = 1$ のとき $a_2 = i \neq 0$ であり、(1)より $b_1 = i$ は円 $C$ 上にあるため成り立つ。
(II)
$n = k$($k$ は自然数)のとき成り立つと仮定する。 すなわち、$a_{k+1} \neq 0$ であり、点 $b_k$ は円 $C$ 上にあるとする。 $a_{k+1} \neq 0$ より $b_{k+1} = \frac{a_{k+2}}{a_{k+1}}$ が定義できる。漸化式 $a_{k+2} = a_{k+1} + a_k$ の両辺を $a_{k+1}$ で割ると、
$$ \frac{a_{k+2}}{a_{k+1}} = 1 + \frac{a_k}{a_{k+1}} \iff b_{k+1} = 1 + \frac{1}{b_k} $$
仮定より $b_k$ は円 $C$ 上にあるため、原点ではなく $b_k \neq 0$ であるから、この式は意味を持つ。$b_{k+1}$ と中心 $\frac{1}{2}$ との距離の2乗を計算する。
$$ \left| b_{k+1} - \frac{1}{2} \right|^2 = \left| 1 + \frac{1}{b_k} - \frac{1}{2} \right|^2 = \left| \frac{1}{2} + \frac{1}{b_k} \right|^2 $$
$$ = \left( \frac{1}{2} + \frac{1}{b_k} \right) \left( \frac{1}{2} + \frac{1}{\bar{b_k}} \right) = \frac{1}{4} + \frac{1}{2} \left( \frac{1}{b_k} + \frac{1}{\bar{b_k}} \right) + \frac{1}{b_k \bar{b_k}} $$
$$ = \frac{1}{4} + \frac{b_k + \bar{b_k}}{2b_k \bar{b_k}} + \frac{1}{b_k \bar{b_k}} = \frac{b_k \bar{b_k} + 2(b_k + \bar{b_k}) + 4}{4b_k \bar{b_k}} $$
ここで、$b_k$ は円 $C$ 上にあるため、式 (*) より $b_k + \bar{b_k} = 2b_k \bar{b_k} - 2$ が成り立つ。これを分子に代入すると、
$$ b_k \bar{b_k} + 2(2b_k \bar{b_k} - 2) + 4 = b_k \bar{b_k} + 4b_k \bar{b_k} - 4 + 4 = 5b_k \bar{b_k} $$
したがって、
$$ \left| b_{k+1} - \frac{1}{2} \right|^2 = \frac{5b_k \bar{b_k}}{4b_k \bar{b_k}} = \frac{5}{4} $$
$b_{k+1}$ は $\left| b_{k+1} - \frac{1}{2} \right| = \frac{\sqrt{5}}{2}$ を満たすので、円 $C$ 上にある。さらに、円 $C$ は原点を通らないため $b_{k+1} \neq 0$ であり、$b_{k+1} = \frac{a_{k+2}}{a_{k+1}}$ から $a_{k+2} \neq 0$ も従う。 よって、$n = k+1$ のときも成り立つ。
(I), (II) より、すべての自然数 $n$ について点 $b_n$ は円 $C$ 上にあることが示された。
解法2
(2) の別解:軌跡の考え方を用いる方法
$b_{n+1} = 1 + \frac{1}{b_n} = \frac{b_n + 1}{b_n}$ であるから、一次分数変換 $w = \frac{z+1}{z}$ によって円 $C$ が自身に移されることを示せばよい。 $w = \frac{z+1}{z}$ を $z$ について解くと、
$$ wz = z + 1 \iff z(w - 1) = 1 $$
$w=1$ とすると $0=1$ となり不適であるから $w \neq 1$ であり、
$$ z = \frac{1}{w - 1} $$
となる。これを円 $C$ の方程式 $z\bar{z} - \frac{1}{2}(z + \bar{z}) - 1 = 0$ に代入する。
$$ \frac{1}{w-1} \cdot \frac{1}{\bar{w}-1} - \frac{1}{2} \left( \frac{1}{w-1} + \frac{1}{\bar{w}-1} \right) - 1 = 0 $$
両辺に $2(w-1)(\bar{w}-1)$ を掛けると、
$$ 2 - \{(\bar{w} - 1) + (w - 1)\} - 2(w-1)(\bar{w}-1) = 0 $$
$$ 2 - (w + \bar{w} - 2) - 2(w\bar{w} - w - \bar{w} + 1) = 0 $$
$$ -2w\bar{w} + w + \bar{w} + 2 = 0 $$
両辺を $-2$ で割ると、
$$ w\bar{w} - \frac{1}{2}(w + \bar{w}) - 1 = 0 $$
これは $w$ が円 $C$ の方程式を満たすことを示している。 すなわち、円 $C$ 上の点 $z$(ただし原点を除く)は、この変換によって再び円 $C$ 上の点 $w$ に移る。(1)より $b_1 = i$ は円 $C$ 上にあり、円 $C$ は原点を通らないため、数学的帰納法によりすべての自然数 $n$ について $b_n \neq 0$ かつ $b_n$ は円 $C$ 上に存在することが示される。
解説
- 本問は、フィボナッチ数列に似た漸化式で定まる複素数の数列を題材とし、隣接2項の比 $b_n$ が描く図形的な性質を調べる問題である。
- (1)では、与えられた漸化式から $b_1, b_2, b_3$ を具体的に算出する。これらが通る円は、図形的に座標平面上の3点を通る円として連立方程式から求めるのが平易である。
- (2)では、$b_{n+1}$ を $b_n$ で表す漸化式を立式することが最初のステップとなる。さらに、複素数平面における円の方程式 $z\bar{z} - \alpha\bar{z} - \bar{\alpha}z + |\alpha|^2 = r^2$ の形を活用して、条件式を同値変形することが重要である。
- 解法2で示したように、漸化式を一次分数変換 $w = \frac{z+1}{z}$ による図形の変換として捉える(軌跡の逆代入の考え方を用いる)と、計算が見通しよく進む。
答え
(1)
中心は $\frac{1}{2}$、半径は $\frac{\sqrt{5}}{2}$
(2)
すべての自然数 $n$ に対して、点 $b_n$ は円 $C$ 上にある。
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