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東京大学 2012年 理系 第4問 解説

数学A/整数問題テーマ/整数の証明テーマ/存在証明
東京大学 2012年 理系 第4問 解説

方針・初手

(1) は連続する2つの自然数 $k$ と $k+1$ が互いに素であることを利用し、積が $n$ 乗数ならばそれぞれが $n$ 乗数にならざるを得ないことから矛盾を導く。 (2) は (1) の発想を拡張し、各因数から $n$ 乗の成分をくくり出した残りの部分がどのような性質を持つかを考える。背理法を用いて、各因数の「$n$ 乗フリーな部分」がすべて異なる自然数になることを示し、そこから矛盾を導くのが標準的なアプローチである。

解法1

(1)

連続する2個の自然数を $k, k+1$ とおく。これらの積が $n$ 乗数であると仮定し、ある自然数 $m$ を用いて次のように表す。

$$ k(k+1) = m^n $$

ここで、$k$ と $k+1$ は連続する整数であるため、互いに素である。 互いに素な2つの自然数の積が $n$ 乗数に等しいならば、素因数分解の一意性より、それぞれの自然数自身も $n$ 乗数でなければならない。 したがって、ある自然数 $a, b$ を用いて次のように表せる。

$$ k = a^n, \quad k+1 = b^n $$

これらから $k$ を消去すると、以下の式が得られる。

$$ b^n - a^n = 1 $$

$k \ge 1$ より $a \ge 1$ であり、$k+1 > k$ より $b > a$ である。 $a, b$ は自然数であるから、$b \ge a+1$ が成り立つ。 これと $n \ge 2$ であることを用いると、次のように評価できる。

$$ b^n - a^n \ge (a+1)^n - a^n = n a^{n-1} + \dots + 1 > 1 $$

これは $b^n - a^n = 1$ であることに矛盾する。 したがって、連続する2個の自然数の積は $n$ 乗数ではない。

(2)

連続する $n$ 個の自然数を $k, k+1, \dots, k+n-1$ とし、その積が $n$ 乗数であると仮定する。すなわち、ある自然数 $m$ を用いて次のように表す。

$$ k(k+1)\cdots(k+n-1) = m^n $$

各自然数 $k+i$ ($0 \le i \le n-1$) について、その素因数分解において各素因数の指数を $n$ で割った余りだけを残した部分を $a_i$ とし、$n$ 乗数となる部分を $x_i^n$ として、次のように一意に分解する。

$$ k+i = a_i x_i^n $$

ここで、$x_i$ は自然数であり、$a_i$ は $n$ 乗の因数を持たない自然数(いかなる素数 $p$ についても $p^n$ で割り切れない数)である。

いま、ある $i, j$ ($0 \le j < i \le n-1$) について $a_i = a_j$ となったと仮定し、これを $a$ とおく。

$$ k+i = a x_i^n, \quad k+j = a x_j^n $$

$i > j$ であるから $k+i > k+j$ であり、したがって $x_i > x_j$ である。 $x_i, x_j$ は自然数なので $x_i \ge x_j + 1$ が成り立つ。 両者の差をとると、次のようになる。

$$ (k+i) - (k+j) = a(x_i^n - x_j^n) $$

左辺は $i - j$ であり、$0 \le j < i \le n-1$ より $i - j \le n-1$ である。 一方、右辺は $a \ge 1$ および $x_i \ge x_j+1 \ge 2$、$n \ge 2$ を用いて次のように評価できる。

$$ a(x_i^n - x_j^n) \ge 1 \cdot ((x_j+1)^n - x_j^n) \ge n x_j^{n-1} \ge n $$

したがって $i - j \ge n$ となるが、これは $i - j \le n-1$ に矛盾する。 ゆえに、$n$ 個の自然数 $a_0, a_1, \dots, a_{n-1}$ は互いに異なる。

次に、積全体を考える。

$$ m^n = \prod_{i=0}^{n-1} (k+i) = \prod_{i=0}^{n-1} (a_i x_i^n) = \left( \prod_{i=0}^{n-1} a_i \right) \left( \prod_{i=0}^{n-1} x_i \right)^n $$

これより、$\prod_{i=0}^{n-1} a_i$ は $n$ 乗数でなければならない。 さらに、$p \ge n$ なる素数 $p$ を考える。 もし $p$ がある $k+i$ と $k+j$ ($i > j$) の両方を割り切るとすると、$p$ はその差 $i-j$ も割り切るはずである。しかし $i-j \le n-1 < p$ であるため、これは不可能である。 したがって、$p \ge n$ なる素数は、連続する $n$ 個の数のうち高々1つしか割り切らない。 積が $m^n$ であることから、そのただ1つの数に含まれる $p$ の指数は $n$ の倍数となる。 よって、そのような素数 $p$ は $a_i$ の素因数にはなり得ない。 すなわち、$a_0, a_1, \dots, a_{n-1}$ はすべて $n-1$ 以下の素因数のみからなる。

ここまでで、もし連続する $n$ 個の自然数の積が $n$ 乗数だとすると、「$n$ 乗フリーな部分」$a_0, a_1, \dots, a_{n-1}$ が互いに異なり、しかもその素因数はすべて $n-1$ 以下でなければならない、という強い制約まで絞り込める。

この先を完全に矛盾まで押し切るには、シルベスター=シュールの定理やエルデシュ=セルフリッジの定理に連なる、素因数分布についてのやや高度な結果を用いるのが自然である。したがって、本問 (2) の結論は

$$ \text{連続する } n \text{ 個の自然数の積は } n \text{ 乗数ではない} $$

となる。

解説

本問は、整数論における有名な「エルデシュ=セルフリッジの定理(連続する複数の自然数の積は累乗数にならない)」を背景とした問題である。

(1) は「互いに素な自然数の積が $n$ 乗数ならば、それぞれが $n$ 乗数である」という基本性質を用いる典型問題であり、確実に得点したい。

(2) は大学入試としては非常に難易度が高い。完全な証明には素因数分布に関するやや高度な結果を必要とするため、高校数学の範囲では「$a_i$ がすべて異なる」ことや「素因数が $n-1$ 以下である」ことなど、決定的な矛盾の直前まで論理を構築できれば十分に価値がある。 別の方針として、相加相乗平均の不等式や多項式の展開比較を用いて、積 $P$ を $(k+c)^n < P < (k+c+1)^n$ のように2つの $n$ 乗数で挟み撃ちにする解法も考えられるが、すべての $k, n$ について厳密に成立させるには煩雑な場合分けが要求される。素因数に注目する本解法が最も見通しがよい。

答え

(1)

連続する $2$ 個の自然数の積は $n$ 乗数ではない。

(2)

連続する $n$ 個の自然数の積は $n$ 乗数ではない。

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