北海道大学 2022年 文系 第3問 解説

方針・初手
直角三角形の角の大きさが与えられているため、各辺の長さを斜辺 $a$ を用いて表すことができる。 (1) は、三角形の面積と内接円の半径の関係式を利用するか、内接円と辺の接点までの距離を考えて方程式を立てる方針が有効である。 (2) は、内心の性質(各頂点と内心を結ぶ線分が内角を二等分すること)を利用し、内心から各辺に下ろした垂線によってできる直角三角形に着目して線分の長さを求める。
解法1
(1)
$\triangle ABC$ は $\angle A = 90^\circ, \angle B = 60^\circ$ の直角三角形であるから、$\angle C = 30^\circ$ である。 斜辺 $BC = a$ より、各辺の長さは以下のように表せる。
$$ AB = a \cos 60^\circ = \frac{1}{2}a $$
$$ AC = a \sin 60^\circ = \frac{\sqrt{3}}{2}a $$
$\triangle ABC$ の面積を $S$ とすると、
$$ S = \frac{1}{2} \cdot AB \cdot AC = \frac{1}{2} \cdot \frac{1}{2}a \cdot \frac{\sqrt{3}}{2}a = \frac{\sqrt{3}}{8}a^2 $$
また、内接円の半径 $r$ を用いて面積 $S$ を表すと、
$$ S = \frac{1}{2}r(AB + BC + CA) = \frac{1}{2}r \left(\frac{1}{2}a + a + \frac{\sqrt{3}}{2}a\right) = \frac{3+\sqrt{3}}{4}ar $$
これらが等しいことから、
$$ \frac{3+\sqrt{3}}{4}ar = \frac{\sqrt{3}}{8}a^2 $$
$a > 0$ であるから、両辺を $a$ で割って $r$ について解くと、
$$ \begin{aligned} r &= \frac{\sqrt{3}a}{2(3+\sqrt{3})} \\ &= \frac{\sqrt{3}(3-\sqrt{3})}{2(3+\sqrt{3})(3-\sqrt{3})}a \\ &= \frac{3\sqrt{3}-3}{2(9-3)}a \\ &= \frac{3(\sqrt{3}-1)}{12}a \\ &= \frac{\sqrt{3}-1}{4}a \end{aligned} $$
(2)
点 $O$ は内接円の中心(内心)であるから、直線 $OA, OB, OC$ はそれぞれ $\angle A, \angle B, \angle C$ を二等分する。 したがって、
$$ \angle OAB = 45^\circ, \quad \angle OBA = 30^\circ, \quad \angle OCA = 15^\circ $$
内心 $O$ から辺 $AB, CA$ に下ろした垂線の足をそれぞれ $P, R$ とすると、$OP = OR = r$ である。 $\triangle OPA, \triangle OPB, \triangle ORC$ は直角三角形となるため、各線分の長さは次のように求められる。
$$ OA = \frac{OP}{\sin 45^\circ} = \frac{r}{\frac{1}{\sqrt{2}}} = \sqrt{2}r $$
$$ OB = \frac{OP}{\sin 30^\circ} = \frac{r}{\frac{1}{2}} = 2r $$
$$ OC = \frac{OR}{\sin 15^\circ} = \frac{r}{\sin 15^\circ} $$
ここで、加法定理を用いて $\sin 15^\circ$ を求める。
$$ \begin{aligned} \sin 15^\circ &= \sin(45^\circ - 30^\circ) \\ &= \sin 45^\circ \cos 30^\circ - \cos 45^\circ \sin 30^\circ \\ &= \frac{\sqrt{2}}{2} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} - \frac{\sqrt{2}}{2} \cdot \frac{1}{2} \\ &= \frac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{4} \end{aligned} $$
したがって、$OC$ の長さは、
$$ \begin{aligned} OC &= \frac{4r}{\sqrt{6}-\sqrt{2}} \\ &= \frac{4(\sqrt{6}+\sqrt{2})r}{(\sqrt{6}-\sqrt{2})(\sqrt{6}+\sqrt{2})} \\ &= \frac{4(\sqrt{6}+\sqrt{2})r}{6-2} \\ &= (\sqrt{6}+\sqrt{2})r \end{aligned} $$
これらを用いて与えられた比を計算する。
$$ OA : OB = \sqrt{2}r : 2r = 1 : \frac{2}{\sqrt{2}} = 1 : \sqrt{2} = 1 : 0 + \sqrt{2} $$
条件より $k, l$ は負でない整数であるから、この形と比較して $k=0, l=2$ となる。
次に、$OA : OC$ を計算する。
$$ \begin{aligned} OA : OC &= \sqrt{2}r : (\sqrt{6}+\sqrt{2})r \\ &= 1 : \frac{\sqrt{6}+\sqrt{2}}{\sqrt{2}} \\ &= 1 : \sqrt{3} + 1 \\ &= 1 : 1 + \sqrt{3} \end{aligned} $$
条件より $m, n$ は負でない整数であるから、この形と比較して $m=1, n=3$ となる。
解法2
(1)
内接円 $O$ と辺 $AB, BC, CA$ との接点をそれぞれ $P, Q, R$ とおく。 $\angle A = 90^\circ$ であり、内心から接点へ下ろした半径は辺に垂直であるから、$\angle OPA = \angle ORA = 90^\circ$ となる。 したがって、四角形 $APOR$ はすべての角が直角で、隣り合う辺の長さが等しい($OP=OR=r$)ことから、1辺の長さが $r$ の正方形である。 ゆえに、$AP = AR = r$ である。
また、円外の1点から円に引いた2本の接線の長さは等しいため、
$$ BQ = BP, \quad CQ = CR $$
が成り立つ。 解法1と同様に $AB = \frac{1}{2}a, AC = \frac{\sqrt{3}}{2}a$ であるから、
$$ BP = AB - AP = \frac{1}{2}a - r $$
$$ CR = AC - AR = \frac{\sqrt{3}}{2}a - r $$
となる。辺 $BC$ の長さに着目すると $BC = BQ + CQ$ であるから、
$$ \begin{aligned} a &= \left(\frac{1}{2}a - r\right) + \left(\frac{\sqrt{3}}{2}a - r\right) \\ a &= \frac{1+\sqrt{3}}{2}a - 2r \\ 2r &= \frac{\sqrt{3}-1}{2}a \\ r &= \frac{\sqrt{3}-1}{4}a \end{aligned} $$
解説
(1) は内接円の半径を求める典型問題である。「面積を2通りで表す方法」と「接線の長さに着目して方程式を立てる方法」のどちらも頻出であり、確実に押さえておきたい。直角三角形の場合は、頂点と内心からできる四角形が正方形になることを利用する後者の解法が見通しが良いことが多い。
(2) は内心の性質を正しく理解し、垂線を引いて直角三角形を作り、三角比を利用する基本問題である。$\sin 15^\circ$ の値は頻出であるため、加法定理や半角の公式を用いてスムーズに導出できるようにしておくとよい。求めるものが比であるため、(1) で求めた $r$ を代入する必要はなく、$r$ のまま計算を進めると計算量が少なく済む。
答え
(1)
$$ r = \frac{\sqrt{3}-1}{4}a $$
(2)
$$ (k, l, m, n) = (0, 2, 1, 3) $$
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