北海道大学 1995年 理系 第5問 解説

方針・初手
コインを投げて表が出れば $x$ 軸の正の方向に 1、裏が出れば $y$ 軸の正の方向に 1 進むため、各移動後の $x$ 座標はそれまでに出た表の回数、$y$ 座標は裏の回数に等しい。 「直線 $x=2$ 上を長さ 1 以上通過する」という事象が起こる条件を、コインの出方に翻訳して考える。 一度 $x=3$ に進むと、それ以降は $x \ge 3$ となるため、二度と直線 $x=2$ 上に戻ることはない。したがって、直線 $x=2$ 上を長さ 1 以上通過するためには、「初めて $x=2$ に到達した直後の移動で裏が出る」ことが必要十分である。
解法1
コインを $N$ 回投げる試行において、ちょうど $k$ 回目の移動で初めて $x=2$ に到達し($x=2$ に到達するので $k \ge 2$)、かつ $k+1$ 回目に裏が出る事象を $A_k$ とする。 「直線 $x=2$ 上を長さ 1 以上通過する」ためには、ある $k$ ($2 \le k \le N-1$)について事象 $A_k$ が起こればよい。 各 $k$ について初めて $x=2$ に到達する回数は異なるため、事象 $A_k$ は互いに排反である。
$A_k$ が起こる条件は、以下の 3 つが連続して起こることである。
- $k-1$ 回目までに表が 1 回、裏が $k-2$ 回出る。
- $k$ 回目に表が出る。
- $k+1$ 回目に裏が出る。
この確率 $P(A_k)$ は、
$$ \begin{aligned} P(A_k) &= {}_{k-1}\mathrm{C}_{1} \left(\frac{1}{2}\right)^1 \left(\frac{1}{2}\right)^{k-2} \times \frac{1}{2} \times \frac{1}{2} \\ &= (k-1) \left(\frac{1}{2}\right)^{k+1} \end{aligned} $$
したがって、求める確率 $P_N$ はこれらの和となる。
$$ P_N = \sum_{k=2}^{N-1} P(A_k) = \sum_{k=2}^{N-1} (k-1) \left(\frac{1}{2}\right)^{k+1} $$
(1) $N=4$ のとき、
$$ \begin{aligned} P_4 &= \sum_{k=2}^{3} (k-1) \left(\frac{1}{2}\right)^{k+1} \\ &= 1 \cdot \left(\frac{1}{2}\right)^3 + 2 \cdot \left(\frac{1}{2}\right)^4 \\ &= \frac{1}{8} + \frac{2}{16} \\ &= \frac{1}{4} \end{aligned} $$
(2) $N \geqq 3$ のとき、求める確率 $P_N$ を $S_N$ とおく。
$$ S_N = 1 \cdot \left(\frac{1}{2}\right)^3 + 2 \cdot \left(\frac{1}{2}\right)^4 + 3 \cdot \left(\frac{1}{2}\right)^5 + \cdots + (N-2) \left(\frac{1}{2}\right)^N $$
両辺に $\frac{1}{2}$ を掛けると、
$$ \frac{1}{2}S_N = 1 \cdot \left(\frac{1}{2}\right)^4 + 2 \cdot \left(\frac{1}{2}\right)^5 + \cdots + (N-3) \left(\frac{1}{2}\right)^N + (N-2) \left(\frac{1}{2}\right)^{N+1} $$
辺々を引くと、
$$ \begin{aligned} S_N - \frac{1}{2}S_N &= \left(\frac{1}{2}\right)^3 + \left(\frac{1}{2}\right)^4 + \left(\frac{1}{2}\right)^5 + \cdots + \left(\frac{1}{2}\right)^N - (N-2) \left(\frac{1}{2}\right)^{N+1} \\ \frac{1}{2}S_N &= \frac{\left(\frac{1}{2}\right)^3 \left\{ 1 - \left(\frac{1}{2}\right)^{N-2} \right\}}{1 - \frac{1}{2}} - (N-2) \left(\frac{1}{2}\right)^{N+1} \\ \frac{1}{2}S_N &= \frac{1}{4} \left\{ 1 - \left(\frac{1}{2}\right)^{N-2} \right\} - (N-2) \left(\frac{1}{2}\right)^{N+1} \\ \frac{1}{2}S_N &= \frac{1}{4} - \left(\frac{1}{2}\right)^N - (N-2) \left(\frac{1}{2}\right)^{N+1} \end{aligned} $$
両辺を 2 倍して整理する。
$$ \begin{aligned} S_N &= \frac{1}{2} - 2\left(\frac{1}{2}\right)^N - (N-2) \left(\frac{1}{2}\right)^N \\ &= \frac{1}{2} - \frac{N}{2^N} \end{aligned} $$
したがって、
$$ P_N = \frac{1}{2} - \frac{N}{2^N} $$
(3) $N \geqq 2$ のとき、二項定理より以下が成り立つ。
$$ 2^N = (1+1)^N = 1 + N + \frac{N(N-1)}{2} + \cdots > \frac{N(N-1)}{2} $$
両辺は正であるから、逆数をとって $N$ を掛けると、
$$ 0 < \frac{N}{2^N} < \frac{2N}{N(N-1)} = \frac{2}{N-1} $$
$N \to \infty$ のとき $\frac{2}{N-1} \to 0$ であるから、はさみうちの原理より $\lim_{N \to \infty} \frac{N}{2^N} = 0$ となる。 したがって、
$$ \lim_{N \to \infty} P_N = \lim_{N \to \infty} \left( \frac{1}{2} - \frac{N}{2^N} \right) = \frac{1}{2} $$
解法2
(2) について、余事象と対称性を利用する別解を示す。
「直線 $x=2$ 上を長さ 1 以上通過する」という事象を $E$ とする。 余事象 $\overline{E}$ は「直線 $x=2$ 上を一度も通過しない、または通過する長さが 0 である」ことであり、これは次の 3 つの排反な事象に分けられる。
(i) $N$ 回の移動を終えた時点で $x \leqq 1$ である。($x=2$ に到達しない) (ii) ちょうど $N$ 回目の移動で $x=2$ に到達する。(その後移動しないので長さ 0 となる) (iii) ちょうど $k$ 回目($2 \leqq k \leqq N-1$)の移動で $x=2$ に到達し、その直後の $k+1$ 回目に表が出る。(すぐに $x=3$ へ進むので長さ 0 となる)
それぞれの確率を求める。
(i) の確率:$N$ 回のうち表が 0 回または 1 回出る確率であるから、
$$ \left(\frac{1}{2}\right)^N + {}_{N}\mathrm{C}_{1} \left(\frac{1}{2}\right)^N = \frac{N+1}{2^N} $$
(ii) の確率:$N-1$ 回目までに表が 1 回出て、$N$ 回目に表が出る確率であるから、
$$ {}_{N-1}\mathrm{C}_{1} \left(\frac{1}{2}\right)^{N-1} \times \frac{1}{2} = \frac{N-1}{2^N} $$
(iii) の確率:「ちょうど $k$ 回目で $x=2$ に到達し、$k+1$ 回目に表が出る」事象の和である。 ここで、各 $k$ について「$k$ 回目で $x=2$ に到達する」という前提のもとでは、次に投げるコインで表が出る確率も裏が出る確率もともに $\frac{1}{2}$ で等しい。 「ちょうど $k$ 回目で $x=2$ に到達し、$k+1$ 回目に裏が出る」事象の和集合は、事象 $E$ そのものである。 したがって、(iii) が起こる確率は $E$ が起こる確率 $P_N$ と等しい。
以上より、余事象の確率 $P(\overline{E}) = 1 - P_N$ について次の方程式が成り立つ。
$$ 1 - P_N = \frac{N+1}{2^N} + \frac{N-1}{2^N} + P_N $$
これを $P_N$ について解く。
$$ \begin{aligned} 2P_N &= 1 - \frac{2N}{2^N} \\ P_N &= \frac{1}{2} - \frac{N}{2^N} \end{aligned} $$
解説
「(等差数列) $\times$ (等比数列)」の和の計算という典型的な処理が要求される問題である。この和の計算は、公比を掛けて1つずらして引く手法が定石となる。 解法2で示したように、余事象に着目し「初めて $x=2$ に到達した直後に表が出る確率と裏が出る確率は同じである」という対称性を利用すると、計算量を大幅に減らすことができる。
また (3) の極限の結果は、「試行回数を無限に大きくすればいつかは必ず $x=2$ に到達する。その直後の移動で裏が出れば $x=2$ 上を移動し、表が出れば $x=3$ へ抜けて二度と戻らない。表裏の確率は半々であるから、全体として極限は $\frac{1}{2}$ になる」という直感的な理解と美しく一致する。
答え
(1) $P_4 = \frac{1}{4}$ (2) $P_N = \frac{1}{2} - \frac{N}{2^N}$ (3) $\lim_{N \to \infty} P_N = \frac{1}{2}$
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