京都大学 1971年 文系 第3問 解説

方針・初手
直線 $LM$ が台形の平行な2辺 $AB, DC$ と平行であることを利用し、平行線と線分の比の性質から $LN$ ($x$) と $NM$ ($y$) の長さを $a, b, c, d$ と内分比を用いて表す。その後、求めたい大小関係を代数的に処理して証明する。
解法1
直線 $LM$ は辺 $AB$ および $DC$ に平行であるから、線分 $AD, PQ, BC$ を同じ比に内分する。 その内分比を $AL : LD = t : 1-t \ (0 < t < 1)$ とおく。 このとき、平行線と線分の比の定理から $PN : NQ = t : 1-t$、$BM : MC = t : 1-t$ となる。
台形 $APQD$ において対角線 $AQ$ を引き、線分 $LN$ との交点を $K$ とする。 $\triangle ADQ$ において $LK \parallel DQ$ であるから、以下の関係が成り立つ。
$$ LK = t DQ = tc $$
$\triangle PQA$ において $KN \parallel AP$ であるから、以下の関係が成り立つ。
$$ KN = (1-t) AP = (1-t)a $$
$x = LN = LK + KN$ より、以下の式を得る。
$$ x = (1-t)a + tc $$
同様に、台形 $PBCQ$ において対角線 $BQ$ を引き、線分 $NM$ との交点を $J$ とする。 $\triangle PBQ$ において $NJ \parallel PB$ であるから、以下の関係が成り立つ。
$$ NJ = (1-t) PB = (1-t)b $$
$\triangle BCQ$ において $JM \parallel QC$ であるから、以下の関係が成り立つ。
$$ JM = t QC = td $$
$y = NM = NJ + JM$ より、以下の式を得る。
$$ y = (1-t)b + td $$
ここで、$\frac{y}{x}$ と $\frac{b}{a}$ の大小を比較するために差をとる。
$$ \begin{aligned} \frac{y}{x} - \frac{b}{a} &= \frac{(1-t)b + td}{(1-t)a + tc} - \frac{b}{a} \\ &= \frac{a \{ (1-t)b + td \} - b \{ (1-t)a + tc \}}{a \{ (1-t)a + tc \}} \\ &= \frac{a(1-t)b + atd - b(1-t)a - btc}{a \{ (1-t)a + tc \}} \\ &= \frac{t(ad - bc)}{a \{ (1-t)a + tc \}} \end{aligned} $$
各線分の長さは正であるため $a > 0, c > 0$ であり、$0 < t < 1$ より分母 $a \{ (1-t)a + tc \} > 0$ である。 また、分子について $t > 0$ であり、条件より $ad - bc > 0$ だから、分子 $t(ad - bc) > 0$ となる。 したがって、$\frac{y}{x} - \frac{b}{a} > 0$ となり、$\frac{b}{a} < \frac{y}{x}$ が成り立つ。
次に、$\frac{d}{c}$ と $\frac{y}{x}$ の大小を比較するために差をとる。
$$ \begin{aligned} \frac{d}{c} - \frac{y}{x} &= \frac{d}{c} - \frac{(1-t)b + td}{(1-t)a + tc} \\ &= \frac{d \{ (1-t)a + tc \} - c \{ (1-t)b + td \}}{c \{ (1-t)a + tc \}} \\ &= \frac{d(1-t)a + dtc - c(1-t)b - ctd}{c \{ (1-t)a + tc \}} \\ &= \frac{(1-t)(ad - bc)}{c \{ (1-t)a + tc \}} \end{aligned} $$
$c > 0$ および $0 < t < 1$ より分母 $c \{ (1-t)a + tc \} > 0$ である。 また、分子について $1-t > 0$ かつ条件より $ad - bc > 0$ だから、分子 $(1-t)(ad - bc) > 0$ となる。 したがって、$\frac{d}{c} - \frac{y}{x} > 0$ となり、$\frac{y}{x} < \frac{d}{c}$ が成り立つ。
以上より、$\frac{b}{a} < \frac{y}{x} < \frac{d}{c}$ である。
解法2
座標平面を設定して代数的に解く。 直線 $AB$ を $x$ 軸とし、点 $A$ を原点 $(0,0)$ にとる。 $P, B$ は $x$ 軸上にあり、$AP=a, PB=b$ であるから、座標は $P(a,0)$、$B(a+b,0)$ となる。 台形の高さを $h \ (h > 0)$ とすると、辺 $DC$ は直線 $y = h$ 上にある。 点 $D$ の座標を $(p, h)$ とおく。 $Q, C$ は辺 $DC$ 上にあり、$DQ=c, QC=d$ であるから、座標は $Q(p+c, h)$、$C(p+c+d, h)$ となる。
直線 $LM$ は $x$ 軸に平行であるから、その $y$ 座標を $th \ (0 < t < 1)$ とおく。 直線 $LM$ は線分 $AD, PQ, BC$ をそれぞれ $t : 1-t$ に内分する位置にあるため、直線上の点 $L, N, M$ の $x$ 座標は内分の公式により次のように求められる。
点 $L$ の $x$ 座標:
$$ (1-t) \cdot 0 + t \cdot p = tp $$
点 $N$ の $x$ 座標:
$$ (1-t) \cdot a + t \cdot (p+c) = tp + (1-t)a + tc $$
点 $M$ の $x$ 座標:
$$ (1-t) \cdot (a+b) + t \cdot (p+c+d) = tp + (1-t)(a+b) + t(c+d) $$
線分 $LN, NM$ は $x$ 軸に平行であるから、その長さは各点の $x$ 座標の差となる。
$$ \begin{aligned} x &= LN = (N \text{の} x \text{座標}) - (L \text{の} x \text{座標}) \\ &= \{ tp + (1-t)a + tc \} - tp \\ &= (1-t)a + tc \end{aligned} $$
$$ \begin{aligned} y &= NM = (M \text{の} x \text{座標}) - (N \text{の} x \text{座標}) \\ &= \{ tp + (1-t)(a+b) + t(c+d) \} - \{ tp + (1-t)a + tc \} \\ &= (1-t)b + td \end{aligned} $$
これを用いて、各分数の差をとる。
$$ \begin{aligned} \frac{y}{x} - \frac{b}{a} &= \frac{(1-t)b + td}{(1-t)a + tc} - \frac{b}{a} \\ &= \frac{t(ad - bc)}{a \{ (1-t)a + tc \}} \end{aligned} $$
各線分の長さより $a>0, c>0$ であり、$0 < t < 1$ より分母は正となる。 条件 $ad - bc > 0$ より分子も正であるから、$\frac{y}{x} - \frac{b}{a} > 0$ すなわち $\frac{b}{a} < \frac{y}{x}$ が成り立つ。
また、同じく差をとると以下のようになる。
$$ \begin{aligned} \frac{d}{c} - \frac{y}{x} &= \frac{d}{c} - \frac{(1-t)b + td}{(1-t)a + tc} \\ &= \frac{(1-t)(ad - bc)}{c \{ (1-t)a + tc \}} \end{aligned} $$
$c>0$ および $0 < t < 1$ より分母は正となる。 条件 $ad - bc > 0$ と $1-t > 0$ より分子も正であるから、$\frac{d}{c} - \frac{y}{x} > 0$ すなわち $\frac{y}{x} < \frac{d}{c}$ が成り立つ。
よって、$\frac{b}{a} < \frac{y}{x} < \frac{d}{c}$ を得る。
解説
- 台形において、平行な辺の間に別の平行線が引かれたとき、その線分の長さを上底・下底と内分比を用いて表す手法は図形問題の定石である。
- 解法1のような初等幾何的なアプローチ(対角線を引いて三角形の相似を用いる手法)は図形の性質を直接利用できるが、解法2のように座標平面を設定する解析幾何的なアプローチも計算が機械的になり有用である。
- 複数の値の大小比較では、それぞれの差をとって符号(正負)を判定するのが最も確実な基本方針である。本問では差を計算し通分することで、与えられた条件 $ad-bc>0$ が符号判定の決め手となるように自然と整理される。
答え
$$ \frac{b}{a} < \frac{y}{x} < \frac{d}{c} $$
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