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京都大学 1969年 理系 第3問 解説

数学1/命題と集合テーマ/存在証明テーマ/場合分け
京都大学 1969年 理系 第3問 解説

方針・初手

本問は、仮定を満たす要素が存在しない命題(いわゆる「空ゆえに真」)がなぜ真と判定されるのかを、対偶を用いて論理的に説明し、さらに具体的な数式を用いた命題でその理解を確認する空欄補充問題である。

まずは前半の文章の流れに沿って、命題と対偶の関係、および「条件 $A$ をみたすものが存在しない」ことの意味を翻訳していく。後半は、与えられた命題 $P$ に対して前提条件と仮定・結論を正確に分離し、それぞれの否定をとって逆と対偶を構成する。最後に、作成した各命題について、仮定を満たすものが存在するかどうか、および真偽を判定する。

解法1

前半の論理的説明について考える。 命題「$A \implies B$」において、条件 $A$ を満たすものが存在しない場合を考える。 命題の真偽は、その「対偶」の真偽と一致する(互いに同値である)。 「$A$ ならば $B$」の対偶は「$B$ でないならば、$A$ でない」である。 ここで、「条件 $A$ を満たすものが存在しない」ということは、対象となるどのような要素をとっても「$A$ でない」が成り立つということである。 したがって、対偶「$B$ でないならば、$A$ でない」においては、仮定($B$ でない)が何であれ、結論($A$ でない)が無条件に常に成り立つことになる。結論が常に真である以上、この対偶の命題自体も真である。 対偶が真であるから、それと同値なもとの命題「$A$ ならば $B$ である」も真である。

後半の具体例について考える。 命題 $P$:「$x, y$ が実数であって、$x^2+y^2+1=0$ であるならば、$x=0$ または $y=0$ である。」

「$x, y$ が実数であって」という部分は、議論の対象(全体集合)を定めている大前提であるため、条件 $A, B$ は以下のように抽出できる。 条件 $A$:「$x^2+y^2+1=0$」 条件 $B$:「$x=0$ または $y=0$」

それぞれの否定をとる。 $A$ の否定:「$x^2+y^2+1 \neq 0$」 $B$ の否定:「$x \neq 0$ かつ $y \neq 0$」(ド・モルガンの法則により「または」が「かつ」になる)

これらを用いて $P$ の逆と対偶を作る。前提「$x, y$ が実数であって」はそのまま保持する。 $P$ の逆($B \implies A$):「$x, y$ が実数であって、$x=0$ または $y=0$ であるならば、$x^2+y^2+1=0$ である。」 $P$ の対偶($\overline{B} \implies \overline{A}$):「$x, y$ が実数であって、$x \neq 0$ かつ $y \neq 0$ であるならば、$x^2+y^2+1 \neq 0$ である。」

最後に、(イ) と (ロ) について判定する。 (イ) 「初めに述べた命題の例」とは、「仮定を満たすものが存在しない命題」を指す。 $P$ の仮定は「$x^2+y^2+1=0$」であるが、$x, y$ が実数であるとき $x^2 \geqq 0, y^2 \geqq 0$ であるから、$x^2+y^2+1 \geqq 1 > 0$ となり、これを満たす実数 $x, y$ は存在しない。したがって $P$ はこれに該当する。 $P$ の逆の仮定「$x=0$ または $y=0$」を満たす実数 $x, y$ は存在する(例:$x=0, y=0$)。 $P$ の対偶の仮定「$x \neq 0$ かつ $y \neq 0$」を満たす実数 $x, y$ は存在する(例:$x=1, y=1$)。 よって、(イ) に該当するのは $P$ のみである。

(ロ) 真であるものを選ぶ。 $P$ は仮定を満たすものが存在しないため真である。 $P$ の逆について、$x=0, y=0$ とすると、仮定「$x=0$ または $y=0$」は満たすが、結論の式は $0^2+0^2+1 = 1 \neq 0$ となり成り立たない。よって反例が存在するため偽である。 $P$ の対偶は、もとの命題 $P$ と真偽が一致するため真である。(直接判定しても、$x, y$ が実数であれば結論 $x^2+y^2+1 \neq 0$ は常に成り立つため、仮定に関わらず真であるとわかる。) よって、(ロ) に該当するのは $P$ と $P$ の対偶である。

解説

「仮定が偽である(仮定を満たすものが存在しない)ならば、その命題は真である」という論理学の規則を、対偶を用いて高校数学の範囲で納得させる教育的な問題である。 ド・モルガンの法則を用いた否定の構成や、命題の逆・対偶の作り方、反例による偽の証明など、集合と論理分野の基本事項が網羅されている。 なお、「$x, y$ が実数であって」という前提条件を条件 $A$ の一部と見なして解答しても論理的な意味は変わらないが、否定をとる際の日本語の自然さを考慮し、本解答では全体集合の指定として独立させて扱っている。

答え

文中の空欄に入る語句および文は、順に以下の通りである。

($P$ について)

(判定)

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