京都大学 1984年 理系 第6問 解説

方針・初手
(1) は「存在」と「ただ1つ(一意性)」の2つを示す必要がある。存在は方程式 $f(x) - x = 0$ に対して「中間値の定理」を適用し、一意性は「導関数の符号(単調性)」または「平均値の定理」を用いて示す。
(2) は漸化式と不等式が絡む問題の基本手技である「平均値の定理」を用いて、$|d_{n+1} - c_0|$ と $|d_n - c_0|$ の関係式を導く。
解法1
(1)
関数 $g(x) = f(x) - x$ を考える。 仮定(イ)より、$f(x)$ は区間 $[a, b]$ で連続であるから、$g(x)$ も区間 $[a, b]$ で連続である。 仮定(ロ)より、$a \leqq f(a) \leqq b$、$a \leqq f(b) \leqq b$ であるから、
$$ g(a) = f(a) - a \geqq 0 $$
$$ g(b) = f(b) - b \leqq 0 $$
が成り立つ。
(i)
$g(a) = 0$ または $g(b) = 0$ のとき
$f(a) = a$ または $f(b) = b$ となり、$f(x) = x$ を満たす $x$ が存在する。
(ii)
$g(a) > 0$ かつ $g(b) < 0$ のとき
中間値の定理より、$g(c_0) = 0$、すなわち $f(c_0) = c_0$ を満たす $c_0$ が開区間 $(a, b)$ の中に少なくとも1つ存在する。
以上より、$f(c_0) = c_0$ を満たす $c_0 \in [a, b]$ が存在する。
次に、この $c_0$ がただ1つであることを示す。 仮定(イ)、(ハ)より、区間 $[a, b]$ において
$$ g'(x) = f'(x) - 1 $$
ここで、仮定(ハ)より $|f'(x)| \leqq k < 1$ であるから、$-1 < -k \leqq f'(x) \leqq k < 1$ となる。 したがって、
$$ g'(x) \leqq k - 1 < 0 $$
となり、$g(x)$ は区間 $[a, b]$ において単調に減少する。 単調減少関数が同じ値をとることはないため、$g(c_0) = 0$ となる $c_0$ はただ1つ存在する。 よって、等式 $f(c_0) = c_0$ を満たす値 $c_0$ が、区間 $[a, b]$ の中にただ1つ存在する。
(2)
数学的帰納法を用いて示す。 $d_n = c_0$ となる $n$ が存在する場合、それ以降は $d_{n+1} = f(c_0) = c_0$ となり、不等式は $0 \leqq 0$ となって自明に成り立つ。以下、$d_n \neq c_0$ として考える。
(I)
$n = 1$ のとき
$d_1 - c_0 = f(d_0) - f(c_0)$。 仮定(イ)より関数 $f(x)$ は区間 $[a, b]$ で微分可能であるから、$d_0$ と $c_0$ の間で平均値の定理を用いると、
$$ \frac{f(d_0) - f(c_0)}{d_0 - c_0} = f'(x_0) $$
を満たす $x_0$ が、$d_0$ と $c_0$ の間に存在する。 よって、$f(d_0) - f(c_0) = f'(x_0)(d_0 - c_0)$ となる。 両辺の絶対値をとると、
$$ |d_1 - c_0| = |f'(x_0)| |d_0 - c_0| $$
ここで、$x_0$ は区間 $[a, b]$ に含まれるので、仮定(ハ)より $|f'(x_0)| \leqq k$ である。 したがって、
$$ |d_1 - c_0| \leqq k |d_0 - c_0| $$
となり、$n=1$ のとき成立する。
(II)
$n = m$ ($m \geqq 1$) のとき
$$ |d_m - c_0| \leqq k^m |d_0 - c_0| $$
が成り立つと仮定する。 $n = m+1$ のとき、$d_{m+1} - c_0 = f(d_m) - f(c_0)$ であり、(I) と同様に $d_m$ と $c_0$ の間で平均値の定理を用いると、
$$ \frac{f(d_m) - f(c_0)}{d_m - c_0} = f'(x_m) $$
を満たす $x_m$ が、$d_m$ と $c_0$ の間に存在する。 よって、$f(d_m) - f(c_0) = f'(x_m)(d_m - c_0)$ となるから、絶対値をとって
$$ |d_{m+1} - c_0| = |f'(x_m)| |d_m - c_0| $$
仮定(ハ)より $|f'(x_m)| \leqq k$ であるから、
$$ |d_{m+1} - c_0| \leqq k |d_m - c_0| $$
これに帰納法の仮定を用いると、
$$ |d_{m+1} - c_0| \leqq k \left( k^m |d_0 - c_0| \right) = k^{m+1} |d_0 - c_0| $$
となり、$n = m+1$ のときも成立する。
(I), (II) より、すべての自然数 $n$ について
$$ |d_n - c_0| \leqq k^n |d_0 - c_0| $$
が成立することが示された。
解法2
((1) の別解:平均値の定理による一意性の証明)
存在の証明までは解法1と同じ。 $f(c_1) = c_1$、$f(c_2) = c_2$ となる $c_1, c_2 \in [a, b]$ ($c_1 \neq c_2$) が存在すると仮定する。 区間 $[a, b]$ において $c_1$ と $c_2$ の間で平均値の定理を用いると、
$$ \frac{f(c_1) - f(c_2)}{c_1 - c_2} = f'(c) $$
を満たす $c$ が $c_1$ と $c_2$ の間に存在する。 仮定より $f(c_1) = c_1, f(c_2) = c_2$ であるから、
$$ \frac{c_1 - c_2}{c_1 - c_2} = f'(c) $$
$$ f'(c) = 1 $$
となる。しかし、仮定(ハ)より区間 $[a, b]$ のすべての $x$ において $|f'(x)| \leqq k < 1$ であり $f'(c) = 1$ となることはないため矛盾。 したがって、等式 $f(c_0) = c_0$ を満たす値 $c_0$ はただ1つ存在する。
解説
大学数学における「バナッハの不動点定理(縮小写像の原理)」の1次元の場合を背景とした問題である。(1) の「存在」は中間値の定理、「ただ1つ」は背理法や単調性を利用して示す。(2) のように関数を繰り返し適用して作られる数列においては、平均値の定理を用いて隣接項の差を評価するのが極めて典型的な手法である。この考え方は、極限を求める問題などで頻出するため、確実にマスターしておきたい。
答え
(1)
略(解法1の証明を参照)
(2)
略(解法1の証明を参照)
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