京都大学 1989年 理系 第4問 解説

方針・初手
四面体において3つのベクトルが互いに直交しているという条件から、直交座標系を設定するのが定石である。 $O$ を原点とし、$A, B, C$ をそれぞれ $x, y, z$ 軸上にとることで、各点の座標やベクトルの成分を簡潔に表現できる。 点 $G$ の座標と平面の法線ベクトルから切り口となる平面の方程式を立て、四面体の各頂点がその平面の「どちら側」にあるか(代入したときの式の値の符号)を調べることで、平面がどの辺と交わるかが分かり、切り口の形状を分類できる。 面積については、座標平面上の3点で作られる三角形の面積の公式(各座標平面への正射影の面積の2乗和の平方根)を用いると見通しよく計算できる。
解法1
$O$ を原点とする空間座標を設定し、$\vec{OA}, \vec{OB}, \vec{OC}$ がそれぞれ $x, y, z$ 軸の正の向きと一致するようにとる。 長さの条件から、4つの頂点の座標はそれぞれ $O(0, 0, 0)$、$A(a, 0, 0)$、$B(0, b, 0)$、$C(0, 0, c)$ とおける。このとき、点 $G$ の位置ベクトルは
$$ \vec{OG} = \frac{1}{4}(\vec{OA} + \vec{OB} + \vec{OC}) = \frac{1}{4}(a, b, c) $$
であり、点 $G$ の座標は $\left( \frac{a}{4}, \frac{b}{4}, \frac{c}{4} \right)$ である。
切り口となる平面を $\pi$ とする。$\pi$ は点 $G$ を通り、法線ベクトルが $\vec{OG}$ であるから、平面 $\pi$ 上の任意の点 $P(x, y, z)$ について $\vec{OG} \cdot \vec{GP} = 0$ が成り立つ。
$$ \frac{a}{4} \left( x - \frac{a}{4} \right) + \frac{b}{4} \left( y - \frac{b}{4} \right) + \frac{c}{4} \left( z - \frac{c}{4} \right) = 0 $$
整理すると、平面 $\pi$ の方程式は
$$ ax + by + cz = \frac{a^2 + b^2 + c^2}{4} $$
となる。 ここで、四面体の各頂点が平面 $\pi$ のどちら側にあるかを調べるため、$f(x, y, z) = ax + by + cz - \frac{a^2 + b^2 + c^2}{4}$ とおく。 各頂点の座標を代入すると、
$$ f(O) = -\frac{a^2 + b^2 + c^2}{4} < 0 $$
$$ f(A) = a^2 - \frac{a^2 + b^2 + c^2}{4} = \frac{3a^2 - b^2 - c^2}{4} $$
$$ f(B) = b^2 - \frac{a^2 + b^2 + c^2}{4} = \frac{3b^2 - c^2 - a^2}{4} $$
$$ f(C) = c^2 - \frac{a^2 + b^2 + c^2}{4} = \frac{3c^2 - a^2 - b^2}{4} $$
頂点 $O$ は常に $f(x, y, z) < 0$ の領域にある。 $P_A = 3a^2 - b^2 - c^2$、$P_B = 3b^2 - c^2 - a^2$、$P_C = 3c^2 - a^2 - b^2$ とおく。 平面 $\pi$ が四面体の辺と交わる条件は、辺の両端の頂点で $f(x, y, z)$ の符号が異なることである。
(i)
$P_A, P_B, P_C$ のうち、1つが負であり、残り2つが正となるとき (例:$P_A < 0$ かつ $P_B > 0, P_C > 0$) 頂点 $O, A$ が負の領域にあり、頂点 $B, C$ が正の領域にある。このとき、平面 $\pi$ は異なる領域を結ぶ4つの辺 $OB, OC, AB, AC$ と交わるため、切り口は 四角形 になる。
(ii) それ以外のとき (例:$P_A, P_B, P_C$ がすべて正、または2つが負など。ただし和が正となるためすべてが負になることはない) 頂点の分かれ方は「1つの頂点 対 3つの頂点」となるため、平面 $\pi$ は3つの辺と交わり、切り口は 三角形 になる。(境界となる $0$ を含む場合、切り口の頂点が四面体の頂点に一致するが、形状としては三角形に帰着する)
したがって、長さの区分による形状は以下のようになる。
- $3a^2 - b^2 - c^2$, $3b^2 - c^2 - a^2$, $3c^2 - a^2 - b^2$ のうち、1つが負であり残り2つが正のとき、四角形
- それ以外のとき、三角形
後半の計算を行う。 $a = 7, b = 8, c = 9$ のとき、
$$ a^2 = 49, \quad b^2 = 64, \quad c^2 = 81 $$
$$ P_A = 3(49) - 64 - 81 = 147 - 145 = 2 > 0 $$
$$ P_B = 3(64) - 81 - 49 = 192 - 130 = 62 > 0 $$
$$ P_C = 3(81) - 49 - 64 = 243 - 113 = 130 > 0 $$
すべて正であるため、切り口の図形は 三角形 である。
平面 $\pi$ と $x, y, z$ 軸の交点をそれぞれ $X(p, 0, 0), Y(0, q, 0), Z(0, 0, r)$ とおく。 方程式に代入して整理すると、定数項を $K = \frac{a^2 + b^2 + c^2}{4}$ とおいて、
$$ p = \frac{K}{a}, \quad q = \frac{K}{b}, \quad r = \frac{K}{c} $$
切り口である $\triangle XYZ$ の面積 $S$ は、各座標平面への正射影の面積の2乗和の平方根で求められる。 正射影の面積はそれぞれ $\frac{1}{2}qr, \frac{1}{2}rp, \frac{1}{2}pq$ であるから、
$$ S = \sqrt{\left(\frac{1}{2}qr\right)^2 + \left(\frac{1}{2}rp\right)^2 + \left(\frac{1}{2}pq\right)^2} = \frac{1}{2}pqr\sqrt{\frac{1}{p^2} + \frac{1}{q^2} + \frac{1}{r^2}} $$
代入して整理すると、
$$ S = \frac{1}{2} \cdot \frac{K^3}{abc} \sqrt{\frac{a^2}{K^2} + \frac{b^2}{K^2} + \frac{c^2}{K^2}} = \frac{K^2 \sqrt{a^2 + b^2 + c^2}}{2abc} $$
ここで、$a = 7, b = 8, c = 9$ より
$$ a^2 + b^2 + c^2 = 194 $$
$$ K = \frac{194}{4} = \frac{97}{2} $$
$$ 2abc = 2 \times 7 \times 8 \times 9 = 1008 $$
これらを面積の式に代入すると、
$$ S = \frac{\left(\frac{97}{2}\right)^2 \sqrt{194}}{1008} = \frac{\frac{9409}{4} \sqrt{194}}{1008} = \frac{9409\sqrt{194}}{4032} $$
解説
空間図形の切断問題を、座標を用いた代数的な処理に帰着させることで見通しよく解くことができる。「平面が四面体のどの辺と交わるか」は、四面体の4つの頂点が平面の「どちら側」にあるかを判定することで分類できる。符号の組合せによって辺の交差回数が3回(三角形)か4回(四角形)に分かれるという視点は、他の切断面の問題でも応用できる重要な考え方である。 面積を求める際、$\triangle XYZ$ の3辺の長さを求めてからヘロンの公式を使うことも可能であるが、本解法のように各座標平面への正射影の面積を用いる(四平方の定理とも呼ばれる)ことで、計算量が劇的に軽減される。
答え
$3a^2 - b^2 - c^2$, $3b^2 - c^2 - a^2$, $3c^2 - a^2 - b^2$ のうち、1つが負であり残り2つが正のとき、四角形。それ以外のとき、三角形。 面積:$\frac{9409\sqrt{194}}{4032}$
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