京都大学 1989年 理系 第3問 解説

方針・初手
$f(x)$ を $x$ の3次式として具体的に $ax^3+bx^2+cx+d$ ($a \neq 0$) とおき、その導関数 $f'(x)$ で割る計算を実際に実行する。 「余りが定数である」という条件は、余りの式の $x$ の係数が $0$ になることと同値である。この条件から $a, b, c$ の関係式を導き、それが $f'(x)=0$ が重解をもつ(すなわち $f(x)$ が極値をもたない)条件と一致することを示す。 また、割り算の等式(恒等式)をそのまま微分して考えるアプローチも非常に有効である。
解法1
$f(x)$ は3次式であるから、$a, b, c, d$ を実数($a \neq 0$)として
$$ f(x) = ax^3 + bx^2 + cx + d $$
とおく。このとき、導関数 $f'(x)$ は
$$ f'(x) = 3ax^2 + 2bx + c $$
である。$f(x)$ を $f'(x)$ で割ると、商は1次式になるため、次のように計算できる。
$$ ax^3 + bx^2 + cx + d = (3ax^2 + 2bx + c)\left( \frac{1}{3}x + \frac{b}{9a} \right) + \left( \frac{2}{3}c - \frac{2b^2}{9a} \right)x + d - \frac{bc}{9a} $$
条件より、この割り算の余りは定数である。したがって、余りの1次以上の項($x$ の係数)は $0$ でなければならない。
$$ \frac{2}{3}c - \frac{2b^2}{9a} = 0 $$
両辺に $\frac{9a}{2}$ を掛けると
$$ 3ac - b^2 = 0 $$
$$ b^2 - 3ac = 0 $$
この関係式を用いて、導関数 $f'(x)$ を平方完成すると
$$ f'(x) = 3a \left( x^2 + \frac{2b}{3a}x \right) + c = 3a \left( x + \frac{b}{3a} \right)^2 - \frac{b^2}{3a} + c $$
$$ f'(x) = 3a \left( x + \frac{b}{3a} \right)^2 - \frac{b^2 - 3ac}{3a} $$
ここで $b^2 - 3ac = 0$ であるから、
$$ f'(x) = 3a \left( x + \frac{b}{3a} \right)^2 $$
となる。 $a \neq 0$ であるため、$f'(x)$ は $x = -\frac{b}{3a}$ のときのみ $0$ となり、それ以外のすべての実数 $x$ において $f'(x)$ の符号は $a$ の符号と一致して一定である。 すなわち、$f(x)$ は常に単調に増加($a>0$ のとき)、または常に単調に減少($a<0$ のとき)する関数であり、極値をもたない。
さらに、$f(x)$ は3次関数であるから、
$$ \lim_{x \to \infty} f(x) \quad \text{と} \quad \lim_{x \to -\infty} f(x) $$
は一方が $\infty$ で他方が $-\infty$ となる。 したがって、関数 $f(x)$ は連続で常に単調であるから、$y=f(x)$ のグラフは $x$ 軸とただ1つの点で交わる。 ゆえに、方程式 $f(x)=0$ を満たす実数 $x$ はただ一つである。
解法2
$f(x)$ を $f'(x)$ で割ったときの商を $px+q$ ($p, q$ は実数、$p \neq 0$)、定数となる余りを $r$ とおくと、次の恒等式が成り立つ。
$$ f(x) = f'(x)(px + q) + r \quad \cdots (1) $$
$f(x)$ の最高次の項を $ax^3$ ($a \neq 0$) とすると、$f'(x)$ の最高次の項は $3ax^2$ である。 (1) の両辺の $x^3$ の係数を比較すると、$a = 3a \cdot p$ となるため、$p = \frac{1}{3}$ である。よって、
$$ f(x) = f'(x) \left( \frac{1}{3}x + q \right) + r \quad \cdots (2) $$
(2) の両辺を $x$ について微分すると、
$$ f'(x) = f''(x) \left( \frac{1}{3}x + q \right) + f'(x) \cdot \frac{1}{3} $$
整理すると、
$$ \frac{2}{3} f'(x) = f''(x) \left( \frac{1}{3}x + q \right) $$
$$ 2f'(x) = f''(x) (x + 3q) \quad \cdots (3) $$
ここで、$f'(x)$ は $x$ の2次式であり、その最高次の項は $3ax^2$ であるから、導関数 $f''(x)$ は $x$ の1次式であり、最高次の項は $6ax$ である。 したがって、$f''(x) = 6a(x + k)$ ($k$ は定数)とおくことができる。 これを (3) に代入すると、
$$ 2f'(x) = 6a(x + k)(x + 3q) $$
$$ f'(x) = 3a(x + k)(x + 3q) \quad \cdots (4) $$
(4) の両辺を微分すると、積の微分法より
$$ f''(x) = 3a(x + 3q) + 3a(x + k) = 3a(2x + k + 3q) $$
これが $f''(x) = 6a(x + k) = 3a(2x + 2k)$ と恒等的に等しくなるため、定数項を比較して
$$ k + 3q = 2k \implies k = 3q $$
よって、$f'(x)$ は
$$ f'(x) = 3a(x + 3q)^2 $$
と表される。 これ以降は解法1と同様に、$f'(x)$ の符号が変化しないことから $f(x)$ が単調関数であることを述べ、中間値の定理により実数解がただ1つであることを示せる。
解説
「多項式の割り算」をテーマにした、微分の性質を問う良問である。 解法1のように係数をすべて文字で置いて直接計算するのが最も確実であるが、計算ミスに注意が必要である。多項式の割り算は筆算で行うか、恒等式を立てて係数比較で商と余りを求める。 解法2は、「恒等式は微分しても恒等式である」という強力な性質を利用したものである。この手法を用いると、文字の数を減らしつつ本質的な関係式(ここでは $f'(x)$ が完全平方式になること)を鮮やかに導き出すことができる。 極値をもたない3次関数が実数解を1つだけもつことの論証には、「単調性」と「$x \to \pm \infty$ における極限」の2点に言及すると答案として隙がなくなる。
答え
略(解法1の証明を参照)
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