京都大学 2008年 理系 第1問(甲) 解説

方針・初手
2つの関数 $y = \log x$ と $y = px + q$ のグラフが共有点を持たない条件を考える。共有点の $x$ 座標は方程式 $\log x = px + q$($x > 0$)の実数解であるから、「この方程式が $x > 0$ において実数解を持たない条件」を求めればよい。差の関数 $f(x) = \log x - px - q$ を設定し、その増減や極値を調べるのが基本方針となる。その際、$x \to \infty$ における極限の振る舞いが直線の傾き $p$ の符号によって変わるため、$p$ の値による場合分けが必要になることに注意する。
解法1
$f(x) = \log x - px - q \quad (x > 0)$ とおく。直線と曲線の共有点が存在しないことは、$x > 0$ において $f(x) = 0$ となる実数 $x$ が存在しないことと同値である。直線の傾き $p$ の値によって以下のように場合分けを行う。
(i) $p \leqq 0$ のとき
関数の極限を考えると、$\lim_{x \to +0} f(x) = -\infty$。また、$x \to \infty$ のとき、
$$ f(x) = x \left( \frac{\log x}{x} - p - \frac{q}{x} \right) $$
と変形できる。ここで $\lim_{x \to \infty} \frac{\log x}{x} = 0$ であり、$p \leqq 0$ であるから $-p \geqq 0$ となる。$p < 0$ のときは括弧内が正の定数 $-p$ に収束し、$p = 0$ のときは $\lim_{x \to \infty} (\log x - q) = \infty$ となるため、いずれの場合も
$$ \lim_{x \to \infty} f(x) = \infty $$
となる。$f(x)$ は $x > 0$ において連続であるから、中間値の定理より $f(x) = 0$ を満たす $x$ が少なくとも1つ存在する。よって、共有点を持つため条件を満たさない。
(ii) $p > 0$ のとき
$f(x)$ を微分すると
$$ f'(x) = \frac{1}{x} - p = \frac{1 - px}{x} $$
$f'(x) = 0$ とすると、$x = \frac{1}{p}$ である。$x > 0$ における $f(x)$ の増減表は以下のようになる。
| $x$ | $(0)$ | $\cdots$ | $\dfrac{1}{p}$ | $\cdots$ |
|---|---|---|---|---|
| $f'(x)$ | $+$ | $0$ | $-$ | |
| $f(x)$ | $\nearrow$ | 極大 | $\searrow$ |
増減表より、$f(x)$ は $x = \frac{1}{p}$ のときに最大値をとる。その最大値は、
$$ f\left(\frac{1}{p}\right) = \log\frac{1}{p} - p \cdot \frac{1}{p} - q = -\log p - 1 - q $$
$f(x) = 0$ となる実数 $x$ が存在しないための必要十分条件は、この最大値が負となることである。($\lim_{x \to +0} f(x) = -\infty$, $\lim_{x \to \infty} f(x) = -\infty$ であるため、最大値が $0$ 以上の場合は必ず解を持つ)したがって、
$$ -\log p - 1 - q < 0 \iff q > -\log p - 1 $$
(i), (ii) より、求める必要十分条件は $p > 0$ かつ $q > -\log p - 1$ である。
解法2
グラフの凸性と接線を利用して視覚的に条件を求める。
関数 $y = \log x$ について、$y' = \frac{1}{x}$, $y'' = -\frac{1}{x^2} < 0$ であるから、このグラフは常に上に凸である。上に凸な曲線は、その任意の点における接線よりも常に下側(接点を除く)に位置する。
(i) $p \leqq 0$ のとき
$y = \log x$ のグラフは単調増加で値域は実数全体である。傾きが $0$ 以下の直線 $y = px + q$ を引くと、一方は単調増加($-\infty$ から $\infty$ へ)、もう一方は単調減少または定数であるため、必ずどこかで交わる。よって不適。
(ii) $p > 0$ のとき
曲線 $y = \log x$ 上に、傾きが $p$ となるような接線が存在するか考える。$y' = \frac{1}{x} = p$ とすると、$x = \frac{1}{p}$ となる。よって、接点の座標は $\left(\frac{1}{p},\ -\log p\right)$ である。この点における接線の方程式は、
$$ y = px - 1 - \log p $$
曲線 $y = \log x$ は上に凸であるため、グラフはつねにこの接線以下の領域にある。したがって、傾き $p$ の直線 $y = px + q$ が $y = \log x$ のグラフと共有点を持たないためには、この直線が接線と平行であり、かつ接線よりも真上に位置していればよい。切片を比較して、
$$ q > -1 - \log p $$
以上より、求める条件は $p > 0$ かつ $q > -\log p - 1$ となる。
解説
対数関数と直線の位置関係を問う標準的な問題です。解法1のように差の関数を作って微分し、極値(最大値)を調べるのが最も確実で汎用性の高いアプローチです。このとき、$p \leqq 0$ の場合の考察を忘れないように注意が必要です。極限の振る舞いから交点を持つことを記述できるかがポイントになります。解法2のように、上に凸な関数の性質「曲線は接線の下側にある」という事実を利用すると、計算量を抑えて簡潔に見通しよく解くことができます。記述試験では、上に凸であることと接線の関係性を明確に述べる必要があります。
答え
$$ p > 0 \text{ かつ } q > -\log p - 1 $$
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