九州大学 1971年 文系 第4問 解説

方針・初手
- (1) は、与えられた座標を双曲線の方程式に代入し、等式が成り立つことを計算によって直接確かめる。
- (2) は、2通りの方針が考えられる。1つ目は、(1) の結果を誘導として利用し、数学的帰納法で証明する方針。2つ目は、$a-\sqrt{3}b = (2-\sqrt{3})^n$ となることを二項定理を用いて示し、直接 $a^2-3b^2=1$ を導く方針である。
解法1
(1)
点 $(a, b)$ が双曲線①の上にあると仮定すると、次の等式が成り立つ。
$$a^2 - 3b^2 = 1$$
このとき、点 $(2a + 3b, a + 2b)$ の座標を①の左辺に代入すると、
$$\begin{aligned} (2a + 3b)^2 - 3(a + 2b)^2 &= (4a^2 + 12ab + 9b^2) - 3(a^2 + 4ab + 4b^2) \\ &= 4a^2 + 12ab + 9b^2 - 3a^2 - 12ab - 12b^2 \\ &= a^2 - 3b^2 \end{aligned}$$
となる。仮定より $a^2 - 3b^2 = 1$ であるから、
$$(2a + 3b)^2 - 3(a + 2b)^2 = 1$$
が成り立つ。 したがって、点 $(2a + 3b, a + 2b)$ は双曲線①の上にある。(証明終)
(2)
自然数 $n$ に対して、$a_n + \sqrt{3}b_n = (2 + \sqrt{3})^n$ を満たす整数 $a_n, b_n$ をとるとき、点 $(a_n, b_n)$ が双曲線①上にあることを数学的帰納法で証明する。
[1] $n = 1$ のとき
$$a_1 + \sqrt{3}b_1 = 2 + \sqrt{3}$$
$a_1, b_1$ は整数であり、$\sqrt{3}$ は無理数であるから、$a_1 = 2, b_1 = 1$ と一意に定まる。 このとき、
$$a_1^2 - 3b_1^2 = 2^2 - 3 \cdot 1^2 = 4 - 3 = 1$$
となるため、点 $(a_1, b_1)$ は双曲線①上にある。よって、$n=1$ のとき成り立つ。
[2] $n = k$($k$ は正の整数)のとき成り立つと仮定する
すなわち、点 $(a_k, b_k)$ が双曲線①上にあると仮定する。 $n = k+1$ のとき、
$$\begin{aligned} a_{k+1} + \sqrt{3}b_{k+1} &= (2 + \sqrt{3})^{k+1} \\ &= (2 + \sqrt{3})(2 + \sqrt{3})^k \\ &= (2 + \sqrt{3})(a_k + \sqrt{3}b_k) \\ &= 2a_k + 2\sqrt{3}b_k + \sqrt{3}a_k + 3b_k \\ &= (2a_k + 3b_k) + (a_k + 2b_k)\sqrt{3} \end{aligned}$$
$a_{k+1}, b_{k+1}, a_k, b_k$ はすべて整数であり、$\sqrt{3}$ は無理数であるから、無理数の相等条件より係数を比較して
$$a_{k+1} = 2a_k + 3b_k$$
$$b_{k+1} = a_k + 2b_k$$
と一意に定まる。
帰納法の仮定より、点 $(a_k, b_k)$ は双曲線①上にある。 したがって、(1) の結果を用いると、点 $(2a_k + 3b_k, a_k + 2b_k)$、すなわち点 $(a_{k+1}, b_{k+1})$ も双曲線①上にあることがわかる。 よって、$n=k+1$ のときも成り立つ。
[1], [2] より、すべての正の整数 $n$ について、点 $(a, b)$ は双曲線①の上にある。(証明終)
解法2
(2) の別解(共役な無理数を利用する解法)
二項定理を用いて $(2 + \sqrt{3})^n$ を展開する。
$$(2 + \sqrt{3})^n = \sum_{k=0}^{n} \binom{n}{k} 2^{n-k} (\sqrt{3})^k$$
この和を、$k$ が偶数の項と奇数の項に分ける。$k=2m$($m$ は非負整数)のとき $(\sqrt{3})^{2m} = 3^m$ は整数であり、$k=2m+1$ のとき $(\sqrt{3})^{2m+1} = 3^m \sqrt{3}$ となる。
$$\sum_{m=0}^{\lfloor n/2 \rfloor} \binom{n}{2m} 2^{n-2m} 3^m = A$$
$$\sum_{m=0}^{\lfloor (n-1)/2 \rfloor} \binom{n}{2m+1} 2^{n-2m-1} 3^m = B$$
とおくと、$A, B$ はともに整数であり、
$$(2 + \sqrt{3})^n = A + B\sqrt{3}$$
と表せる。条件より $a + \sqrt{3}b = (2 + \sqrt{3})^n = A + B\sqrt{3}$ であり、$a, b, A, B$ は整数、$\sqrt{3}$ は無理数であるから、
$$a = A, \quad b = B$$
と一意に定まる。
同様に、$(2 - \sqrt{3})^n$ を二項定理で展開すると、$(-\sqrt{3})^k$ において $k$ が偶数のときは符合が正、$k$ が奇数のときは符合が負になるため、
$$\begin{aligned} (2 - \sqrt{3})^n &= \sum_{k=0}^{n} \binom{n}{k} 2^{n-k} (-\sqrt{3})^k \\ &= A - B\sqrt{3} \\ &= a - b\sqrt{3} \end{aligned}$$
となる。
ここで、$(a + \sqrt{3}b)(a - \sqrt{3}b)$ を計算する。
$$\begin{aligned} (a + \sqrt{3}b)(a - \sqrt{3}b) &= (2 + \sqrt{3})^n (2 - \sqrt{3})^n \\ a^2 - 3b^2 &= \{(2 + \sqrt{3})(2 - \sqrt{3})\}^n \\ &= (4 - 3)^n \\ &= 1^n \\ &= 1 \end{aligned}$$
よって、$a^2 - 3b^2 = 1$ が成り立つため、点 $(a, b)$ は双曲線①の上にある。(証明終)
解説
ペル方程式($x^2 - Dy^2 = 1$ の形をしたディオファントス方程式)の解の構成に関する典型的な問題である。 (1) は単純な計算問題に見えるが、実は「ある解 $(a, b)$ から次の解 $(2a+3b, a+2b)$ を作り出せる」ことを示しており、(2) を帰納法で解く際のステップに直結する誘導となっている。 解法1はこの誘導に素直に乗ったものであり、無理数の相等条件($A, B, C, D$ が有理数で $\sqrt{k}$ が無理数のとき、$A+B\sqrt{k}=C+D\sqrt{k} \iff A=C \text{ かつ } B=D$)を用いて連立漸化式を導いている。 解法2は共役な無理数の性質を利用した、より直接的で鮮やかな解法である。どちらも入試数学において非常に重要な発想であるため、両方とも習得しておきたい。
答え
(1) 代入計算により、$(2a + 3b)^2 - 3(a + 2b)^2 = 1$ となることを示して証明した。 (2) (1) の結果を用いた数学的帰納法、あるいは二項定理と共役な無理数の性質を用いることで証明した。
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