九州大学 1995年 理系 第3問 解説

方針・初手
面積 $S_n$ は、だ円の式を円の式に変換(拡大・縮小)して扇形の面積に帰着させるか、直接定積分を計算することで求められる。 格子点の総数 $T_n$ は、領域に含まれる $x$ 座標が限られている($x=0, 1, 2$)ことに着目し、各 $x$ ごとに $y$ の個数を数え上げる。ガウス記号を用いて表すと極限計算が容易になる。
解法1
(1)
与えられただ円と直線の交点を求める。
$$\frac{x^2}{4} + \frac{1}{n^2}\left(\frac{n\sqrt{3}}{2}x\right)^2 = 1$$
これを解くと $x^2=1$ となり、第1象限の交点であることから $x=1$ を得る。このとき $y = \frac{\sqrt{3}}{2}n$ となるため、交点は $\left(1, \frac{\sqrt{3}}{2}n\right)$ である。
領域 $A_n$ は、連立不等式
$$\begin{cases} x \ge 0, \ y \ge 0 \\ y \le \frac{n\sqrt{3}}{2}x \\ \frac{x^2}{4} + \frac{y^2}{n^2} \le 1 \end{cases}$$
の表す領域である。
まず、面積 $S_n$ を求める。 $y$ 軸方向に $\frac{2}{n}$ 倍する変換を考えると、領域 $A_n$ は、連立不等式
$$\begin{cases} x \ge 0, \ y \ge 0 \\ y \le \sqrt{3}x \\ x^2 + y^2 \le 4 \end{cases}$$
が表す領域 $A'_n$ に移る。 領域 $A'_n$ は、半径 $2$ の円の第1象限の部分のうち、直線 $y = \sqrt{3}x$ と $x$ 軸の間の部分であるから、中心角が $\frac{\pi}{3}$ の扇形となる。その面積 $S'_n$ は
$$S'_n = \frac{1}{2} \cdot 2^2 \cdot \frac{\pi}{3} = \frac{2}{3}\pi$$
領域 $A_n$ は $A'_n$ を $y$ 軸方向に $\frac{n}{2}$ 倍したものであるから、
$$S_n = \frac{n}{2} S'_n = \frac{\pi}{3}n$$
次に、格子点の総数 $T_n$ を求める。 実数 $x$ を超えない最大の整数を $[x]$ で表すこととする。 領域 $A_n$ に含まれる点の $x$ 座標の範囲は $0 \le x \le 2$ であり、$x$ は整数であるから、$x = 0, 1, 2$ である。各 $x$ について、領域に含まれる整数 $y$ の個数を数える。
(i) $x = 0$ のとき
だ円の式より $\frac{y^2}{n^2} \le 1$ であるが、直線 $y = \frac{n\sqrt{3}}{2}x$ の条件により $y \le 0$ となる。$y \ge 0$ とあわせて $y = 0$ のみ。よって $1$ 個。
(ii) $x = 1$ のとき
直線の条件より $y \le \frac{\sqrt{3}}{2}n$ であり、だ円の条件からも $\frac{y^2}{n^2} \le \frac{3}{4}$ つまり $y \le \frac{\sqrt{3}}{2}n$ となる。 したがって、整数 $y$ の範囲は $0 \le y \le \left[ \frac{\sqrt{3}}{2}n \right]$ となる。 この範囲に含まれる整数 $y$ の個数は $\left[ \frac{\sqrt{3}}{2}n \right] + 1$ 個である。
(iii) $x = 2$ のとき
だ円の式より $\frac{2^2}{4} + \frac{y^2}{n^2} \le 1$ となり $\frac{y^2}{n^2} \le 0$ となる。よって $y=0$ のみ。$1$ 個。
以上より、格子点の総数 $T_n$ は
$$T_n = 1 + \left( \left[ \frac{\sqrt{3}}{2}n \right] + 1 \right) + 1 = \left[ \frac{\sqrt{3}}{2}n \right] + 3$$
(2)
ガウス記号の定義より、任意の $n$ に対して
$$\frac{\sqrt{3}}{2}n - 1 < \left[ \frac{\sqrt{3}}{2}n \right] \le \frac{\sqrt{3}}{2}n$$
が成り立つ。各辺に $3$ を足して
$$\frac{\sqrt{3}}{2}n + 2 < T_n \le \frac{\sqrt{3}}{2}n + 3$$
辺々を $S_n = \frac{\pi}{3}n \ (>0)$ で割ると
$$\frac{\frac{\sqrt{3}}{2}n + 2}{\frac{\pi}{3}n} < \frac{T_n}{S_n} \le \frac{\frac{\sqrt{3}}{2}n + 3}{\frac{\pi}{3}n}$$
ここで、$n \to \infty$ とすると、
$$\lim_{n \to \infty} \frac{\frac{\sqrt{3}}{2}n + 2}{\frac{\pi}{3}n} = \lim_{n \to \infty} \frac{\frac{\sqrt{3}}{2} + \frac{2}{n}}{\frac{\pi}{3}} = \frac{3\sqrt{3}}{2\pi}$$
$$\lim_{n \to \infty} \frac{\frac{\sqrt{3}}{2}n + 3}{\frac{\pi}{3}n} = \lim_{n \to \infty} \frac{\frac{\sqrt{3}}{2} + \frac{3}{n}}{\frac{\pi}{3}} = \frac{3\sqrt{3}}{2\pi}$$
はさみうちの原理より、
$$\lim_{n \to \infty} \frac{T_n}{S_n} = \frac{3\sqrt{3}}{2\pi}$$
解法2
(1) $S_n$ の定積分による導出
だ円の方程式を $y \ge 0$ について解くと、
$$y = n\sqrt{1 - \frac{x^2}{4}}$$
となる。領域 $A_n$ は $x=1$ を境に、直線と $x$ 軸に囲まれた部分と、だ円と $x$ 軸に囲まれた部分に分けられるため、面積 $S_n$ は次のように表される。
$$S_n = \int_0^1 \frac{n\sqrt{3}}{2}x \, dx + \int_1^2 n\sqrt{1 - \frac{x^2}{4}} \, dx$$
第1項の積分は
$$\int_0^1 \frac{n\sqrt{3}}{2}x \, dx = \left[ \frac{n\sqrt{3}}{4}x^2 \right]_0^1 = \frac{\sqrt{3}}{4}n$$
第2項の積分について、$x = 2\sin\theta$ と置換する。 $dx = 2\cos\theta \, d\theta$ であり、積分区間は $x: 1 \to 2$ のとき $\theta: \frac{\pi}{6} \to \frac{\pi}{2}$ となる。
$$\begin{aligned} \int_1^2 n\sqrt{1 - \frac{x^2}{4}} \, dx &= \int_{\frac{\pi}{6}}^{\frac{\pi}{2}} n\sqrt{1 - \sin^2\theta} \cdot 2\cos\theta \, d\theta \\ &= 2n \int_{\frac{\pi}{6}}^{\frac{\pi}{2}} \cos^2\theta \, d\theta \\ &= n \int_{\frac{\pi}{6}}^{\frac{\pi}{2}} (1 + \cos 2\theta) \, d\theta \\ &= n \left[ \theta + \frac{1}{2}\sin 2\theta \right]_{\frac{\pi}{6}}^{\frac{\pi}{2}} \\ &= n \left( \frac{\pi}{2} - \left( \frac{\pi}{6} + \frac{\sqrt{3}}{4} \right) \right) \\ &= \left( \frac{\pi}{3} - \frac{\sqrt{3}}{4} \right)n \end{aligned}$$
これらを足し合わせて、
$$S_n = \frac{\sqrt{3}}{4}n + \left( \frac{\pi}{3} - \frac{\sqrt{3}}{4} \right)n = \frac{\pi}{3}n$$
(以降の $T_n$ の導出および (2) の極限計算は解法1と同じであるため省略する)
解説
格子点の極限は「面積で近似する」のが定石の考え方であるが、本問では領域に含まれる $x$ 座標の範囲が $0 \le x \le 2$ と非常に狭く限定されている。そのため、面積近似に頼らずとも、格子点の個数 $T_n$ を $n$ を用いた具体的な式で表すことができる。ガウス記号 $[x]$ を導入して個数を数え上げ、極限を求める際にはガウス記号の性質 $x - 1 < [x] \le x$ を用いたはさみうちの原理に持ち込むという、極限計算の基本に忠実な処理が求められる。 面積 $S_n$ の計算においては、だ円を円に変換して扇形の面積として求める方針(解法1)を用いると計算量が減り、見通しが良い。もちろん、定積分(解法2)で計算しても問題なく答えにたどり着くことができるため、計算ミスをしないように確実に完答したい問題である。
答え
(1) $T_n = \left[ \frac{\sqrt{3}}{2}n \right] + 3$ (ただし、$[x]$ は実数 $x$ を超えない最大の整数を表す) $S_n = \frac{\pi}{3}n$
(2)
$$\lim_{n \to \infty} \frac{T_n}{S_n} = \frac{3\sqrt{3}}{2\pi}$$
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