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九州大学 1982年 文系 第2問 解説

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九州大学 1982年 文系 第2問 解説

方針・初手

(1) は最高次係数が1である多項式の有理数解に関する有名な性質(有理根定理の系)の証明である。有理数を既約分数で表し、代入して分母を払うことで整数問題に帰着させる。

(2) は対偶をとって考える。「方程式 $f(x)=0$ が有理数解をもつならば、ある $1 \leqq r \leqq k$ を満たす自然数 $r$ において $f(r)$ が $k$ で割り切れる」ことを示せばよい。(1) の結果を用いて、有理数解が整数であることを利用し、合同式(または剰余の性質)を用いて整式の値の剰余について考察する。

解法1

(1)

有理数 $\alpha$ を既約分数を用いて、$\alpha = \frac{q}{p}$ ($p, q$ は互いに素な整数、$p \geqq 1$)と表す。

これが方程式 $f(x)=0$ の解であるから、$f(\alpha)=0$ より

$$\left(\frac{q}{p}\right)^3 + a\left(\frac{q}{p}\right)^2 + b\left(\frac{q}{p}\right) + c = 0$$

両辺に $p^3$ を掛けて分母を払うと

$$q^3 + aq^2p + bqp^2 + cp^3 = 0$$

$q^3$ 以外の項を右辺に移項して $p$ でくくると

$$q^3 = -p(aq^2 + bqp + cp^2)$$

ここで、$a, b, c, p, q$ はすべて整数であるから、$- (aq^2 + bqp + cp^2)$ は整数である。 よって、$q^3$ は $p$ の倍数である。

$p$ と $q$ は互いに素であるから、$p$ と $q^3$ も互いに素である。 したがって、$p$ が $q^3$ を割り切るためには、$p=1$ でなければならない。

ゆえに、$\alpha = \frac{q}{1} = q$ となり、$\alpha$ は整数である。(証明終)

(2)

与えられた命題の対偶「方程式 $f(x)=0$ が有理数の解をもつならば、ある自然数 $k (>1)$ に対して、$k$ 個の整数 $f(1), f(2), \cdots\cdots, f(k)$ のうち少なくとも1つは $k$ で割り切れる」を証明する。

方程式 $f(x)=0$ が有理数解をもつと仮定する。(1) により、その解は整数であるから、これを $m$ とおく。

$m$ は整数、$k$ は自然数であるから、除法の原理により

$$m = qk + r \quad (q \text{ は整数}, \ 1 \leqq r \leqq k \text{ を満たす整数})$$

と表すことができる。通常は余りを $0 \leqq r' \leqq k-1$ とするが、$r'=0$ のとき $r=k$、$1 \leqq r' \leqq k-1$ のとき $r=r'$ とすれば、このように表せる。

$f(m)=0$ であるから、これを $m = qk + r$ で展開すると

$$\begin{aligned} f(m) &= (qk+r)^3 + a(qk+r)^2 + b(qk+r) + c \\ &= \{(qk)^3 + 3(qk)^2 r + 3qk r^2 + r^3\} + a\{(qk)^2 + 2qk r + r^2\} + b(qk+r) + c \\ &= k\{q^3 k^2 + 3q^2 k r + 3q r^2 + aq^2 k + 2aqr + bq\} + r^3 + ar^2 + br + c \\ &= kM + f(r) \quad (M \text{ は整数}) \end{aligned}$$

となる。

ここで、$f(m)=0$ より

$$0 = kM + f(r)$$

$$f(r) = -kM$$

$M$ は整数であるから、これは $f(r)$ が $k$ で割り切れることを意味する。

$r$ は $1 \leqq r \leqq k$ を満たす整数であるから、$f(r)$ は $f(1), f(2), \cdots\cdots, f(k)$ のいずれかである。 すなわち、$k$ 個の整数 $f(1), f(2), \cdots\cdots, f(k)$ のうち少なくとも1つは $k$ で割り切れる。

したがって、対偶が真であるから、元の命題も真である。(証明終)

解法2

(2)

合同式を用いて証明する。

方程式 $f(x)=0$ が有理数の解をもつと仮定すると、(1) によりその解は整数である。その整数解を $m$ とおく。

すなわち、$f(m)=0$ であるから、$k (>1)$ を法とする合同式において

$$f(m) \equiv 0 \pmod k$$

が成り立つ。

整数 $m$ を $k$ で割った余りを考えると、$m$ は $1, 2, \cdots, k$ のいずれかと $k$ を法として合同である。 すなわち、ある整数 $r$ ($1 \leqq r \leqq k$) が存在して

$$m \equiv r \pmod k$$

となる。

多項式の合同式の性質から、$m \equiv r \pmod k$ のとき、$f(m) \equiv f(r) \pmod k$ が成り立つ。

$f(m) \equiv 0 \pmod k$ であるから

$$f(r) \equiv 0 \pmod k$$

となる。

これは、$1 \leqq r \leqq k$ を満たすある $r$ について、$f(r)$ が $k$ で割り切れることを示している。 すなわち、$f(1), f(2), \cdots\cdots, f(k)$ の中に $k$ で割り切れるものが存在する。

よって対偶が証明されたので、元の命題も成り立つ。(証明終)

解説

(1) は最高次の係数が $1$ である多項式の有理数解が必ず整数になるという重要な性質である。有理数を互いに素な整数 $p, q$ を用いて $\frac{q}{p}$ とおく手法は、無理数の証明($\sqrt{2}$ が無理数であることの証明など)や整数問題で頻出する。

(2) は「どれも〜ない」という強い否定の結論をもつため、対偶をとって「(解をもつならば)少なくとも1つは〜である」と言い換える発想が自然である。整式における整数の代入値の剰余を考える際、合同式 $f(a) \equiv f(b) \pmod k$ ($a \equiv b \pmod k$ のとき)を用いると、記述が非常にすっきりとまとまるため、解法2の合同式を用いたアプローチを習得しておきたい。

答え

(1) 題意の通り証明された。

(2) 題意の通り証明された。

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