九州大学 1987年 理系 第5問 解説

方針・初手
1回の試行で $1$ から $N$ までの数字が等確率で出ることをふまえ、3回の試行結果である $N^3$ 通りを全事象として場合の数を数え上げる。最小数と最大数の条件を満たす出方は、「指定された数字の範囲内に収まる事象」を考え、そこから「境界の数字を含まない事象」を取り除く包除原理を用いると見通しよく計算できる。
解法1
(1)
3回の札の取り出し方は全部で $N^3$ 通りあり、これらは同様に確からしい。
$p(1, 1)$ は、3回とも「1」の札を取り出す確率である。その場合の数は $1^3 = 1$ 通りなので、
$$p(1, 1) = \frac{1}{N^3}$$
$p(1, 2)$ は、最小数が1、最大数が2となる確率である。 これは、「1と2のみが出る」事象から、「1しか出ない」事象と「2しか出ない」事象を除くことで求められる。 その場合の数は $2^3 - 1^3 - 1^3 = 6$ 通りであるから、
$$p(1, 2) = \frac{6}{N^3}$$
$p(1, 3)$ は、最小数が1、最大数が3となる確率である。 これは、「出る数字が1, 2, 3のいずれか」である事象から、「1が出ない(2, 3のみ出る)」事象と「3が出ない(1, 2のみ出る)」事象を除き、重複して引いた「2しか出ない」事象を足すことで求められる。 その場合の数は $3^3 - (2^3 + 2^3) + 1^3 = 27 - 16 + 1 = 12$ 通りであるから、
$$p(1, 3) = \frac{12}{N^3}$$
一般の $p(1, j)$ ($2 \leqq j \leqq N$) についても同様に考える。 出る数字が $1$ 以上 $j$ 以下となる場合の数は $j^3$ 通りである。 ここから、「1が出ない(2以上 $j$ 以下)」場合の数 $(j-1)^3$ と、「$j$ が出ない(1以上 $j-1$ 以下)」場合の数 $(j-1)^3$ を引き、引きすぎた「1も $j$ も出ない(2以上 $j-1$ 以下)」場合の数 $(j-2)^3$ を足せばよい。 したがって、最小数が1、最大数が $j$ となる場合の数は
$$j^3 - 2(j-1)^3 + (j-2)^3$$
となる。これを展開して整理すると、
$$j^3 - 2(j^3 - 3j^2 + 3j - 1) + (j^3 - 6j^2 + 12j - 8) = 6j - 6 = 6(j-1)$$
となる。よって、
$$p(1, j) = \frac{6(j-1)}{N^3}$$
(2)
$q(0)$ は $R = 0$、すなわち $U = V$ となる確率である。 これは3回とも同じ数字が出ることと同値であり、その場合の数は $1, 2, \dots, N$ の $N$ 通りである。よって、
$$q(0) = \frac{N}{N^3} = \frac{1}{N^2}$$
$q(1)$ は $R = 1$、すなわち $V - U = 1$ となる確率である。 最小数 $U$ と最大数 $V$ の組が $(U, V) = (1, 2), (2, 3), \dots, (N-1, N)$ となる $N-1$ 通りの互いに排反な事象が考えられる。 それぞれの組において、最小数が $i$、最大数が $i+1$ となる確率は、(1)の $p(1, 2)$ と等しく $\frac{6}{N^3}$ であるため、
$$q(1) = (N-1) \times \frac{6}{N^3} = \frac{6(N-1)}{N^3}$$
一般の $q(r)$ ($1 \leqq r \leqq N-1$) についても同様に考える。 $V - U = r$ となるのは、最小数 $U$ と最大数 $V$ の組が
$$(U, V) = (1, 1+r), (2, 2+r), \dots, (N-r, N)$$
のいずれかになる場合であり、全部で $N-r$ 通りある。 各組において、最小数が $i$、最大数が $i+r$ となる確率は、取り出しの構造が等しいため(1)の $p(1, 1+r)$ に等しい。 したがって、これら $N-r$ 通りの事象の確率を足し合わせて、
$$q(r) = (N-r) \times p(1, 1+r) = (N-r) \times \frac{6(1+r-1)}{N^3} = \frac{6r(N-r)}{N^3}$$
(3)
$R$ の期待値 $E(R)$ は定義より
$$E(R) = \sum_{r=0}^{N-1} r \cdot q(r)$$
で求められる。$r=0$ の項は $0$ なので、$r=1$ からの和をとる。 (2)の式を代入して計算すると、
$$E(R) = \sum_{r=1}^{N-1} r \cdot \frac{6r(N-r)}{N^3}$$
$$E(R) = \frac{6}{N^3} \sum_{r=1}^{N-1} (N r^2 - r^3)$$
$$E(R) = \frac{6}{N^3} \left\{ N \sum_{r=1}^{N-1} r^2 - \sum_{r=1}^{N-1} r^3 \right\}$$
公式 $\sum_{k=1}^{n} k^2 = \frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)$ と $\sum_{k=1}^{n} k^3 = \frac{1}{4}n^2(n+1)^2$ を用いると、
$$E(R) = \frac{6}{N^3} \left\{ N \cdot \frac{1}{6}(N-1)N(2N-1) - \frac{1}{4}(N-1)^2 N^2 \right\}$$
$$E(R) = \frac{6}{N^3} \cdot N^2(N-1) \left\{ \frac{2N-1}{6} - \frac{N-1}{4} \right\}$$
$$E(R) = \frac{6(N-1)}{N} \cdot \frac{2(2N-1) - 3(N-1)}{12}$$
$$E(R) = \frac{N-1}{2N} (4N - 2 - 3N + 3)$$
$$E(R) = \frac{(N-1)(N+1)}{2N}$$
$$E(R) = \frac{N^2-1}{2N}$$
解説
最大値と最小値に関する確率問題の典型であり、「指定された範囲に収まる確率」から「端を含まない確率」を引く包除原理の考え方が基本である。(1) の後半で、立方の式を展開して整理すると $6(j-1)$ という非常に簡潔な一次式になることが最大のポイントである。これに気づいて計算しきれれば、(2) 以降はスムーズに進めることができる。期待値の計算では、$\sum r^2, \sum r^3$ の公式を正確に適用し、展開せずに共通因数でくくる工夫をすると計算ミスを防ぎやすい。
答え
(1)
$$p(1, 1) = \frac{1}{N^3}, \quad p(1, 2) = \frac{6}{N^3}, \quad p(1, 3) = \frac{12}{N^3}$$
$$p(1, j) = \frac{6(j-1)}{N^3}$$
(2)
$$q(0) = \frac{1}{N^2}, \quad q(1) = \frac{6(N-1)}{N^3}$$
$$q(r) = \frac{6r(N-r)}{N^3}$$
(3)
$$E(R) = \frac{N^2-1}{2N}$$
自分の記録
誤りを報告
解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。











