九州大学 2003年 理系 第2問 解説

方針・初手
(1) 絶対値を含む不等式の表す領域は、基本となる図形 $2|x|+|y| \leqq 3$ を平行移動したものと捉えると見通しがよい。 (2) $|x|, |y|$ の性質から、領域 $B$ は領域 $A$ を各軸および原点に関して対称移動して得られる図形であることを利用する。 (3) 与えられた領域から $(x, |y|)$ の満たすべき条件を絞り込み、対数が有理数になるという条件から値を特定する。無理数であることの証明には、背理法と素因数分解の一意性(偶奇の矛盾など)を用いる。
解法1
(1)
不等式 $2|x-4| + |y-5| \leqq 3$ について、$X = x-4, Y = y-5$ とおくと、 $$2|X| + |Y| \leqq 3$$ となる。これは、座標平面上で原点 $(0,0)$ を中心とするひし形であり、その頂点は $\left( \frac{3}{2}, 0 \right), ( 0, 3 ), \left( -\frac{3}{2}, 0 \right), ( 0, -3 )$ である。
求める領域 $A$ は、このひし形を $x$ 軸方向に $4$、$y$ 軸方向に $5$ だけ平行移動したものである。 したがって、領域 $A$ は点 $(4, 5)$ を中心とするひし形の周および内部であり、その頂点は $$\left( \frac{11}{2}, 5 \right), ( 4, 8 ), \left( \frac{5}{2}, 5 \right), ( 4, 2 )$$ となる。図示する領域は、これらの点を結んだ閉領域(境界線を含む)である。
(2)
領域 $B$ は、不等式 $2||x|-4| + ||y|-5| \leqq 3$ を満たす点 $(x, y)$ の集合である。 点 $(x, y)$ が領域 $B$ に属するための条件は、点 $(|x|, |y|)$ が領域 $A$ に属することである。
(1)の結果から、領域 $A$ のすべての点は $x \geqq \frac{5}{2} > 0$ かつ $y \geqq 2 > 0$ の範囲(第1象限)に存在する。 したがって、点 $(x, y)$ が領域 $B$ に含まれるのは、点 $(x, y)$ が第1象限にある領域 $A$、またはそれを $x$ 軸、$y$ 軸、原点のそれぞれに関して対称移動した領域にあるときである。
よって領域 $B$ は、以下の点を頂点とする4つのひし形の周および内部である。
- 第1象限のひし形:$\left( \frac{11}{2}, 5 \right), ( 4, 8 ), \left( \frac{5}{2}, 5 \right), ( 4, 2 )$
- 第2象限のひし形:$\left( -\frac{11}{2}, 5 \right), ( -4, 8 ), \left( -\frac{5}{2}, 5 \right), ( -4, 2 )$
- 第3象限のひし形:$\left( -\frac{11}{2}, -5 \right), ( -4, -8 ), \left( -\frac{5}{2}, -5 \right), ( -4, -2 )$
- 第4象限のひし形:$\left( \frac{11}{2}, -5 \right), ( 4, -8 ), \left( \frac{5}{2}, -5 \right), ( 4, -2 )$
(3)
点 $(x, y)$ は領域 $B$ の点であり、$x$ は正の整数であるから、$x = |x|$ となり、点 $(x, |y|)$ は領域 $A$ に含まれる。 領域 $A$ において $x$ のとりうる範囲は $\frac{5}{2} \leqq x \leqq \frac{11}{2}$ であるから、これを満たす正の整数 $x$ は $x = 3, 4, 5$ に絞られる。 (対数の底の条件 $x > 0, x \neq 1$ も満たしている。)
各 $x$ について、$(x, |y|) \in A$ すなわち $2|x-4| + ||y|-5| \leqq 3$ を満たす整数 $y$ を調べ、$\log_x |y|$ が有理数になるか判定する。 ここで、$\log_x |y| = \frac{m}{n}$ ($m, n$ は互いに素な整数、$n > 0$)と仮定すると、 $$|y| = x^{\frac{m}{n}} \iff |y|^n = x^m$$ となることを用いて有理数・無理数を判定する。
(i) $x = 3$ のとき
不等式は $2|3-4| + ||y|-5| \leqq 3$ となり、 $$2 + ||y|-5| \leqq 3 \iff ||y|-5| \leqq 1$$ $$-1 \leqq |y|-5 \leqq 1 \iff 4 \leqq |y| \leqq 6$$ $y$ は整数であるから、$|y| = 4, 5, 6$ となる。
- $|y|=4$ のとき:$4^n = 3^m$ となる。左辺は偶数、右辺は奇数となり矛盾するため、$\log_3 4$ は無理数。
- $|y|=5$ のとき:$5^n = 3^m$ となる。素因数が異なるため矛盾し、$\log_3 5$ は無理数。
- $|y|=6$ のとき:$6^n = 3^m \iff 2^n \cdot 3^n = 3^m \iff 2^n = 3^{m-n}$ となる。左辺は偶数、右辺は奇数となり矛盾するため、$\log_3 6$ は無理数。 以上より、$x=3$ のとき条件を満たす点はない。
(ii) $x = 4$ のとき
不等式は $2|4-4| + ||y|-5| \leqq 3$ となり、 $$||y|-5| \leqq 3$$ $$-3 \leqq |y|-5 \leqq 3 \iff 2 \leqq |y| \leqq 8$$ $y$ は整数であるから、$|y| = 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8$ となる。
- $|y| = 2$ のとき:$\log_4 2 = \frac{1}{2}$ (有理数)となり、$y = \pm 2$。
- $|y| = 4$ のとき:$\log_4 4 = 1$ (有理数)となり、$y = \pm 4$。
- $|y| = 8$ のとき:$\log_4 8 = \frac{3}{2}$ (有理数)となり、$y = \pm 8$。
- $|y| = 3, 5, 7$ のとき:$|y|^n = 4^m$ とすると、左辺は奇数、右辺は偶数となり矛盾するため、いずれも無理数。
- $|y| = 6$ のとき:$6^n = 4^m \iff 2^n \cdot 3^n = 2^{2m} \iff 3^n = 2^{2m-n}$ となる。左辺は奇数、右辺は偶数で矛盾するため無理数。 よって、$x=4$ のときは $(4, 2), (4, -2), (4, 4), (4, -4), (4, 8), (4, -8)$ が適する。
(iii) $x = 5$ のとき
不等式は $2|5-4| + ||y|-5| \leqq 3$ となり、 $$2 + ||y|-5| \leqq 3 \iff ||y|-5| \leqq 1$$ $$-1 \leqq |y|-5 \leqq 1 \iff 4 \leqq |y| \leqq 6$$ $y$ は整数であるから、$|y| = 4, 5, 6$ となる。
- $|y| = 5$ のとき:$\log_5 5 = 1$ (有理数)となり、$y = \pm 5$。
- $|y| = 4, 6$ のとき:$|y|^n = 5^m$ とすると、左辺は偶数、右辺は奇数となり矛盾するため、いずれも無理数。 よって、$x=5$ のときは $(5, 5), (5, -5)$ が適する。
解説
絶対値の不等式が表す領域を図示する基本的な考え方から、領域内の格子点を絞り込み、対数が有理数となる条件を議論する複合問題です。 (1) では基本となるひし形をどのように平行移動したか捉えることで、(2) で対称移動した図形であることに自然と気がつけるようになっています。 (3) では、領域の範囲から $x$ を絞り込むことが第一歩です。対数が有理数になるかの判定において、無理数であることの証明は、背理法を用いて $p^m = q^n$ の形を作り、偶奇の不一致や素因数分解の一意性を利用して矛盾を導くのが定石の処理となります。
答え
(1) 点 $(4, 5)$ を中心とするひし形の周および内部。頂点は $\left( \frac{11}{2}, 5 \right), ( 4, 8 ), \left( \frac{5}{2}, 5 \right), ( 4, 2 )$。 (2) (1)の領域と、それを $x$ 軸、$y$ 軸、原点についてそれぞれ対称移動して得られる3つの領域を合わせた、4つのひし形の周および内部。 (3) $(4, 2), (4, -2), (4, 4), (4, -4), (4, 8), (4, -8), (5, 5), (5, -5)$ (有理数となる理由は解法1に記載の通り)
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