九州大学 1994年 理系 第1問 解説

方針・初手
(1) は背理法を用います。仮に条件を満たす実数 $a, b, d$ が存在すると仮定し、各点が集合 $D$ に含まれるかどうかの条件を不等式で表して矛盾を導きます。
(2) は $L \cap D = \{(1,1)\}$ となる条件を連立不等式で表し、そこから $d>0$ であることを確認します。各辺が正であることを利用して、示すべき不等式の各辺を2乗したものを証明します。
解法1
(1) の証明
仮に $L \cap D = \{(0,0), (1,1)\}$ となる実数 $a, b, d$ が存在すると仮定する。 このとき、4点の所属状況から以下の不等式が成り立つ。
- $(0,0) \in D$ より $-d \geqq 0$
- $(1,1) \in D$ より $a+b-d \geqq 0$
- $(1,0) \notin D$ より $a-d < 0$
- $(0,1) \notin D$ より $b-d < 0$
これらを整理すると、以下のようになる。
$d \leqq 0$ $\cdots$ ① $a+b \geqq d$ $\cdots$ ② $a < d$ $\cdots$ ③ $b < d$ $\cdots$ ④
③と④の辺々を足すと、
$$a+b < 2d$$
となる。ここで①より $d \leqq 0$ であるから、$2d \leqq d$ が成り立つ。したがって、
$$a+b < 2d \leqq d$$
すなわち $a+b < d$ が得られるが、これは②に矛盾する。 以上より、$L \cap D = \{(0,0), (1,1)\}$ となる実数 $a, b, d$ は存在しない。
(2) の証明
$L \cap D = \{(1,1)\}$ が成り立つとき、4点の所属状況から以下の不等式が成り立つ。
- $(1,1) \in D$ より $a+b-d \geqq 0$
- $(0,0) \notin D$ より $-d < 0$
- $(1,0) \notin D$ より $a-d < 0$
- $(0,1) \notin D$ より $b-d < 0$
これらを整理すると、以下のようになる。
$a+b \geqq d$ $\cdots$ ⑤ $d > 0$ $\cdots$ ⑥ $a < d$ $\cdots$ ⑦ $b < d$ $\cdots$ ⑧
⑥より $d > 0$ であるから、示すべき不等式の各辺は正である。したがって、各辺を2乗した以下の不等式を示せばよい。
$$\frac{d^2}{2} \leqq a^2+b^2 < 2d^2$$
まず、右側の不等式 $a^2+b^2 < 2d^2$ を示す。 ⑤と⑧より、$a \geqq d-b > d-d = 0$ となり $a>0$ である。 ⑤と⑦より、$b \geqq d-a > d-d = 0$ となり $b>0$ である。 よって、$0 < a < d$ かつ $0 < b < d$ が成り立つので、各々を2乗して
$$a^2 < d^2$$
$$b^2 < d^2$$
これらの辺々を足すと、
$$a^2+b^2 < 2d^2$$
が成り立つ。
次に、左側の不等式 $\frac{d^2}{2} \leqq a^2+b^2$ を示す。 ⑤より $d \leqq a+b$ であり、⑥より $d>0$ であるから、両辺はともに正である。したがって、2乗しても大小関係は変わらず $d^2 \leqq (a+b)^2$ が成り立つ。 これを用いて差をとると、
$$\begin{aligned} a^2+b^2 - \frac{d^2}{2} &\geqq a^2+b^2 - \frac{(a+b)^2}{2} \\ &= \frac{2a^2+2b^2 - (a^2+2ab+b^2)}{2} \\ &= \frac{a^2-2ab+b^2}{2} \\ &= \frac{(a-b)^2}{2} \geqq 0 \end{aligned}$$
よって、
$$\frac{d^2}{2} \leqq a^2+b^2$$
が成り立つ。(等号成立は $a=b=\frac{d}{2}$ のとき)
以上より、$\frac{d^2}{2} \leqq a^2+b^2 < 2d^2$ が示された。 各辺の正の平方根をとることで、
$$\frac{d}{\sqrt{2}} \leqq \sqrt{a^2+b^2} < \sqrt{2}d$$
が成り立つ。
解説
集合 $D$ は、座標平面上において直線 $ax+by-d=0$ を境界とする半平面を表しています。 (1) は、「点 $(0,0)$ と $(1,1)$ を含み、点 $(1,0)$ と $(0,1)$ を含まない半平面は存在しない」という幾何学的に直感しやすい事実を、不等式を用いて厳密に証明する問題です。 (2) は与えられた条件から不等式を立式し、代数的に処理する問題です。右側の不等式の証明において、$a>0$ および $b>0$ であることを $a+b \geqq d$ と $a<d, b<d$ を組み合わせて論証する部分がポイントになります。
答え
(1) 題意の通り、背理法により示された。 (2) 題意の通り、各点が領域に含まれる条件を立式し、不等式の評価により示された。
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