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名古屋大学 1970年 文系 第1問 解説

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名古屋大学 1970年 文系 第1問 解説

方針・初手

命題が正しい場合は文字式や方程式の性質を用いて論理的に証明し、正しくない場合は反例(仮定を満たすが結論を満たさない具体例)を1つ挙げる。複素数の範囲で考えていることに注意して、実数特有の性質と思い込まないようにすることが重要である。

解法1

(1)

正しくない。

反例:$a=0, b=0, c=1$ のとき

$$ab = 0 \cdot 0 = 0$$

$$bc = 0 \cdot 1 = 0$$

$$ca = 1 \cdot 0 = 0$$

となり、仮定「$ab, bc, ca$ がすべて $0$」を満たすが、結論「$a, b, c$ はすべて $0$」は満たさない。

(2)

正しい。

(証明) $a+b=x, b+c=y, c+a=z$ とおくと、仮定より $x, y, z$ はすべて実数である。

辺々を足し合わせると、

$$2(a+b+c) = x+y+z$$

$$a+b+c = \frac{x+y+z}{2}$$

$x, y, z$ は実数であるから、$a+b+c$ も実数である。

ここで、$a, b, c$ はそれぞれ以下のように表せる。

$$a = (a+b+c) - (b+c) = \frac{x+y+z}{2} - y$$

$$b = (a+b+c) - (c+a) = \frac{x+y+z}{2} - z$$

$$c = (a+b+c) - (a+b) = \frac{x+y+z}{2} - x$$

$x, y, z$ は実数であるから、四則演算によって得られる $a, b, c$ もすべて実数となる。 よって示された。

(3)

正しくない。

反例:$a=1, b=i, c=0$ ($i$ は虚数単位)のとき

$$a^2+b^2+c^2 = 1^2 + i^2 + 0^2 = 1 - 1 + 0 = 0$$

となり、仮定「$a^2+b^2+c^2=0$」を満たすが、結論「$a, b, c$ はすべて $0$」は満たさない。

(4)

正しい。

(証明) $a, b, c$ を解とする $t$ の3次方程式は、解と係数の関係より以下のように表せる。

$$t^3 - (a+b+c)t^2 + (ab+bc+ca)t - abc = 0$$

仮定より $a+b+c=0, ab+bc+ca=0$ であるから、この方程式は次のようになる。

$$t^3 - abc = 0$$

$$t^3 = abc$$

$a, b, c$ はこの方程式の解であるから、それぞれ代入して等式が成り立つ。

$$a^3 = abc$$

$$b^3 = abc$$

$$c^3 = abc$$

したがって、$a^3=b^3=c^3$ である。 よって示された。

解法2

(4) の別解

条件式から1文字消去を考える。 $a+b+c=0$ より $c = -(a+b)$ である。これを $ab+bc+ca=0$ に代入する。

$$ab + c(a+b) = 0$$

$$ab - (a+b)^2 = 0$$

$$ab - (a^2+2ab+b^2) = 0$$

$$a^2 + ab + b^2 = 0$$

この両辺に $(a-b)$ を掛ける。

$$(a-b)(a^2+ab+b^2) = 0$$

$$a^3 - b^3 = 0$$

$$a^3 = b^3$$

与えられた条件式は $a, b, c$ について対称であるから、同様の計算により $b^3 = c^3$ も導ける。 したがって、$a^3 = b^3 = c^3$ である。 よって示された。

解説

命題の真偽を問う問題の基本事項を確認する問題である。 (1) は「掛けて $0$」という条件から、少なくとも1つが $0$ であることしか言えない点に気づく必要がある。3つのうち2つが $0$ であれば条件を満たしてしまう。 (2) は連立方程式を解く要領で、$a, b, c$ を実数(の和や差)で表現できればよい。 (3) は実数の範囲であれば $A^2+B^2+C^2=0 \iff A=B=C=0$ が成り立つが、複素数の範囲では成り立たないという重要な違いを突いている。 (4) は基本対称式が与えられていることから、3次方程式の解と係数の関係を利用する発想(解法1)が最も鮮やかである。別解のように1文字消去から導くことも可能であるため、自分の得意なアプローチで確実に解き切りたい。

答え

(1) 正しくない。(反例:$a=0, b=0, c=1$ など)

(2) 正しい。

(3) 正しくない。(反例:$a=1, b=i, c=0$ など)

(4) 正しい。

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