名古屋大学 1971年 文系 第6問 解説

方針・初手
賞金の期待値を求めるため、賞金が $k$ ($1 \leqq k \leqq 9$) となる確率を計算する。賞金が確定するのは、1回目で $k$ が出る場合と、1回目に $0$ が出て2回目に $k$ が出る場合である。この2つの場合を分けて確率を求め、期待値の定義に従って計算する。得られた期待値の式を用いて、(2)の不等式を解き、比 $\frac{n}{m}$ についての条件を求める。
解法1
(1)
札は全部で $n+9m$ 枚ある。 賞金が $k$ ($k=1, 2, \dots, 9$) となるのは、次の2つのいずれかの場合である。
(i) 1回目に数字 $k$ の札を引く場合
その確率は、
$$ \frac{m}{n+9m} $$
(ii) 1回目に数字 $0$ の札を引き、2回目に数字 $k$ の札を引く場合
その確率は、
$$ \frac{n}{n+9m} \cdot \frac{m}{n+9m} $$
(i) と (ii) は互いに排反であるから、賞金が $k$ となる確率 $P(k)$ は、
$$ P(k) = \frac{m}{n+9m} + \frac{n}{n+9m} \cdot \frac{m}{n+9m} = \frac{m(n+9m) + mn}{(n+9m)^2} = \frac{m(2n+9m)}{(n+9m)^2} $$
賞金が $0$ となるのは、1回目も2回目も $0$ の札を引く場合である。このときの賞金は $0$ であるため、期待値の計算には影響しない。 よって、求める賞金の期待値 $E$ は、
$$ E = \sum_{k=1}^9 k P(k) = \sum_{k=1}^9 k \frac{m(2n+9m)}{(n+9m)^2} = \frac{m(2n+9m)}{(n+9m)^2} \sum_{k=1}^9 k $$
ここで、$\sum_{k=1}^9 k = 45$ であるから、
$$ E = \frac{45m(2n+9m)}{(n+9m)^2} $$
(2)
期待値が $3$ 以下となる条件は、$E \leqq 3$ より、
$$ \frac{45m(2n+9m)}{(n+9m)^2} \leqq 3 $$
両辺を $3$ で割る。また、札の枚数より $m > 0$ であるため、$x = \frac{n}{m}$ とおくと $x \geqq 0$ である。分母分子を $m^2$ で割ることで次のように変形できる。
$$ \frac{15(2x+9)}{(x+9)^2} \leqq 1 $$
$(x+9)^2 > 0$ であるから、両辺に $(x+9)^2$ を掛けて整理する。
$$ 15(2x+9) \leqq (x+9)^2 $$
$$ 30x + 135 \leqq x^2 + 18x + 81 $$
$$ x^2 - 12x - 54 \geqq 0 $$
方程式 $x^2 - 12x - 54 = 0$ の解は、
$$ x = 6 \pm \sqrt{36 + 54} = 6 \pm 3\sqrt{10} $$
$x \geqq 0$ であるから、不等式の解は、
$$ x \geqq 6 + 3\sqrt{10} $$
よって、比 $\frac{n}{m}$ を $6 + 3\sqrt{10}$ 以上にすればよい。
解法2
(1) (別解:条件付き期待値を利用する)
1回だけ札を引いたときの賞金の期待値を $E_1$ とおく。1回目で $1$ から $9$ のいずれかを引く確率はそれぞれ $\frac{m}{n+9m}$ であるから、
$$ E_1 = \sum_{k=1}^9 k \cdot \frac{m}{n+9m} = \frac{45m}{n+9m} $$
問題のルールに従うとき、最終的な賞金の期待値 $E$ は、「1回目で賞金が確定する場合の期待値」と「1回目で $0$ が出て、2回目の結果が賞金となる場合の期待値」の和として表せる。 1回目で $0$ が出る確率は $\frac{n}{n+9m}$ であり、このとき2回目の試行における賞金の期待値も再び $E_1$ となる。したがって、
$$ E = E_1 + \frac{n}{n+9m} E_1 = E_1 \left( 1 + \frac{n}{n+9m} \right) = E_1 \cdot \frac{2n+9m}{n+9m} $$
$E_1 = \frac{45m}{n+9m}$ を代入して、
$$ E = \frac{45m(2n+9m)}{(n+9m)^2} $$
解説
期待値の計算における典型的な問題である。(1)では、各賞金が得られる確率を丁寧に計算して期待値の定義通りに求める方法(解法1)が基本であるが、期待値の性質(条件付き期待値)を活用して「1回の試行での期待値」から一気に求める方法(解法2)も強力で計算ミスを減らしやすい。 (2)では、式の中に $\frac{n}{m}$ が塊として現れることを見越し、分母分子を $m^2$ で割って $x = \frac{n}{m}$ に置き換える処理がポイントとなる。
答え
(1) $\frac{45m(2n+9m)}{(n+9m)^2}$
(2) $6 + 3\sqrt{10}$ 以上にすればよい。
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