名古屋大学 2014年 文系 第2問 解説

方針・初手
(1) は、2つのサイコロの目の差の絶対値についての期待値を求める基本的な問題である。差の絶対値がとり得る値とその確率をそれぞれ求めて、期待値の定義通りに計算する。
(2) は、ルールに従って試行が終了した時点での期待値を求める。1回目で異なる目が出た場合と、1回目で同じ目が出て2回目を振る場合とで、排反に分けて期待値への寄与を計算する。その際、(1) の結果をうまく利用することで計算量を減らすことができる。
解法1
(1)
大小2個のサイコロの目をそれぞれ $X, Y$ とする。$X, Y$ は $1$ から $6$ までの整数を等確率にとる。 出た目の差の絶対値を $k$ ($k = 0, 1, 2, 3, 4, 5$) とおくと、$k$ となるような目の出方 $(X, Y)$ の組の数は以下の通りである。
- $k=0$ のとき: $(1, 1), (2, 2), \dots, (6, 6)$ の $6$ 通り。
- $k=1$ のとき: $(1, 2), (2, 3), \dots, (5, 6)$ とその逆で $5 \times 2 = 10$ 通り。
- $k=2$ のとき: $(1, 3), (2, 4), \dots, (4, 6)$ とその逆で $4 \times 2 = 8$ 通り。
- $k=3$ のとき: $(1, 4), (2, 5), (3, 6)$ とその逆で $3 \times 2 = 6$ 通り。
- $k=4$ のとき: $(1, 5), (2, 6)$ とその逆で $2 \times 2 = 4$ 通り。
- $k=5$ のとき: $(1, 6)$ とその逆で $1 \times 2 = 2$ 通り。
それぞれの確率 $P(|X-Y|=k)$ は、上記の組の数を全事象の数 $36$ で割ったものである。 したがって、求める期待値を $E_1$ とすると、
$$ \begin{aligned} E_1 &= \sum_{k=0}^{5} k \cdot P(|X-Y|=k) \\ &= 0 \cdot \frac{6}{36} + 1 \cdot \frac{10}{36} + 2 \cdot \frac{8}{36} + 3 \cdot \frac{6}{36} + 4 \cdot \frac{4}{36} + 5 \cdot \frac{2}{36} \\ &= \frac{10 + 16 + 18 + 16 + 10}{36} \\ &= \frac{70}{36} \\ &= \frac{35}{18} \end{aligned} $$
(2)
1回目の大小のサイコロの目をそれぞれ $X_1, Y_1$ とする。 終了時に出ている目の差の絶対値を $Z$ とし、その期待値 $E(Z)$ を求める。 試行は以下の2つの排反な事象に分けられる。
(i) 1回目で出た目が異なるとき
この事象が起こる条件は $X_1 \neq Y_1$ であり、このとき終了時の目の差の絶対値は $|X_1 - Y_1|$ である。 この場合が全体の期待値 $E(Z)$ に与える寄与は、(1) の計算において $k \neq 0$ の部分の和に等しいため、
$$ \sum_{k=1}^{5} k \cdot P(|X_1-Y_1|=k) = \frac{35}{18} $$
である。($k=0$ の項は $0$ であるため、全事象にわたる期待値 $E_1$ と一致する)
(ii) 1回目で出た目が同じとき
この事象が起こる条件は $X_1 = Y_1$ であり、その確率は $\frac{6}{36} = \frac{1}{6}$ である。 このとき、小さいサイコロをもう一度投げ、出た目を $X_2$ とする。終了時の目は $X_2$ と $Y_1$ であり、その差の絶対値は $|X_2 - Y_1|$ となる。 ここで、$Y_1$ は $1$ から $6$ までの値を等確率にとり、$X_2$ も独立に $1$ から $6$ までの値を等確率にとる。 したがって、$X_1 = Y_1$ という条件のもとでの $|X_2 - Y_1|$ の期待値は、(1) で求めた2つの独立なサイコロの目の差の絶対値の期待値 $E_1$ に等しい。 よって、この場合が全体の期待値 $E(Z)$ に与える寄与は、
$$ P(X_1=Y_1) \cdot E(|X_2-Y_1| \mid X_1=Y_1) = \frac{1}{6} \cdot \frac{35}{18} = \frac{35}{108} $$
(i)、(ii) より、求める期待値 $E(Z)$ は、これらの寄与の和となる。
$$ \begin{aligned} E(Z) &= \frac{35}{18} + \frac{35}{108} \\ &= \frac{210}{108} + \frac{35}{108} \\ &= \frac{245}{108} \end{aligned} $$
解説
期待値の線形性や、事象を排反に分けて期待値への寄与を足し合わせる考え方(全期待値の定理の応用)を用いると、見通しよく計算できる問題である。 (2) において、1回目でゾロ目が出たあとの2回目の試行では、「振った小さいサイコロの目」と「据え置きになった大きいサイコロの目」が、あたかも同時に2つのサイコロを振ったときと同じ確率分布を持つことに気づくことがポイントである。これにより、(1) の結果をそのまま利用することができ、計算量を大幅に削減できる。 もちろん、最終的な差の絶対値が $1, 2, 3, 4, 5$ となる確率をそれぞれ計算し直して期待値を求めても正答にたどり着くが、やや煩雑になる。
答え
(1) $$ \frac{35}{18} $$
(2) $$ \frac{245}{108} $$
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