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名古屋大学 1978年 文系 第1問 解説

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名古屋大学 1978年 文系 第1問 解説

方針・初手

「5次以下のどんな整式 $f(x)$ に対しても成り立つ」という条件は、一般の5次式を係数を用いて設定して恒等式として扱うか、あるいは基底となる特定の整式(例えば $1, x, x^2, x^3, x^4, x^5$)を個別に代入して必要十分条件を導くことで処理できます。今回は積分の線形性を利用し、いくつかの単項式を代入して $a, b, c$ に関する連立方程式を立てるのが簡明です。

解法1

積分の線形性より、与えられた等式が5次以下の任意の整式 $f(x)$ について成り立つための必要十分条件は、$f(x) = 1, x, x^2, x^3, x^4, x^5$ のすべてについて成り立つことである。

$f(x) = x^k$($k = 0, 1, 2, 3, 4, 5$)を等式に代入して調べる。

(i) $k$ が奇数($k = 1, 3, 5$)のとき

$f(x) = x^k$ は奇関数であるから、区間 $[-1, 1]$ での定積分は $0$ となる。 すなわち、左辺は $0$ である。

また、右辺は $a \cdot 0^k + b \{ c^k + (-c)^k \}$ となる。 $k$ は奇数なので $(-c)^k = -c^k$ であり、右辺も常に $0$ となる。 したがって、奇数次の項については $a, b, c$ の値によらず常に等式が成立する。

(ii) $k$ が偶数($k = 0, 2, 4$)のとき

$f(x) = 1$ のとき

左辺は

$$ \int_{-1}^{1} 1 dx = 2 $$

右辺は $a \cdot 1 + b(1 + 1) = a + 2b$ となるため、

$$ a + 2b = 2 \quad \cdots \text{①} $$

$f(x) = x^2$ のとき

左辺は

$$ \int_{-1}^{1} x^2 dx = \left[ \frac{1}{3}x^3 \right]_{-1}^{1} = \frac{2}{3} $$

右辺は $a \cdot 0 + b(c^2 + c^2) = 2bc^2$ となるため、

$$ 2bc^2 = \frac{2}{3} \iff bc^2 = \frac{1}{3} \quad \cdots \text{②} $$

$f(x) = x^4$ のとき

左辺は

$$ \int_{-1}^{1} x^4 dx = \left[ \frac{1}{5}x^5 \right]_{-1}^{1} = \frac{2}{5} $$

右辺は $a \cdot 0 + b(c^4 + c^4) = 2bc^4$ となるため、

$$ 2bc^4 = \frac{2}{5} \iff bc^4 = \frac{1}{5} \quad \cdots \text{③} $$

これらを満たす $a, b, c$ を求める。 ②より $bc^2 \neq 0$ であるから $b \neq 0$ かつ $c \neq 0$ とわかる。 ③を②で割ると、

$$ \frac{bc^4}{bc^2} = \frac{\frac{1}{5}}{\frac{1}{3}} $$

$$ c^2 = \frac{3}{5} $$

よって、

$$ c = \pm\sqrt{\frac{3}{5}} = \pm\frac{\sqrt{15}}{5} $$

これを②に代入して、

$$ b \cdot \frac{3}{5} = \frac{1}{3} \iff b = \frac{5}{9} $$

これらを①に代入して、

$$ a + 2 \cdot \frac{5}{9} = 2 \iff a = 2 - \frac{10}{9} = \frac{8}{9} $$

これらの $a, b, c$ の値のとき、任意の5次以下の整式で等式は成立する。

解法2

5次以下の任意の整式 $f(x)$ は、定数 $p_0, p_1, p_2, p_3, p_4, p_5$ を用いて次のように表せる。

$$ f(x) = p_0 + p_1 x + p_2 x^2 + p_3 x^3 + p_4 x^4 + p_5 x^5 $$

等式の左辺を計算する。奇関数となる奇数次の項の定積分が $0$ になることを利用すると、

$$ \begin{aligned} \int_{-1}^{1} f(x) dx &= \int_{-1}^{1} (p_0 + p_2 x^2 + p_4 x^4) dx \\ &= 2 \left[ p_0 x + \frac{p_2}{3} x^3 + \frac{p_4}{5} x^5 \right]_{0}^{1} \\ &= 2p_0 + \frac{2}{3}p_2 + \frac{2}{5}p_4 \end{aligned} $$

次に、等式の右辺を計算する。

$$ \begin{aligned} a f(0) + b \{ f(c) + f(-c) \} &= a p_0 + b \left\{ (p_0 + p_1 c + p_2 c^2 + p_3 c^3 + p_4 c^4 + p_5 c^5) \right. \\ &\quad \left. + (p_0 - p_1 c + p_2 c^2 - p_3 c^3 + p_4 c^4 - p_5 c^5) \right\} \\ &= a p_0 + b (2p_0 + 2p_2 c^2 + 2p_4 c^4) \\ &= (a + 2b)p_0 + 2bc^2 p_2 + 2bc^4 p_4 \end{aligned} $$

「どんな整式に対しても」すなわち、任意の定数 $p_0, p_1, \dots, p_5$ について左辺と右辺が一致するためには、$p_0, p_2, p_4$ の各係数が等しくなければならない。したがって、

$$ \begin{cases} a + 2b = 2 \\ 2bc^2 = \frac{2}{3} \\ 2bc^4 = \frac{2}{5} \end{cases} $$

第2式、第3式より $b \neq 0$ かつ $c \neq 0$ である。 第3式を第2式で割って、

$$ c^2 = \frac{3}{5} \implies c = \pm \sqrt{\frac{3}{5}} = \pm \frac{\sqrt{15}}{5} $$

これを第2式に代入して $b = \frac{5}{9}$ を得る。 さらにこれを第1式に代入して $a = \frac{8}{9}$ を得る。

解説

「任意の多項式に対して成り立つ」という条件を処理する典型問題です。 多項式全体の集合はベクトル空間の性質を持つため、多項式が「任意の~」で与えられた場合は、基底となる単項式($1, x, x^2, \dots$)を順に代入して必要十分条件を調べる手法(解法1)が非常に有効です。これにより、式を冗長に書く手間を省き、計算の記述をシンプルにすることができます。

また、積分区間が $[-1, 1]$ と原点対称であり、右辺にも $f(c) + f(-c)$ という対称的な形が現れていることから、奇関数部分が最初から無視できる(両辺で $0$ になる)ことを見抜けるとさらに見通しが良くなります。

なお、本問の背景には「ガウス・ルジャンドル求積法」という数値積分法があります。これは、定積分を少数の分点での関数値の重み付き和で近似する手法であり、適切な点(今回は $0, \pm c$)と重み($a, b$)を選ぶことで、少ない計算点でより高次の多項式まで正確な積分値を求められるという強力な定理に基づいています。

答え

$$ a = \frac{8}{9}, \quad b = \frac{5}{9}, \quad c = \pm\frac{\sqrt{15}}{5} $$

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