名古屋大学 1979年 理系 第4問 解説

方針・初手
「定積分の値が $\frac{b}{a}$ のみによって定まる」という条件を、数式を用いてどのように表現するかが最大のポイントである。
表現の仕方として、大きく2つのアプローチが考えられる。 1つ目は、$\frac{b}{a}$ を変数とする新たな関数 $g$ を導入し、定積分の値が $g\left(\frac{b}{a}\right)$ に等しいと立式する方法である。 2つ目は、「$\frac{b}{a}$ の値が同じであれば定積分の値も等しい」と解釈し、任意の正の数 $k$ に対して区間 $[a, b]$ と区間 $[ka, kb]$ の定積分が等しいと立式する方法である。
いずれの方針においても、立式した等式の両辺を積分区間の端点(例えば $b$)で微分し、微積分学の基本定理を用いて $f$ に関する関係式を導くのが定石である。
解法1
題意より、任意の $a>0, b>0$ に対して定積分の値が $\frac{b}{a}$ のみによって定まるので、ある関数 $g(x)$ ($x>0$)を用いて次のように表すことができる。なお、混乱を避けるため、積分変数には $t$ を用いる。
$$\int_a^b f(t) dt = g\left(\frac{b}{a}\right)$$
この等式において $a=1, b=x$ ($x>0$)とおくと、次の式が得られる。
$$\int_1^x f(t) dt = g(x)$$
問題の条件より $f(t)$ は $t>0$ において連続であるから、微積分学の基本定理より左辺は $x$ について微分可能であり、その導関数は $f(x)$ である。 したがって、右辺の $g(x)$ も微分可能であり、次の関係が成り立つ。
$$g'(x) = f(x)$$
次に、最初の等式の両辺を定数 $a$ を固定して、変数 $b$ で微分する。 左辺の導関数は $f(b)$ となる。右辺については合成関数の微分法を用いることで、次の等式が得られる。
$$f(b) = g'\left(\frac{b}{a}\right) \cdot \frac{1}{a}$$
ここで $g'(x) = f(x)$ であったから、$g'\left(\frac{b}{a}\right) = f\left(\frac{b}{a}\right)$ となる。これを代入すると、
$$f(b) = \frac{1}{a} f\left(\frac{b}{a}\right)$$
この等式は任意の $a>0, b>0$ について成り立つ。 任意の $x>0$ に対して $a=x, b=x$ を代入すると、
$$f(x) = \frac{1}{x} f(1)$$
となる。 $f(1)$ は定数であるから、これを $c$ とおけば、
$$f(x) = \frac{c}{x}$$
となり、証明された。
解法2
定積分の値が $\frac{b}{a}$ のみによって定まるということは、比 $\frac{b}{a}$ の値が等しければ定積分の値も等しいということである。 任意の $k>0$ に対して、積分区間 $[a, b]$ と $[ka, kb]$ を考えると、
$$\frac{kb}{ka} = \frac{b}{a}$$
であるから、次の等式が成り立つ。
$$\int_a^b f(x) dx = \int_{ka}^{kb} f(x) dx$$
この等式の両辺を定数 $a, k$ を固定して変数 $b$ で微分する。 左辺の導関数は $f(b)$ である。 右辺の微分については、合成関数の微分法を用いると $\frac{d}{db} \int_{ka}^{kb} f(x) dx = f(kb) \cdot k$ となる。 したがって、次の等式が得られる。
$$f(b) = k f(kb)$$
この等式は任意の $b>0, k>0$ について成り立つ。 ここで、任意の $x>0$ に対して $b=1, k=x$ を代入すると、
$$f(1) = x f(x)$$
となる。 両辺を $x$ ($x>0$)で割り、$f(1)$ を定数 $c$ とおけば、
$$f(x) = \frac{c}{x}$$
となり、証明された。
解説
「特定の変数(またはその組み合わせ)のみに依存する」という条件を、いかに数式へと落とし込むかが問われる問題である。 解法1のように、未知の関数 $g$ を設定して立式するのは汎用的かつ確実な手法である。その際、積分変数と積分区間の変数を明確に区別するため、積分変数を $t$ などに変更することが論理の混乱を防ぐうえで重要となる。 解法2は、「$\frac{b}{a}$ が等しいならば積分の値が等しい」という性質をそのまま数式化する、非常に鮮やかな方法である。関数 $g$ を経由する必要がないため、見通しよく計算を進めることができる。 どちらの解法を選択したとしても、定積分で表された関数をその上限の変数で微分し、関数方程式を導くという基本操作は共通している。
答え
与えられた条件から $f(x) = \frac{1}{x} f(1)$ 等の関係式を導き、$f(1) = c$ とおくことで、$f(x) = \frac{c}{x}$ であることが示された。
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