トップ 名古屋大学 1980年 文系 第3問

名古屋大学 1980年 文系 第3問 解説

数学B/数列数学A/場合の数テーマ/漸化式テーマ/整式の証明
名古屋大学 1980年 文系 第3問 解説

方針・初手

数列 $\{b_n\}$ を定める漸化式は一見複雑ですが、シグマ記号 $\sum$ を用いて表すことで構造が明確になります。与えられた式は $$b_n = \sum_{k=1}^{n} \frac{(-1)^{n-k}}{(n-k)!} a_k$$ と書くことができます。

(1) はこの定義式に $a_k = \frac{1}{(k-1)!}$ を代入し、階乗の部分を組み合わせて組み合わせの記号 ${}_n\mathrm{C}_{r}$ を作り出し、二項定理を用いて和を計算します。

(2) は直接 $a_n$ を求めて代入することも可能ですが計算が煩雑になります。そこで、$a_n - a_{n-1} = \frac{1}{(n-1)!}$ という階差の関係式が与えられていることに着目し、$b_n - b_{n-1}$ を計算して (1) の結果を利用する方針をとります。

解法1

(1)

与えられた $b_n$ の関係式は、シグマ記号を用いて次のように表せる。

$$b_n = \sum_{k=1}^{n} \frac{(-1)^{n-k}}{(n-k)!} a_k$$

条件より $a_k = \frac{1}{(k-1)!}$ であるから、これを代入する。

$$b_n = \sum_{k=1}^{n} \frac{(-1)^{n-k}}{(n-k)!(k-1)!}$$

$n=1$ のとき、和は $k=1$ の項のみとなるので、

$$b_1 = \frac{(-1)^0}{0!0!} = 1$$

$n \ge 2$ のとき、二項係数 ${}_{n-1}\mathrm{C}_{k-1} = \frac{(n-1)!}{(n-k)!(k-1)!}$ を作るために、式全体を $\frac{1}{(n-1)!}$ でくくり出す。

$$b_n = \frac{1}{(n-1)!} \sum_{k=1}^{n} \frac{(n-1)!}{(n-k)!(k-1)!} (-1)^{n-k}$$

$$b_n = \frac{1}{(n-1)!} \sum_{k=1}^{n} {}_{n-1}\mathrm{C}_{k-1} (-1)^{n-k}$$

ここで、$k-1 = m$ とおくと、$k$ が $1$ から $n$ まで動くとき、$m$ は $0$ から $n-1$ まで動く。

$$b_n = \frac{1}{(n-1)!} \sum_{m=0}^{n-1} {}_{n-1}\mathrm{C}_{m} (-1)^{n-1-m} \cdot 1^m$$

二項定理 $(x+y)^{n-1} = \sum_{m=0}^{n-1} {}_{n-1}\mathrm{C}_{m} x^{n-1-m} y^m$ において、$x=-1, y=1$ とすると、

$$b_n = \frac{1}{(n-1)!} (-1+1)^{n-1} = \frac{1}{(n-1)!} \cdot 0^{n-1}$$

$n \ge 2$ より $n-1 \ge 1$ であるから $0^{n-1} = 0$ となる。

よって、$b_1 = 1, \quad b_n = 0 \quad (n \ge 2)$ が示された。

(2)

条件より $a_1 = 1$ であり、$n \ge 2$ において $a_n - a_{n-1} = \frac{1}{(n-1)!}$ が成り立つ。

$n \ge 2$ のとき、$b_n - b_{n-1}$ を考える。

$$b_n - b_{n-1} = \sum_{k=1}^{n} \frac{(-1)^{n-k}}{(n-k)!} a_k - \sum_{k=1}^{n-1} \frac{(-1)^{n-1-k}}{(n-1-k)!} a_k$$

第2項の和について、インデックスをそろえるために $k$ を $k-1$ と置き換えると、$k$ は $2$ から $n$ まで動く。

$$\sum_{k=1}^{n-1} \frac{(-1)^{n-1-k}}{(n-1-k)!} a_k = \sum_{k=2}^{n} \frac{(-1)^{n-k}}{(n-k)!} a_{k-1}$$

これを $b_n - b_{n-1}$ の式に代入する。

$$b_n - b_{n-1} = \sum_{k=1}^{n} \frac{(-1)^{n-k}}{(n-k)!} a_k - \sum_{k=2}^{n} \frac{(-1)^{n-k}}{(n-k)!} a_{k-1}$$

第1項の和から $k=1$ の項を分離し、残りを一つのシグマにまとめる。

$$b_n - b_{n-1} = \frac{(-1)^{n-1}}{(n-1)!} a_1 + \sum_{k=2}^{n} \frac{(-1)^{n-k}}{(n-k)!} (a_k - a_{k-1})$$

ここで、$a_1 = 1$ および条件 $a_k - a_{k-1} = \frac{1}{(k-1)!}$ を代入する。

$$b_n - b_{n-1} = \frac{(-1)^{n-1}}{(n-1)!} \frac{1}{0!} + \sum_{k=2}^{n} \frac{(-1)^{n-k}}{(n-k)!(k-1)!}$$

第1項は $k=1$ のときの $\frac{(-1)^{n-k}}{(n-k)!(k-1)!}$ の形に一致するため、再びシグマに組み込むことができる。

$$b_n - b_{n-1} = \sum_{k=1}^{n} \frac{(-1)^{n-k}}{(n-k)!(k-1)!}$$

この右辺は、(1) で考えた $a_n = \frac{1}{(n-1)!}$ のときの $b_n$ の式と全く同じである。 したがって、(1) の結果より $n \ge 2$ においてこの値は $0$ となる。

$$b_n - b_{n-1} = 0 \quad (n \ge 2)$$

これにより、数列 $\{b_n\}$ はすべての $n \ge 1$ において一定の値をとることがわかる。

$$b_n = b_1 \quad (n \ge 1)$$

$b_1$ の定義より $b_1 = a_1 = 1$ であるから、

$$b_n = 1 \quad (n \ge 1)$$

が示された。

解法2

形式的べき級数(母関数)を用いた別解を示す。(※高校範囲外のアプローチであるが、本問の背景構造を明確に示すことができる)

数列 $\{a_n\}, \{b_n\}$ の母関数をそれぞれ $A(x) = \sum_{n=1}^{\infty} a_n x^n, \quad B(x) = \sum_{n=1}^{\infty} b_n x^n$ とする。

$b_n$ の定義式 $b_n = \sum_{k=1}^{n} \frac{(-1)^{n-k}}{(n-k)!} a_k$ は数列の畳み込みの形になっているため、両辺に $x^n$ を掛けて $\sum_{n=1}^{\infty}$ をとると、母関数の積に分解できる。

$$B(x) = \sum_{n=1}^{\infty} \left( \sum_{k=1}^{n} \frac{(-1)^{n-k}}{(n-k)!} a_k \right) x^n$$

$$B(x) = \left( \sum_{m=0}^{\infty} \frac{(-1)^m}{m!} x^m \right) \left( \sum_{k=1}^{\infty} a_k x^k \right)$$

マクローリン展開 $\sum_{m=0}^{\infty} \frac{x^m}{m!} = e^x$ を用いると、第1の括弧は $e^{-x}$ となる。

$$B(x) = e^{-x} A(x)$$

(1)

$a_n = \frac{1}{(n-1)!}$ のとき、$A(x)$ は次のように求まる。

$$A(x) = \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{(n-1)!} x^n = x \sum_{n=1}^{\infty} \frac{x^{n-1}}{(n-1)!} = x e^x$$

これを $B(x)$ の関係式に代入する。

$$B(x) = e^{-x} (x e^x) = x$$

$B(x) = 1 \cdot x^1 + 0 \cdot x^2 + 0 \cdot x^3 + \cdots$ であるから、各項の係数を比較して、

$$b_1 = 1, \quad b_n = 0 \quad (n \ge 2)$$

が示された。

(2)

$a_1 = 1, \quad a_n = a_{n-1} + \frac{1}{(n-1)!} \quad (n \ge 2)$ のとき。

漸化式の両辺に $x^n$ を掛けて $n=2$ から $\infty$ まで和をとる。

$$\sum_{n=2}^{\infty} a_n x^n = \sum_{n=2}^{\infty} a_{n-1} x^n + \sum_{n=2}^{\infty} \frac{1}{(n-1)!} x^n$$

左辺は $A(x) - a_1 x$ となり、右辺は式を変形すると $A(x)$ と $e^x$ で表せる。

$$A(x) - a_1 x = x \sum_{n=2}^{\infty} a_{n-1} x^{n-1} + x \sum_{n=2}^{\infty} \frac{x^{n-1}}{(n-1)!}$$

$$A(x) - x = x A(x) + x (e^x - 1)$$

これを $A(x)$ について解く。

$$(1 - x) A(x) = x e^x$$

$$A(x) = \frac{x e^x}{1 - x}$$

このとき、$B(x)$ は次のようになる。

$$B(x) = e^{-x} A(x) = e^{-x} \frac{x e^x}{1 - x} = \frac{x}{1 - x}$$

$\frac{1}{1 - x}$ は初項 $1$、公比 $x$ の無限等比級数の和であるから、

$$B(x) = x (1 + x + x^2 + x^3 + \cdots) = x + x^2 + x^3 + x^4 + \cdots$$

$$B(x) = \sum_{n=1}^{\infty} 1 \cdot x^n$$

各項の係数を比較して、

$$b_n = 1 \quad (n \ge 1)$$

が示された。

解説

数列の複雑な関係式をどのように処理するかが問われる問題です。 式の中に「階乗」と「交互に入れ替わる符号 $(-1)^n$」が含まれている場合、二項定理の利用を疑うのが定石です。和の記号 $\sum$ を正しく運用し、インデックス(添え字)の置き換えを丁寧に行う計算力が求められます。

(2)において、直接 $a_n$ を求めてから代入すると、$\sum$ が二重になり処理が非常に難しくなります。数学では「複雑なものを直接計算するのではなく、差分(階差)をとって性質を調べる」というアプローチが有効なことが多く、本問の解法1はその典型例と言えます。

また、解法2で示したように、本問は大学数学で学ぶ「テイラー展開」や「母関数」の知識を背景に作られています。母関数を介すると、複雑な数列の畳み込み和が単純な関数の積に変換され、見通しが飛躍的に良くなるという数学の美しい構造を体感できます。

答え

(1), (2) ともに、上記証明の通り題意は示された。

自分の記録

ログインすると保存できます。

誤りを報告

解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。