名古屋大学 1989年 文系 第2問 解説

方針・初手
因数定理を用いて、「$F(x)$ が $x-b$ で割り切れる」という条件を「$F(b)=0$」と言い換える。 必要十分条件の証明であるため、「十分性($a=b$ ならば任意の3次式 $P(x)$ で $F(b)=0$)」と「必要性(任意の3次式 $P(x)$ で $F(b)=0$ ならば $a=b$)」の2つに分けて証明を行う。 必要性の証明では、「どのような3次式 $P(x)$ についても成り立つ」という条件を活かし、計算が容易になる特定の3次式を自分で設定して $a=b$ を導き出すのがポイントである。
解法1
因数定理より、$x$ の多項式 $F(x)$ が $x-b$ で割り切れるための条件は $F(b) = 0$ である。 $F(x) = \int_a^x P(t) dt$ であるから、条件は「任意の3次式 $P(x)$ に対して」
$$ \int_a^b P(t) dt = 0 $$
が成り立つことである。これが必要十分条件 $a=b$ と同値であることを示す。
十分性の証明
$a=b$ と仮定する。このとき、任意の3次式 $P(x)$ に対して、積分の性質から
$$ F(b) = \int_b^b P(t) dt = 0 $$
となる。 よって、$F(x)$ は $x-b$ で割り切れるため、十分性は成り立つ。
必要性の証明
「任意の3次式 $P(x)$ に対して $\int_a^b P(t) dt = 0$ が成り立つ」と仮定する。 この仮定はどのような3次式についても成り立つため、特別に $P(x) = (x-a)^3$ とおいた場合でも成り立つ。 ($P(x)$ の最高次数の係数は $1 \neq 0$ であり、条件通り3次式である)
これを代入すると、
$$ \int_a^b (t-a)^3 dt = 0 $$
左辺の定積分を計算すると、
$$ \begin{aligned} \int_a^b (t-a)^3 dt &= \left[ \frac{(t-a)^4}{4} \right]_a^b \\ &= \frac{(b-a)^4}{4} - 0 \\ &= \frac{(b-a)^4}{4} \end{aligned} $$
となる。したがって、
$$ \frac{(b-a)^4}{4} = 0 $$
これより $b-a = 0$、すなわち $a=b$ を得る。 よって必要性も成り立つ。
以上より、3次式 $P(x)$ をどのようにとっても $F(x)$ が $x-b$ で割り切れるための必要十分条件は、$a=b$ であることが示された。
解説
「任意の関数に対して成り立つ」という仮定から特定の条件(本問では $a=b$)を導くための典型的な論法である。このような場合、条件を満たす具体的な関数を自分で設定し、必要条件を絞り出す手法が極めて有効である。
本問では「3次式」という制約があるため、$P(x) = 1$ のような定数関数などを選ぶことはできない点に注意が必要である。積分計算が容易になり、かつ代入後に $(b-a)$ の形が直接現れる $P(x) = (x-a)^3$ を選ぶのが、最も鮮やかで記述量も少なくなる。 もちろん、$P(x) = c_3 x^3 + c_2 x^2 + c_1 x + c_0$ ($c_3 \neq 0$)とおいて積分し、各係数についての恒等式として処理して $a=b$ を導くことも可能であるが、計算量が増えてしまうため工夫したいところである。
答え
証明完了(詳細は解法1を参照)
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