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名古屋大学 1991年 文系 第3問 解説

数学1/命題と集合数学2/指数対数数学2/微分法テーマ/不等式の証明
名古屋大学 1991年 文系 第3問 解説

方針・初手

各集合 $A_k$ を不等式から具体的な区間として表すことから始める。複数の開区間が共通部分を持つための条件は、「すべての区間の左端の最大値が、すべての区間の右端の最小値よりも小さい」ことである。この性質を利用して $n$ に関する不等式を立てる。区間の端点として現れる数列 $k^{\frac{1}{k}}$ や $(k+1)^{\frac{1}{k}}$ の増減は、実数関数に拡張して微分を用いることで調べる。

解法1

共通部分 $A_1 \cap A_2 \cap \dots \cap A_n$ が空集合でないような $n$ を考える。 まず $A_1 = \{ x \mid 1 < x < 2 \}$ であるため、共通部分の要素となる実数 $x$ は $x > 0$ を満たさなければならない。したがって、以下では $x > 0$ の範囲のみを考える。

$x > 0$ のとき、各自然数 $k$ について $y = x^k$ は単調増加であるから、不等式 $k < x^k < k+1$ の各辺の正の $k$ 乗根をとって同値変形することができる。

$$ k^{\frac{1}{k}} < x < (k+1)^{\frac{1}{k}} $$

$a_k = k^{\frac{1}{k}}$、$b_k = (k+1)^{\frac{1}{k}}$ とおくと、集合 $A_k$ は開区間 $(a_k, b_k)$ である。 $n$ 個の開区間 $A_1, A_2, \dots, A_n$ の共通部分が空集合でないための必要十分条件は、すべての $i, j \in \{1, 2, \dots, n\}$ に対して $a_i < b_j$ が成り立つこと、すなわち次を満たすことである。

$$ \max_{1 \le k \le n} a_k < \min_{1 \le k \le n} b_k $$

次に、数列 $\{a_k\}$ と $\{b_k\}$ の増減を調べるために、関数 $f(x) = x^{\frac{1}{x}}$ および $g(x) = (x+1)^{\frac{1}{x}}$ (ともに $x > 0$)を考える。

(i) $\{a_k\}$ の最大値について

$f(x) = x^{\frac{1}{x}}$ の両辺の自然対数をとると、$\log f(x) = \frac{\log x}{x}$ である。 両辺を $x$ で微分すると、次のようになる。

$$ \frac{f'(x)}{f(x)} = \frac{\frac{1}{x} \cdot x - \log x \cdot 1}{x^2} = \frac{1 - \log x}{x^2} $$

$f(x) > 0$ であるから、$f'(x)$ の符号は $1 - \log x$ の符号と一致する。したがって、$f(x)$ は $0 < x \le e$ で単調に増加し、$x \ge e$ で単調に減少する。 自然数 $k$ においては、$a_1 < a_2 < a_3$ および $a_3 > a_4 > a_5 > \dots$ となる。 $a_2 = 2^{\frac{1}{2}} = 8^{\frac{1}{6}}$、$a_3 = 3^{\frac{1}{3}} = 9^{\frac{1}{6}}$ より $a_2 < a_3$ であるため、数列 $\{a_k\}$ の最大値は $a_3 = 3^{\frac{1}{3}}$ である。 よって、$n \ge 3$ のとき、$\max_{1 \le k \le n} a_k = a_3$ となる。

(ii) $\{b_k\}$ の最小値について

$g(x) = (x+1)^{\frac{1}{x}}$ の両辺の自然対数をとると、$\log g(x) = \frac{\log(x+1)}{x}$ である。 両辺を $x$ で微分すると、次のようになる。

$$ \frac{g'(x)}{g(x)} = \frac{\frac{x}{x+1} - \log(x+1)}{x^2} $$

ここで、分子を $u(x) = \frac{x}{x+1} - \log(x+1)$ とおく。$u(x)$ を微分すると、次のようになる。

$$ u'(x) = \frac{1 \cdot (x+1) - x \cdot 1}{(x+1)^2} - \frac{1}{x+1} = \frac{1}{(x+1)^2} - \frac{x+1}{(x+1)^2} = -\frac{x}{(x+1)^2} $$

$x > 0$ のとき $u'(x) < 0$ であり、$u(0) = 0$ であるから、$x > 0$ において $u(x) < 0$ である。 したがって、$g'(x) < 0$ となり、$g(x)$ は単調に減少する。 ゆえに、数列 $\{b_k\}$ も単調減少であり、$\min_{1 \le k \le n} b_k = b_n = (n+1)^{\frac{1}{n}}$ となる。

(i) および (ii) より、$n \ge 3$ のとき、共通部分が空集合でない条件は次のように表される。

$$ 3^{\frac{1}{3}} < (n+1)^{\frac{1}{n}} $$

両辺は正であるから、両辺を $3n$ 乗して比較する。

$$ 3^n < (n+1)^3 $$

この不等式を満たす $n$ を調べる。 $n=3$ のとき、$3^3 = 27$、$(3+1)^3 = 64$ より成立する。 $n=4$ のとき、$3^4 = 81$、$(4+1)^3 = 125$ より成立する。 $n=5$ のとき、$3^5 = 243$、$(5+1)^3 = 216$ となり、成立しない。

$n \ge 5$ のすべての自然数について $3^n > (n+1)^3$ が成り立つことを、数学的帰納法で示す。

(I) $n=5$ のとき

上で確認した通り、$243 > 216$ より成り立つ。

(II) $n=k$ ($k \ge 5$)のとき、$3^k > (k+1)^3$ が成り立つと仮定する。

$n=k+1$ のとき、両辺の差を考えると次のようになる。

$$ \begin{aligned} 3^{k+1} - (k+2)^3 &= 3 \cdot 3^k - (k+2)^3 \\ &> 3(k+1)^3 - (k+2)^3 \\ &= 3(k^3 + 3k^2 + 3k + 1) - (k^3 + 6k^2 + 12k + 8) \\ &= 2k^3 + 3k^2 - 3k - 5 \\ &= 2k^3 + 3k(k-1) - 5 \end{aligned} $$

$k \ge 5$ であるから $k-1 > 0$ であり、$3k(k-1) > 0$。また $2k^3 \ge 250 > 5$ である。 したがって、$2k^3 + 3k(k-1) - 5 > 0$ となり、$3^{k+1} > (k+2)^3$ が成り立つ。

(I)(II) より、$n \ge 5$ では不等式 $3^n < (n+1)^3$ は成り立たない。 以上より、共通部分が空集合でない最大の $n$ は $4$ である。

解説

複数の開区間が共通部分を持つ条件の定式化と、数列の大小比較を関数に拡張して微分で調べるという、大学入試数学における2つの重要な定石を組み合わせた問題である。 関数 $y = x^{\frac{1}{x}}$ のグラフの概形や極値($x=e$ で最大)は非常によく出題されるテーマであり、結果を暗記している受験生も多いが、本問のように解答に組み込む際は微分を用いた過程をしっかり記述する必要がある。また、$3^n$ と $(n+1)^3$ のような指数関数と多項式の増大度の違いは最終的に明らかではあるが、解答では数学的帰納法などをもちいて丁寧に証明することが求められる。

答え

4

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