名古屋大学 2004年 文系 第1問 解説

方針・初手
現在位置からサイコロを1回投げて、ちょうどゴールである $8$ に到達するための条件を整理する。現在位置が $2$ 以上 $7$ 以下であれば、次に $8$ に到達する確率はつねに $\frac{1}{6}$ となることに着目する。各回終了時点での「ゲームが継続している確率」を順に追っていくことで、複雑な場合分けを避けて計算できる。
解法1
$k$ 回目のサイコロを投げた後の位置を $X_k$ とし、出た目を $Y_k$ とする。初期状態は $X_0 = 0$ である。 ゲームのルールより、位置の更新は次のように行われる。
$$ X_k = \begin{cases} X_{k-1} + Y_k & (X_{k-1} + Y_k \le 8) \\ 16 - (X_{k-1} + Y_k) & (X_{k-1} + Y_k > 8) \end{cases} $$
ある位置 $x$ にいる状態から、サイコロを1回投げてちょうど $8$ に到達する($X_k = 8$ となる)条件は、出た目 $y$ について
$$ x + y = 8 \quad \text{または} \quad 16 - (x + y) = 8 $$
すなわち $x + y = 8$ となることである。 $y \in \{1, 2, 3, 4, 5, 6\}$ であるため、$y = 8-x$ となる目が存在するのは $2 \le x \le 7$ のときであり、その確率はつねに $\frac{1}{6}$ である。$x=1$ のときは $y=7$ となる必要があり、確率は $0$ である。
(1)
1回目終了時の位置は出た目そのものであり、$X_1 \in \{1, 2, 3, 4, 5, 6\}$(各確率 $\frac{1}{6}$)である。 2回目でゲームが終了するのは、$2 \le X_1 \le 6$ のいずれかであり、かつ2回目で $8-X_1$ の目が出る場合である。 $2 \le X_1 \le 6$ となる確率は $\frac{5}{6}$ であるから、求める確率 $p_2$ は
$$ p_2 = \frac{5}{6} \times \frac{1}{6} = \frac{5}{36} $$
(2)
2回目終了時点でゲームが続いているときの位置 $X_2$ の確率分布を調べる。 1回目の目 $X_1$ と2回目の目 $Y_2$ の和を $S = X_1 + Y_2$ とおくと、$S$ はサイコロを2回投げたときの目の和の分布にしたがう。 $X_2$ の値は $S \le 8$ のとき $X_2 = S$、$S \ge 9$ のとき $X_2 = 16 - S$ となる。 ゲームが終了しない($X_2 \neq 8$)場合の各 $X_2$ の確率は以下のようになる。
- $X_2 = 1$: $S=1$ または $S=15$ となる必要があり、確率は $0$
- $X_2 = 2$: $S=2$ より、確率は $\frac{1}{36}$
- $X_2 = 3$: $S=3$ より、確率は $\frac{2}{36}$
- $X_2 = 4$: $S=4$ または $S=12$ より、確率は $\frac{3+1}{36} = \frac{4}{36}$
- $X_2 = 5$: $S=5$ または $S=11$ より、確率は $\frac{4+2}{36} = \frac{6}{36}$
- $X_2 = 6$: $S=6$ または $S=10$ より、確率は $\frac{5+3}{36} = \frac{8}{36}$
- $X_2 = 7$: $S=7$ または $S=9$ より、確率は $\frac{6+4}{36} = \frac{10}{36}$
3回目でゲームが終了するのは、$X_2 \in \{2, 3, 4, 5, 6, 7\}$ のいずれかの状態から、3回目の移動で $8$ に到達する場合である。 これら各状態から $8$ に到達する確率はそれぞれ $\frac{1}{6}$ であるから、求める確率 $p_3$ は
$$ p_3 = P(2 \le X_2 \le 7) \times \frac{1}{6} = \left( \frac{1+2+4+6+8+10}{36} \right) \times \frac{1}{6} = \frac{31}{36} \times \frac{1}{6} = \frac{31}{216} $$
(※ $P(2 \le X_2 \le 7)$ は、全確率 $1$ から $X_2=1$ と $X_2=8$ の確率を引いて $1 - 0 - p_2 = \frac{31}{36}$ と求めてもよい)
(3)
(2) の考察から、$P(X_2 = 1) = 0$ であり、2回目終了時にゲームが続いている場合は必ず $2 \le X_2 \le 7$ となることがわかる。 一般に、ある時点での位置 $x$ が $2 \le x \le 7$ であるとき、次の移動で位置が $1$ になる条件は、出た目 $y$ について
$$ x+y=1 \quad \text{または} \quad 16-(x+y)=1 \iff x+y=15 $$
となることである。 しかし $x \ge 2, y \ge 1$ より $x+y \ge 3$ であり、$x \le 7, y \le 6$ より $x+y \le 13$ であるため、これらを満たす $y$ は存在しない。 したがって、2回目以降でゲームが継続している限り、位置が $1$ に戻ることはなく、つねに $2 \le X_k \le 7$ の範囲に留まり続けることになる。 このことから、「ゲームが継続している状態から、次の1回でちょうど $8$ に到達する確率」はつねに $\frac{1}{6}$ である。
3回目終了時点でゲームが継続している確率は、全体から1, 2, 3回目で終了した確率を引けばよく、1回目で終了することはない($p_1=0$)ので
$$ 1 - (p_1 + p_2 + p_3) = 1 - \left( 0 + \frac{5}{36} + \frac{31}{216} \right) = 1 - \frac{30 + 31}{216} = \frac{155}{216} $$
となる。 4回目でゲームが終了するのは、この継続している状態から $8$ に到達する場合であるから、求める確率 $p_4$ は
$$ p_4 = \frac{155}{216} \times \frac{1}{6} = \frac{155}{1296} $$
解説
「8をこえた分についてはその数だけ戻る」というルールによって状態遷移が複雑に見えるが、「位置が1になることは最初を除いてあり得ない」という事実に気づくことで劇的に見通しが良くなる問題である。 各回において「ゲームが続いている」事象と「ちょうど終了する」事象の排反性を利用することで、$n$ 回目で終了する確率 $p_n$ について
$$ p_n = \frac{1}{6} \left( 1 - \sum_{k=1}^{n-1} p_k \right) \quad (n \ge 3) $$
という漸化式が成り立つ。これを差分をとって変形すると $p_{n+1} = \frac{5}{6}p_n \quad (n \ge 3)$ となり、$p_3$ 以降は公比 $\frac{5}{6}$ の等比数列になるという美しい構造を持っている。本番ではすべての場合を樹形図や推移図で書き出すと時間がかかるため、全体から終了済みの確率を引くという「余事象」的な考え方が有効である。
答え
(1) $$ p_2 = \frac{5}{36} $$
(2) $$ p_3 = \frac{31}{216} $$
(3) $$ p_4 = \frac{155}{1296} $$
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