名古屋大学 2004年 文系 第3問 解説

方針・初手
2項間漸化式 $z_{n+1} = p z_n + q$ の形であるため、特性方程式 $\alpha = p\alpha + q$ を用いて等比数列の形に変形する。これは実数の数列のときと全く同じ手法である。(2)は(1)で求めた一般項に $n = 8m-7$ を代入し、複素数の累乗を計算して示す。(3)は三角形の面積を求める問題であるが、3点を平行移動して1点を原点に移し、複素数の演算の図形的な意味(回転と拡大)を利用すると計算量を大きく減らすことができる。
解法1
(1)
与えられた漸化式 $z_{n+1} = (1+i)z_n + i$ に対して、方程式 $\alpha = (1+i)\alpha + i$ を解くと、
$$\alpha - (1+i)\alpha = i$$
$$-i\alpha = i$$
$$\alpha = -1$$
となる。これを用いて漸化式を変形すると、
$$z_{n+1} + 1 = (1+i)(z_n + 1)$$
と表せる。 数列 $\{z_n + 1\}$ は初項 $z_1 + 1 = 3 + 1 = 4$、公比 $1+i$ の等比数列であるから、
$$z_n + 1 = 4(1+i)^{n-1}$$
よって、求める一般項は、
$$z_n = 4(1+i)^{n-1} - 1$$
(2)
(1)の結果に $n = 8m-7$ ($m$ は正の整数)を代入すると、
$$z_{8m-7} = 4(1+i)^{8m-7-1} - 1 = 4(1+i)^{8m-8} - 1$$
ここで、$(1+i)^2 = 1 + 2i - 1 = 2i$ であるから、
$$(1+i)^8 = \{ (1+i)^2 \}^4 = (2i)^4 = 16i^4 = 16 = 2^4$$
となる。これを用いると、
$$z_{8m-7} = 4 \{ (1+i)^8 \}^{m-1} - 1$$
$$= 4 \cdot (2^4)^{m-1} - 1$$
$$= 2^2 \cdot 2^{4m-4} - 1$$
$$= 2^{4m-2} - 1$$
となり、すべての正の整数 $m$ について $z_{8m-7} = 2^{4m-2} - 1$ となることが示された。
(3)
3点 $P_n(z_n), P_{n+1}(z_{n+1}), P_{n+2}(z_{n+2})$ からなる三角形の面積を求める。 3点を全体的に $-z_n$ だけ平行移動すると、頂点は $0$, $z_{n+1} - z_n$, $z_{n+2} - z_n$ となる。 ここで、漸化式より、
$$z_{n+1} - z_n = (1+i)z_n + i - z_n = i(z_n + 1)$$
である。また、
$$z_{n+2} - z_{n+1} = (1+i)z_{n+1} + i - \{ (1+i)z_n + i \} = (1+i)(z_{n+1} - z_n)$$
が成り立つから、
$$z_{n+2} - z_n = (z_{n+2} - z_{n+1}) + (z_{n+1} - z_n)$$
$$= (1+i)(z_{n+1} - z_n) + (z_{n+1} - z_n) = (2+i)(z_{n+1} - z_n)$$
となる。したがって、平行移動後の3頂点は $0$, $z_{n+1} - z_n$, $(2+i)(z_{n+1} - z_n)$ と表せる。 これは、複素数平面上で点 $0, 1, 2+i$ を頂点とする三角形を、原点を中心に回転・拡大(倍率 $|z_{n+1} - z_n|$)したものである。
点 $0, 1, 2+i$ を頂点とする三角形の面積は、底辺の長さが実軸上の $1$、高さが点 $2+i$ の虚部である $1$ とみなせるから、
$$\frac{1}{2} \cdot 1 \cdot 1 = \frac{1}{2}$$
である。相似比が $|z_{n+1} - z_n|$ であるから、面積比はその2乗となる。よって、求める三角形の面積 $S$ は、
$$S = \frac{1}{2} |z_{n+1} - z_n|^2$$
ここで、(1)より $z_n + 1 = 4(1+i)^{n-1}$ であるから、
$$z_{n+1} - z_n = i \cdot 4(1+i)^{n-1}$$
その絶対値は、
$$|z_{n+1} - z_n| = |i| \cdot 4 \cdot |1+i|^{n-1} = 1 \cdot 4 \cdot (\sqrt{2})^{n-1}$$
したがって、求める面積 $S$ は、
$$S = \frac{1}{2} \left\{ 4(\sqrt{2})^{n-1} \right\}^2 = \frac{1}{2} \cdot 16 \cdot 2^{n-1} = 8 \cdot 2^{n-1} = 2^{n+2}$$
解法2
(3)の別解(ベクトルのなす角と長さを利用)
3点 $P_n, P_{n+1}, P_{n+2}$ を頂点とする三角形の面積 $S$ は、2つのベクトル $\overrightarrow{P_nP_{n+1}}$ と $\overrightarrow{P_{n+1}P_{n+2}}$ を用いて求めることができる。 漸化式 $z_{n+1} = (1+i)z_n + i$ を用いると、
$$z_{n+2} - z_{n+1} = (1+i)z_{n+1} + i - \{ (1+i)z_n + i \} = (1+i)(z_{n+1} - z_n)$$
が成り立つ。 極形式で表すと $1+i = \sqrt{2} \left( \cos\frac{\pi}{4} + i\sin\frac{\pi}{4} \right)$ であるから、ベクトル $\overrightarrow{P_{n+1}P_{n+2}}$ はベクトル $\overrightarrow{P_nP_{n+1}}$ を $\frac{\pi}{4}$ 回転し、長さを $\sqrt{2}$ 倍したものである。
よって、$\overrightarrow{P_nP_{n+1}}$ と $\overrightarrow{P_{n+1}P_{n+2}}$ の始点を揃えたときのなす角は $\frac{\pi}{4}$ であるから、三角形の面積の公式より、
$$S = \frac{1}{2} |\overrightarrow{P_nP_{n+1}}| \cdot |\overrightarrow{P_{n+1}P_{n+2}}| \sin\frac{\pi}{4}$$
として計算できる。ここで、
$$|\overrightarrow{P_nP_{n+1}}| = |z_{n+1} - z_n|$$
$$|\overrightarrow{P_{n+1}P_{n+2}}| = \sqrt{2} |z_{n+1} - z_n|$$
であるから、代入すると、
$$S = \frac{1}{2} |z_{n+1} - z_n| \cdot \sqrt{2} |z_{n+1} - z_n| \cdot \frac{1}{\sqrt{2}} = \frac{1}{2} |z_{n+1} - z_n|^2$$
となる。(1)より $z_{n+1} - z_n = i(z_n + 1)$ であるから、
$$|z_{n+1} - z_n| = |i| |z_n + 1| = 4(\sqrt{2})^{n-1}$$
したがって、
$$S = \frac{1}{2} \left\{ 4(\sqrt{2})^{n-1} \right\}^2 = 2^{n+2}$$
解説
複素数平面における漸化式の標準的な問題である。 (1)の特性方程式による変形は、実数の数列と全く同じ手順で行うことができる。(2)での複素数の累乗の計算では、$(1+i)^2 = 2i$ となる性質を利用するか、極形式を利用してド・モアブルの定理を適用すると見通しがよい。 (3)は、複素数平面上の図形の性質をどう数式に落とし込むかがポイントとなる。単に3点の座標を $x, y$ 成分で表して面積公式を用いることも可能だが、解法1のように複素数特有の「回転・拡大」の意味を利用して基準となる三角形の面積から相似比を利用する方法や、解法2のように階差数列の比からベクトルのなす角と長さの比を直接読み取る方法が、計算を格段に簡略化できるため実戦的である。
答え
(1) $z_n = 4(1+i)^{n-1} - 1$ (2) すべての正の整数 $m$ について $$ z_{8m-7} = 2^{4m-2} - 1 $$ (3) $2^{n+2}$
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