名古屋大学 2007年 文系 第4問 解説

方針・初手
袋の中の玉の初期状態は赤1個、白1個の計2個である。1回の操作ごとに、取り出した玉と同じ色の玉を1個追加して戻すため、袋の中の玉の総数は1回の操作につき1個ずつ増える。 したがって、$N$ 回の操作後、袋の中の玉の総数は $N+2$ 個となる。また、追加される玉は赤か白のいずれかであるため、赤玉の個数 $m$ のとりうる値は $1 \leqq m \leqq N+1$ の整数である。
(1) は $N=3$ の場合なので、前の状態からの推移を順に計算して求めていく。 (2) は (1) で求めた結果から $p_N(m)$ の一般項を推測し、状態の推移に関する確率漸化式を立てて数学的帰納法で証明するアプローチ(解法1)と、各試行で赤・白を取り出す確率の積を直接計算するアプローチ(解法2)が考えられる。
解法1
(1)
$N$ 回操作後の状態から $N+1$ 回目の操作を行うとき、袋の中には合計 $N+2$ 個の玉が入っている。このとき赤玉が $m$ 個あるとすれば、赤玉を取り出す確率は $\frac{m}{N+2}$、白玉を取り出す確率は $\frac{N+2-m}{N+2}$ である。
各 $N$ において、赤玉が $m$ 個になる確率 $p_N(m)$ を順に求める。赤玉の個数 $m$ は $1 \leqq m \leqq N+1$ の範囲をとる。
$N=1$ のとき 赤玉を取り出すと赤玉が2個になり、白玉を取り出すと赤玉は1個のままなので、 $$ p_1(1) = \frac{1}{2}, \quad p_1(2) = \frac{1}{2} $$
$N=2$ のとき $$ \begin{aligned} p_2(1) &= p_1(1) \times \frac{2}{3} = \frac{1}{2} \times \frac{2}{3} = \frac{1}{3} \\ p_2(2) &= p_1(1) \times \frac{1}{3} + p_1(2) \times \frac{2}{3} = \frac{1}{2} \times \frac{1}{3} + \frac{1}{2} \times \frac{2}{3} = \frac{1}{3} \\ p_2(3) &= p_1(2) \times \frac{1}{3} = \frac{1}{2} \times \frac{1}{3} = \frac{1}{3} \end{aligned} $$ 注:$p_1(2)$ の状態(赤2、白1)から白を取り出す確率は $\frac{1}{3}$ ではなく $\frac{1}{3}$(白は1個)。赤を取り出す確率は $\frac{2}{3}$ であるため、上記の式で正しい。
$N=3$ のとき $$ \begin{aligned} p_3(1) &= p_2(1) \times \frac{3}{4} = \frac{1}{3} \times \frac{3}{4} = \frac{1}{4} \\ p_3(2) &= p_2(1) \times \frac{1}{4} + p_2(2) \times \frac{2}{4} = \frac{1}{3} \times \frac{1}{4} + \frac{1}{3} \times \frac{2}{4} = \frac{3}{12} = \frac{1}{4} \\ p_3(3) &= p_2(2) \times \frac{2}{4} + p_2(3) \times \frac{1}{4} = \frac{1}{3} \times \frac{2}{4} + \frac{1}{3} \times \frac{1}{4} = \frac{3}{12} = \frac{1}{4} \\ p_3(4) &= p_2(3) \times \frac{3}{4} = \frac{1}{3} \times \frac{3}{4} = \frac{1}{4} \end{aligned} $$
したがって、$m=1, 2, 3, 4$ のとき $p_3(m) = \frac{1}{4}$ であり、それ以外の $m$ については $p_3(m) = 0$ である。
(2)
(1) の結果より、 $$ p_N(m) = \frac{1}{N+1} \quad (1 \leqq m \leqq N+1) $$ であると推測される。これを $N$ に関する数学的帰納法で証明する。
(I) $N=1$ のとき (1) の計算より $p_1(1) = \frac{1}{2}, p_1(2) = \frac{1}{2}$ であり、推測は成り立つ。
(II) $N=k$ ($k \geqq 1$) のとき、 $$ p_k(m) = \frac{1}{k+1} \quad (1 \leqq m \leqq k+1) $$ が成り立つと仮定する。なお、この範囲外の $m$ については $p_k(m) = 0$ である。
$N=k+1$ 回の操作後に赤玉が $m$ 個 ($1 \leqq m \leqq k+2$) となるのは、以下の2つの排反な事象のいずれかが起こる場合である。 ・ $k$ 回操作後に赤玉が $m-1$ 個あり、$k+1$ 回目の操作で赤玉を取り出す事象 ・ $k$ 回操作後に赤玉が $m$ 個あり、$k+1$ 回目の操作で白玉を取り出す事象
$k$ 回操作後の袋の中には合計 $k+2$ 個の玉が入っている。赤玉が $x$ 個あるとき、赤玉を取り出す確率は $\frac{x}{k+2}$、白玉を取り出す確率は $\frac{k+2-x}{k+2}$ である。 したがって、$p_{k+1}(m)$ は次の漸化式を満たす。 $$ p_{k+1}(m) = p_k(m-1) \times \frac{m-1}{k+2} + p_k(m) \times \frac{k+2-m}{k+2} $$
$2 \leqq m \leqq k+1$ のとき、帰納法の仮定を代入すると、 $$ \begin{aligned} p_{k+1}(m) &= \frac{1}{k+1} \times \frac{m-1}{k+2} + \frac{1}{k+1} \times \frac{k+2-m}{k+2} \\ &= \frac{1}{(k+1)(k+2)} \{ (m-1) + (k+2-m) \} \\ &= \frac{k+1}{(k+1)(k+2)} \\ &= \frac{1}{k+2} \end{aligned} $$
$m=1$ のとき、$p_k(0) = 0$ であるため、 $$ p_{k+1}(1) = p_k(1) \times \frac{k+2-1}{k+2} = \frac{1}{k+1} \times \frac{k+1}{k+2} = \frac{1}{k+2} $$
$m=k+2$ のとき、$p_k(k+2) = 0$ であるため、 $$ p_{k+1}(k+2) = p_k(k+1) \times \frac{k+1}{k+2} = \frac{1}{k+1} \times \frac{k+1}{k+2} = \frac{1}{k+2} $$
以上より、すべての $m$ ($1 \leqq m \leqq k+2$) において $p_{k+1}(m) = \frac{1}{k+2}$ となり、$N=k+1$ のときも推測が成り立つ。
(I), (II) より、すべての自然数 $N$ について、推測が正しいことが示された。
解法2
(2) の別解
$N$ 回の操作で、赤玉を取り出した回数を $r$、白玉を取り出した回数を $w$ とする。 赤玉が $m$ 個 ($1 \leqq m \leqq N+1$) になるのは、初期状態の1個から赤玉が $m-1$ 回追加されたときであるから、$r = m-1$ であり、$w = N - r = N - m + 1$ である。
ここで、赤玉を $r$ 回、白玉を $w$ 回取り出す「ある特定の順番」で事象が起こる確率を考える。 分母は各操作での袋の中の玉の総数であるから、順番に無関係に $2 \times 3 \times \cdots \times (N+1) = (N+1)!$ となる。 一方、分子は赤玉を取り出すごとに $1, 2, \dots, r$ と増え、白玉を取り出すごとに $1, 2, \dots, w$ と増えるため、順番に無関係に $r! \cdot w!$ となる。 したがって、赤玉が $r$ 回、白玉が $w$ 回出る特定の順番が起こる確率はどれも等しく、 $$ \frac{r! \cdot w!}{(N+1)!} $$ となる。
$N$ 回の操作で赤玉を $r$ 回、白玉を $w$ 回取り出す順番の総数は ${}_N \mathrm{C}_{r}$ 通りであるから、求める確率は $$ \begin{aligned} p_N(m) &= {}_N \mathrm{C}_{r} \times \frac{r! \cdot w!}{(N+1)!} \\ &= \frac{N!}{r! \cdot (N-r)!} \times \frac{r! \cdot w!}{(N+1)!} \\ &= \frac{N!}{r! \cdot w!} \times \frac{r! \cdot w!}{(N+1)!} \quad (\because N-r = w) \\ &= \frac{N!}{(N+1)!} \\ &= \frac{1}{N+1} \end{aligned} $$ となる。
解説
本問は「ポリアの壺(Pólya urn model)」と呼ばれる有名な確率モデルを題材にしている。取り出した玉と同じ色を追加して戻すという操作を行うと、赤玉と白玉の割合の分布は常に一様分布(どの個数になる確率も等しい状態)に保たれることが知られている。
(1) で具体的に手を動かして確率が一定になる法則性を発見し、(2) でそれを証明するという流れが想定されている。解法1のように漸化式を立てて数学的帰納法を用いるのが最も手堅く、確率漸化式の基本手順に忠実な解法である。 一方、解法2のように確率の積の構造に着目すると、どのような順序で取り出しても確率が同じになるという対称性から、非常に鮮やかに一般項を求めることができる。計算量を大幅に減らせるため、この見方を身につけておくと応用範囲が広がる。
答え
(1) $1 \leqq m \leqq 4$ のとき $p_3(m) = \frac{1}{4}$ (それ以外の $m$ のとき $p_3(m) = 0$)
(2) $1 \leqq m \leqq N+1$ のとき $p_N(m) = \frac{1}{N+1}$ (それ以外の $m$ のとき $p_N(m) = 0$)
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