名古屋大学 1972年 理系 第3問 解説

方針・初手
各小問で求められている数列の極限を調べる。それぞれ以下の典型的な方針を選択する。
(1) 三角関数が含まれており、値の範囲が有界であるため、はさみうちの原理を用いる。 (2) 三角関数の中身が $0$ に近づくため、$\lim_{x\to0}\frac{\sin x}{x}=1$ の形を無理やり作り出す。 (3) 三角関数の周期性から $n$ の値によって符号が変わるため、適当な部分列を取り出して振動(発散)を示す。 (4) $\infty - \infty$ の不定形であるため、発散のスピードが速い項(この場合は $n$)でくくり出す。 (5) 数列の和の極限であるが、直接計算できない。各項を評価して不等式を作り、はさみうちの原理を用いる。 (6) $\frac{1}{n}$ でくくることで、区分求積法の形を作る。
解法1
(1)
$-1 \le \sin n \le 1$ であり、$n > 0$ であるから、各辺を $n$ で割ると
$$ -\frac{1}{n} \le \frac{\sin n}{n} \le \frac{1}{n} $$
$\lim_{n \to \infty} \left(-\frac{1}{n}\right) = 0$ かつ $\lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} = 0$ であるから、はさみうちの原理より
$$ \lim_{n \to \infty} a_n = \lim_{n \to \infty} \frac{\sin n}{n} = 0 $$
よって、$a_n$ は収束する。
(2)
$a_n$ の式を次のように変形する。
$$ a_n = n^2 \sin \frac{1}{n\pi} = \frac{n}{\pi} \cdot \frac{\sin \frac{1}{n\pi}}{\frac{1}{n\pi}} $$
ここで $x = \frac{1}{n\pi}$ とおくと、$n \to \infty$ のとき $x \to +0$ であるから、
$$ \lim_{n \to \infty} \frac{\sin \frac{1}{n\pi}}{\frac{1}{n\pi}} = \lim_{x \to +0} \frac{\sin x}{x} = 1 $$
また、$\lim_{n \to \infty} \frac{n}{\pi} = \infty$ である。したがって、
$$ \lim_{n \to \infty} a_n = \infty \cdot 1 = \infty $$
よって、$a_n$ は正の無限大に発散する。
(3)
$a_n = n \cos \frac{n\pi}{4}$ について考える。
$n = 8k$ ($k$ は自然数)のとき、
$$ a_{8k} = 8k \cos 2k\pi = 8k \to \infty \quad (k \to \infty) $$
一方、$n = 8k+4$ ($k$ は自然数)のとき、
$$ a_{8k+4} = (8k+4) \cos (2k\pi+\pi) = -(8k+4) \to -\infty \quad (k \to \infty) $$
$n$ のとり方によって極限が異なり(それぞれ正の無限大、負の無限大に発散し)、一定の値に近づかないため数列 $\{a_n\}$ は振動する。
よって、$a_n$ は発散する。
(4)
$a_n$ を $n$ でくくり出すと、
$$ a_n = \sqrt{2n} - n = n \left( \sqrt{\frac{2}{n}} - 1 \right) $$
ここで $\lim_{n \to \infty} \sqrt{\frac{2}{n}} = 0$ であるから、
$$ \lim_{n \to \infty} \left( \sqrt{\frac{2}{n}} - 1 \right) = -1 $$
また、$\lim_{n \to \infty} n = \infty$ であるから、
$$ \lim_{n \to \infty} a_n = \infty \cdot (-1) = -\infty $$
よって、$a_n$ は負の無限大に発散する。
(5)
$a_n$ はシグマ記号を用いて $a_n = \sum_{k=0}^{n} \frac{1}{(n+k)^2}$ と表せる。(項数は $n+1$ 個である)
各 $k$ ($0 \le k \le n$)に対して、分母を比較すると
$$ 0 < \frac{1}{(n+k)^2} \le \frac{1}{n^2} $$
が成り立つ。辺々を加えると、
$$ 0 < \sum_{k=0}^{n} \frac{1}{(n+k)^2} \le \sum_{k=0}^{n} \frac{1}{n^2} $$
ここで右辺を計算すると、
$$ \sum_{k=0}^{n} \frac{1}{n^2} = (n+1) \cdot \frac{1}{n^2} = \frac{1}{n} + \frac{1}{n^2} $$
$\lim_{n \to \infty} \left( \frac{1}{n} + \frac{1}{n^2} \right) = 0$ であるから、はさみうちの原理より
$$ \lim_{n \to \infty} a_n = 0 $$
よって、$a_n$ は収束する。
(6)
$a_n$ の式を次のように変形する。
$$ \begin{aligned} a_n &= \frac{1}{n} + \frac{1}{n+1} + \cdots + \frac{1}{2n} \\ &= \sum_{k=0}^{n} \frac{1}{n+k} \\ &= \frac{1}{n} + \sum_{k=1}^{n} \frac{1}{n+k} \\ &= \frac{1}{n} + \frac{1}{n} \sum_{k=1}^{n} \frac{1}{1 + \frac{k}{n}} \end{aligned} $$
$n \to \infty$ のとき、第1項は $\frac{1}{n} \to 0$ となる。 第2項は区分求積法を用いて定積分で表すと、
$$ \lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} \sum_{k=1}^{n} \frac{1}{1 + \frac{k}{n}} = \int_{0}^{1} \frac{1}{1+x} dx $$
この定積分を計算すると、
$$ \int_{0}^{1} \frac{1}{1+x} dx = \Big[ \log(1+x) \Big]_{0}^{1} = \log 2 - \log 1 = \log 2 $$
したがって、極限値は
$$ \lim_{n \to \infty} a_n = 0 + \log 2 = \log 2 $$
よって、$a_n$ は収束する。
解説
数列の極限を求める基本的な手法を網羅した問題である。
- (1), (5) は不等式を作って「はさみうちの原理」を用いる典型問題。(5) において項数が $n$ ではなく $n+1$ 個である点に注意が必要だが、極限の結論には影響しない。
- (2) は三角関数の極限公式 $\lim_{x\to0}\frac{\sin x}{x}=1$ を用いるため、無理やり形を作り出す式変形が有効である。
- (3) は三角関数の周期性に着目する。極限の振る舞いが異なる2つの部分列をとることで、一意の極限値を持たないこと(振動)を厳密に示すことができる。
- (4) は $\infty - \infty$ の不定形であるが、多項式や無理式の極限と同様に最高次(発散のスピードが最速の項)でくくることで解消できる。有理化を行ってもよいが、くくり出す方が計算が少ない。
- (6) は「区分求積法」の典型問題であり、和の極限を定積分に帰着させる。和の範囲が $k=0$ から始まるため、第1項を分離すると見通しが良い。
答え
(1) 収束する(極限値 $0$) (2) 発散する(正の無限大に発散) (3) 発散する(振動する) (4) 発散する(負の無限大に発散) (5) 収束する(極限値 $0$) (6) 収束する(極限値 $\log 2$)
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