名古屋大学 1972年 理系 第5問 解説

方針・初手
2つの円 $C_1: x^2+y^2=1$ と $C_2: x^2+y^2=3$ は、ともに原点 $O$ を中心とする同心円である。 同心円の対称性から、円 $C_1$ 上の点 $A$ を先に固定して考えても一般性を失わないが、図形の取り扱い上、先に円 $C_2$ 上の弦 $BC$ を固定して考えるほうが見通しが良い。 弦 $BC$ を固定したとき、三角形の面積が最大となるのは、点 $A$ が直線 $BC$ から最も遠い位置にあるときである。 この条件から三角形の「底辺」と「高さ」を一つの変数(直線 $BC$ と原点の距離、または中心角)で表し、一変数関数の最大値を求める問題に帰着させる。
解法1
原点 $O$ から直線 $BC$ に下ろした垂線の長さを $d$ とすると、点 $B, C$ は円 $C_2$ 上にあるため $0 \le d < \sqrt{3}$ である。 このとき、三平方の定理より弦 $BC$ の長さは
$$ BC = 2\sqrt{(\sqrt{3})^2 - d^2} = 2\sqrt{3 - d^2} $$
と表される。
次に、点 $A$ は円 $C_1$ 上を動く。$\triangle ABC$ の底辺を $BC$ とみたときの高さ $h$ は、点 $A$ から直線 $BC$ までの距離である。 $h$ が最大となるのは、点 $A$ が直線 $BC$ に垂直で原点 $O$ を通る直線上において、直線 $BC$ から最も遠い位置にあるときである。点 $A$ は半径 $1$ の円周上にあるため、原点 $O$ から点 $A$ までの距離は $1$ である。 したがって、直線 $BC$ を固定したときの高さの最大値は
$$ h = d + 1 $$
となる。 よって、弦 $BC$ と原点 $O$ の距離が $d$ であるときの $\triangle ABC$ の面積の最大値 $S(d)$ は
$$ S(d) = \frac{1}{2} \cdot BC \cdot h = \frac{1}{2} \cdot 2\sqrt{3 - d^2} \cdot (d + 1) = (d + 1)\sqrt{3 - d^2} $$
となる。
$S(d) > 0$ であり、$S(d)$ が最大となるとき $\{S(d)\}^2$ も最大となるので、平方した関数 $f(d) = \{S(d)\}^2$ を考える。
$$ f(d) = (d + 1)^2(3 - d^2) \quad (0 \le d < \sqrt{3}) $$
$f(d)$ を $d$ について微分すると
$$ \begin{aligned} f'(d) &= 2(d + 1)(3 - d^2) + (d + 1)^2(-2d) \\ &= 2(d + 1) \{ (3 - d^2) - d(d + 1) \} \\ &= 2(d + 1)(-2d^2 - d + 3) \\ &= -2(d + 1)(d - 1)(2d + 3) \end{aligned} $$
$0 \le d < \sqrt{3}$ の範囲において $f'(d) = 0$ となるのは $d = 1$ のときのみである。 $f(d)$ の増減表は以下のようになる。
| $d$ | $0$ | $\cdots$ | $1$ | $\cdots$ | $(\sqrt{3})$ |
|---|---|---|---|---|---|
| $f'(d)$ | $+$ | $0$ | $-$ | ||
| $f(d)$ | $3$ | $\nearrow$ | 極大 | $\searrow$ |
増減表より、$f(d)$ は $d = 1$ のとき極大かつ最大となる。 その最大値は
$$ f(1) = (1 + 1)^2 (3 - 1^2) = 4 \times 2 = 8 $$
$S(d) > 0$ より、$S(d)$ の最大値は $\sqrt{8} = 2\sqrt{2}$ である。
解法2
原点 $O$ から直線 $BC$ に下ろした垂線の足を $M$ とし、中心角の半分をパラメータとする。 $\angle BOM = \theta$ $\left(0 \le \theta < \frac{\pi}{2}\right)$ とおくと、円 $C_2$ の半径は $\sqrt{3}$ であるから、$OM = \sqrt{3}\cos\theta$、$BM = \sqrt{3}\sin\theta$ である。 したがって、弦 $BC$ の長さは
$$ BC = 2BM = 2\sqrt{3}\sin\theta $$
となる。 解法1と同様に、点 $A$ を円 $C_1$ 上で動かしたときの $\triangle ABC$ の高さの最大値 $h$ は、原点 $O$ から直線 $BC$ までの距離 $OM$ に円 $C_1$ の半径 $1$ を加えたものであるから
$$ h = OM + 1 = \sqrt{3}\cos\theta + 1 $$
となる。 このとき、$\triangle ABC$ の面積 $S(\theta)$ は
$$ \begin{aligned} S(\theta) &= \frac{1}{2} \cdot BC \cdot h \\ &= \frac{1}{2} \cdot 2\sqrt{3}\sin\theta \cdot (\sqrt{3}\cos\theta + 1) \\ &= 3\sin\theta\cos\theta + \sqrt{3}\sin\theta \\ &= \frac{3}{2}\sin 2\theta + \sqrt{3}\sin\theta \end{aligned} $$
これを $\theta$ について微分する。
$$ \begin{aligned} S'(\theta) &= 3\cos 2\theta + \sqrt{3}\cos\theta \\ &= 3(2\cos^2\theta - 1) + \sqrt{3}\cos\theta \\ &= 6\cos^2\theta + \sqrt{3}\cos\theta - 3 \end{aligned} $$
$S'(\theta) = 0$ とすると、$t = \cos\theta$ とおいた二次方程式 $6t^2 + \sqrt{3}t - 3 = 0$ を得る。 解の公式より
$$ t = \frac{-\sqrt{3} \pm \sqrt{(\sqrt{3})^2 - 4 \cdot 6 \cdot (-3)}}{2 \cdot 6} = \frac{-\sqrt{3} \pm \sqrt{3 + 72}}{12} = \frac{-\sqrt{3} \pm 5\sqrt{3}}{12} $$
$0 \le \theta < \frac{\pi}{2}$ より $\cos\theta > 0$ であるから
$$ \cos\theta = \frac{4\sqrt{3}}{12} = \frac{\sqrt{3}}{3} $$
このとき、$\sin\theta > 0$ より
$$ \sin\theta = \sqrt{1 - \left(\frac{\sqrt{3}}{3}\right)^2} = \sqrt{1 - \frac{1}{3}} = \frac{\sqrt{6}}{3} $$
$S'(\theta) = 0$ となる $\theta$ の前後で $S'(\theta)$ は正から負へと符号を変えるため、ここで極大かつ最大となる。 したがって、面積の最大値は
$$ \begin{aligned} S &= 3 \cdot \frac{\sqrt{6}}{3} \cdot \frac{\sqrt{3}}{3} + \sqrt{3} \cdot \frac{\sqrt{6}}{3} \\ &= \frac{3\sqrt{18}}{9} + \frac{\sqrt{18}}{3} \\ &= \frac{3 \cdot 3\sqrt{2}}{9} + \frac{3\sqrt{2}}{3} \\ &= \sqrt{2} + \sqrt{2} = 2\sqrt{2} \end{aligned} $$
解説
図形の対称性を活かして、動点をいかに効率よく固定するかがポイントである。 $\triangle ABC$ の頂点はすべて円周上にあるが、3点すべてを独立に動かすと変数が多くなり処理が煩雑になる。底辺となる弦を固定し、その弦に対して高さが最大となるように残りの1点の位置を決めることで、実質的な変数を1つに絞り込める。 解法1のように距離 $d$ を変数とする方針は、ルートを含む式が現れるため、面積を2乗した関数を微分するという典型的な処理が有効である。 解法2のように角度 $\theta$ を変数とする方針は、三角関数の微分に持ち込めるため計算の見通しが立ちやすい。
答え
$2\sqrt{2}$
自分の記録
誤りを報告
解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。











