名古屋大学 1999年 理系 第3問 解説

方針・初手
(1) ちょうど $k$ 回目で手続きが中止されるのは、「$1$ 回目から $k-1$ 回目まではすべて異なる箱に玉が入り、$k$ 回目にそれら $k-1$ 個の箱のいずれかに玉が入る」という事象が起こるときである。この条件に従って確率を立式する。
(2) (1)で求めた式に $N \leftarrow 2N, k \leftarrow N+1$ を代入する。階乗や累乗が含まれる式の対数の極限は、和の形に変形して区分求積法を用いるのが定石である。対数の性質を用いてシグマ記号で表し、$\frac{1}{N} \sum_{j=1}^N f\left(\frac{j}{N}\right)$ の形を作り出す。
解法1
(1)
ちょうど $k$ 回目で手続きが中止されるのは、以下の2つの事象が連続して起こる場合である。
- $1$ 回目から $k-1$ 回目まで、玉はすべて異なる箱に入る。
- $k$ 回目に、すでに玉が1つ入っている $k-1$ 個の箱のいずれかに玉が入る。
$1$ 回目から $k-1$ 回目までの玉の入り方は、相異なる $N$ 個の箱から $k-1$ 個を選んで玉を1つずつ入れる順列の総数に等しく、その場合の数は ${}_N\mathrm{P}_{k-1}$ 通りである。
続く $k$ 回目において、玉がすでに入っている $k-1$ 個の箱のいずれかに入る場合の数は $k-1$ 通りである。
$k$ 回の玉の入れ方の総数は $N^k$ 通りであるから、求める確率 $P(N,k)$ は
$$ P(N,k) = \frac{{}_N\mathrm{P}_{k-1} \cdot (k-1)}{N^k} $$
となる。階乗を用いて表すと、
$$ P(N,k) = \frac{N!}{(N-k+1)!} \cdot \frac{k-1}{N^k} $$
となる。
(2)
(1)の結果において、$N$ を $2N$ に、$k$ を $N+1$ に置き換えると、
$$ P(2N, N+1) = \frac{(2N)!}{(2N - (N+1) + 1)!} \cdot \frac{N+1-1}{(2N)^{N+1}} $$
$$ P(2N, N+1) = \frac{(2N)!}{N!} \cdot \frac{N}{2N \cdot (2N)^N} $$
$$ P(2N, N+1) = \frac{1}{2} \cdot \frac{(2N)!}{N! (2N)^N} $$
ここで、階乗の商 $\frac{(2N)!}{N!}$ は以下のように積の形で表せる。
$$ \frac{(2N)!}{N!} = (2N)(2N-1) \cdots (N+1) = \prod_{j=1}^N (N+j) $$
また、分母の $(2N)^N$ は $2N$ が $N$ 回掛けられているので、各項に $2N$ を割り当てると、
$$ \frac{(2N)!}{N! (2N)^N} = \prod_{j=1}^N \frac{N+j}{2N} = \prod_{j=1}^N \frac{1 + \frac{j}{N}}{2} $$
したがって、$P(2N, N+1)$ は次のように書ける。
$$ P(2N, N+1) = \frac{1}{2} \prod_{j=1}^N \frac{1 + \frac{j}{N}}{2} $$
両辺の自然対数をとると、
$$ \log P(2N, N+1) = \log \frac{1}{2} + \sum_{j=1}^N \log \left( \frac{1 + \frac{j}{N}}{2} \right) $$
これを $N$ で割ると、
$$ \frac{1}{N} \log P(2N, N+1) = -\frac{\log 2}{N} + \frac{1}{N} \sum_{j=1}^N \log \left( \frac{1 + \frac{j}{N}}{2} \right) $$
$N \to \infty$ としたときの極限を考える。第1項 $-\frac{\log 2}{N}$ は $0$ に収束する。 第2項は区分求積法により定積分に変換できるため、
$$ \lim_{N \to \infty} \frac{1}{N} \log P(2N, N+1) = 0 + \int_0^1 \log \left( \frac{1+x}{2} \right) dx $$
この定積分を計算する。
$$ \int_0^1 \log \left( \frac{1+x}{2} \right) dx = \int_0^1 \left( \log(1+x) - \log 2 \right) dx $$
$$ \int_0^1 \log(1+x) dx = \Bigl[ (1+x)\log(1+x) - (1+x) \Bigr]_0^1 = (2\log 2 - 2) - (-1) = 2\log 2 - 1 $$
したがって、求める極限値は、
$$ (2\log 2 - 1) - \int_0^1 \log 2 dx = (2\log 2 - 1) - \log 2 = \log 2 - 1 $$
となる。
解説
(1) は確率の基本問題である。「初めて〇〇が起こる」系の問題では、その直前まで「〇〇が起こらない」状況が続いていることを正しく捉えることが重要である。
(2) は極限と積分の融合問題である。階乗が絡む式の極限を求める際に、対数をとって積を和に変換し、区分求積法 $\lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} \sum_{k=1}^n f\left(\frac{k}{n}\right) = \int_0^1 f(x) dx$ を利用する手法は大学入試で頻出である。式変形の途中で $\frac{1}{N}$ と $\frac{j}{N}$ の形を意識的に作り出すことがポイントである。
答え
(1)
$$ P(N,k) = \frac{N!(k-1)}{(N-k+1)!N^k} $$
(2)
$$ \log 2 - 1 $$
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