名古屋大学 2001年 理系 第4問 解説

方針・初手
方程式 $z^6 = 1$ の解を具体的に求め、複素数平面上の点として実部と虚部に分けて考えます。各解が数列に何回現れるかを変数でおき、数列の和が $0$ になるという条件から、実部と虚部についての連立方程式を立てて論証を進めるのが確実なアプローチです。
解法1
方程式 $z^6 = 1$ の解は、$z = \cos\frac{k\pi}{3} + i\sin\frac{k\pi}{3} \ (k=0, 1, 2, 3, 4, 5)$ である。
便宜上、$\alpha = \frac{1}{2} + \frac{\sqrt{3}}{2}i$ とおくと、これら6つの解は $1, \alpha, \alpha^2, -1, \alpha^4, \alpha^5$ と表せる。具体的な値は以下の通りである。
- $k=0$ のとき $1$
- $k=1$ のとき $\alpha = \frac{1}{2} + \frac{\sqrt{3}}{2}i$
- $k=2$ のとき $\alpha^2 = -\frac{1}{2} + \frac{\sqrt{3}}{2}i$
- $k=3$ のとき $\alpha^3 = -1$
- $k=4$ のとき $\alpha^4 = -\frac{1}{2} - \frac{\sqrt{3}}{2}i$
- $k=5$ のとき $\alpha^5 = \frac{1}{2} - \frac{\sqrt{3}}{2}i$
数列 $z_1, z_2, \cdots, z_n$ の各項として、$1, \alpha, \alpha^2, -1, \alpha^4, \alpha^5$ が選ばれる回数をそれぞれ $x_0, x_1, x_2, x_3, x_4, x_5$ とする。これらは $0$ 以上の整数である。
仮定より、$1$ は含まれるので $x_0 \ge 1$ であり、$-1$ は含まれないので $x_3 = 0$ である。
各項の和が $0$ になるため、以下の式が成り立つ。
$$ x_0 \cdot 1 + x_1 \alpha + x_2 \alpha^2 + x_4 \alpha^4 + x_5 \alpha^5 = 0 $$
両辺の実部と虚部をそれぞれ比較する。実部の和より、
$$ x_0 + \frac{1}{2}x_1 - \frac{1}{2}x_2 - \frac{1}{2}x_4 + \frac{1}{2}x_5 = 0 $$
$$ 2x_0 + x_1 + x_5 = x_2 + x_4 \quad \cdots \text{①} $$
虚部の和より、
$$ \frac{\sqrt{3}}{2}x_1 + \frac{\sqrt{3}}{2}x_2 - \frac{\sqrt{3}}{2}x_4 - \frac{\sqrt{3}}{2}x_5 = 0 $$
$$ x_1 + x_2 = x_4 + x_5 \quad \cdots \text{②} $$
(1)
$-\frac{1}{2} + \frac{\sqrt{3}}{2}i$ ($\alpha^2$) と $-\frac{1}{2} - \frac{\sqrt{3}}{2}i$ ($\alpha^4$) が含まれること、すなわち $x_2 \ge 1$ かつ $x_4 \ge 1$ であることを背理法を用いて示す。
もし $x_2 = 0$ と仮定すると、②より $x_1 = x_4 + x_5$ となる。これを①に代入すると、
$$ 2x_0 + (x_4 + x_5) + x_5 = 0 + x_4 $$
$$ 2x_0 + 2x_5 = 0 $$
$x_0, x_5$ は $0$ 以上の整数であり、特に $x_0 \ge 1$ であるから、左辺は $2$ 以上となり矛盾する。したがって、$x_2 \ge 1$ である。
次に、もし $x_4 = 0$ と仮定すると、②より $x_5 = x_1 + x_2$ となる。これを①に代入すると、
$$ 2x_0 + x_1 + (x_1 + x_2) = x_2 + 0 $$
$$ 2x_0 + 2x_1 = 0 $$
同様に $x_0 \ge 1$ であるから左辺は $2$ 以上となり矛盾する。したがって、$x_4 \ge 1$ である。
以上より、$x_2 \ge 1$ かつ $x_4 \ge 1$ であるため、$-\frac{1}{2} + \frac{\sqrt{3}}{2}i$ と $-\frac{1}{2} - \frac{\sqrt{3}}{2}i$ はいずれも数列の中に含まれることが示された。
(2)
$n=6$ のとき、項数の合計が $6$ であるから、
$$ x_0 + x_1 + x_2 + x_4 + x_5 = 6 \quad \cdots \text{③} $$
①より $x_1 + x_5 = x_2 + x_4 - 2x_0$ である。これを③に代入して整理する。
$$ x_0 + (x_2 + x_4 - 2x_0) + x_2 + x_4 = 6 $$
$$ 2(x_2 + x_4) - x_0 = 6 $$
$$ x_0 = 2(x_2 + x_4) - 6 $$
$x_0 \ge 1$ であるから、
$$ 2(x_2 + x_4) \ge 7 \implies x_2 + x_4 \ge 4 $$
また、③より $x_2 + x_4 = 6 - (x_0 + x_1 + x_5) \le 5$ ($\because x_0 \ge 1, x_1 \ge 0, x_5 \ge 0$)であるから、$x_2 + x_4$ のとりうる値は $4$ または $5$ である。
(i) $x_2 + x_4 = 4$ のとき
$x_0 = 2 \times 4 - 6 = 2$ となる。このとき、③より $x_1 + x_5 = 6 - 2 - 4 = 0$ となり、$x_1, x_5 \ge 0$ であるから $x_1 = 0, x_5 = 0$ である。
②に代入して $0 + x_2 = x_4 + 0$ すなわち $x_2 = x_4$。
$x_2 + x_4 = 4$ であるから、$x_2 = 2, x_4 = 2$ と定まる。
まとめると、$(x_0, x_1, x_2, x_3, x_4, x_5) = (2, 0, 2, 0, 2, 0)$ である。
(ii) $x_2 + x_4 = 5$ のとき
$x_0 = 2 \times 5 - 6 = 4$ となる。このとき、$x_0 + x_2 + x_4 = 4 + 5 = 9 > 6$ となり、項の総和が $6$ 個であること(③式)に矛盾する。よってこの場合は不適である。
以上より、条件を満たす数列の項の構成は $1$ が $2$ 個、$-\frac{1}{2} + \frac{\sqrt{3}}{2}i$ が $2$ 個、$-\frac{1}{2} - \frac{\sqrt{3}}{2}i$ が $2$ 個の計 $6$ 個に限られる。
これらを並べる順列の総数が、求める数列のとり方の個数であるから、同じものを含む順列の計算により、
$$ \frac{6!}{2! 2! 2!} = \frac{720}{2 \times 2 \times 2} = 90 $$
ゆえに、求める個数は $90$ 個である。
解説
方程式 $z^n=1$ の解( $1$ の $n$ 乗根)の性質と、複素数の和に関する問題です。図形的に「複素数の和が $0$ になる」とは「該当する点を結んだ重心が原点に一致する」ことと同義ですが、直感的な図形処理だけで過不足なく論証しきるのは危険です。本解のように実部・虚部に分けて立式することで、厳密な証明と漏れのない数え上げが可能となります。特に「$-1$ が含まれない」という条件が強力であり、和を $0$ にするための成分の打ち消し合いが大きく限定されます。
答え
(1) 略証(解答の通り、実部と虚部の総和の式から個数を $0$ と仮定し、矛盾を導くことで示される) (2) $90$ 個
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