大阪大学 1984年 文系 第3問 解説

方針・初手
(1) 3次方程式の実数解の個数は、定数 $c$ を分離して曲線と直線の共有点の個数に帰着させて考えるのが定石である。$g(x) = x^3 + 5x^2 + 3x$ とおき、$y = g(x)$ のグラフと直線 $y = -c$ の上下関係から $c$ の範囲を求める。
(2) 「3個の相異なる整数解をもつ」という仮定から矛盾を導く。(1)で描いたグラフから解のおおよその範囲が分かるため、そこから整数解の候補を絞り込むとよい。また、「2個の相異なる整数解をもつ」場合についても、解と係数の関係を用いることで、解が重解をもつケースに限られることが分かる。
解法1
(1) 方程式 $f(x) = 0$ は、定数 $c$ を分離して次のように変形できる。
$$ x^3 + 5x^2 + 3x = -c $$
ここで、$g(x) = x^3 + 5x^2 + 3x$ とおく。 方程式 $f(x) = 0$ が3個の相異なる実数解をもつ条件は、曲線 $y = g(x)$ と直線 $y = -c$ が異なる3つの共有点をもつことである。 $g(x)$ を微分すると、
$$ g'(x) = 3x^2 + 10x + 3 = (3x + 1)(x + 3) $$
$g'(x) = 0$ となる $x$ は、$x = -3, -\frac{1}{3}$ である。 $g(x)$ は $x = -3$ で極大値、$x = -\frac{1}{3}$ で極小値をとる。それぞれ計算すると、
$$ g(-3) = (-3)^3 + 5(-3)^2 + 3(-3) = -27 + 45 - 9 = 9 $$
$$ g\left(-\frac{1}{3}\right) = \left(-\frac{1}{3}\right)^3 + 5\left(-\frac{1}{3}\right)^2 + 3\left(-\frac{1}{3}\right) = -\frac{1}{27} + \frac{5}{9} - 1 = -\frac{13}{27} $$
曲線 $y = g(x)$ と直線 $y = -c$ が異なる3点で交わるための条件は、直線 $y = -c$ が極小値と極大値の間にあることである。
$$ -\frac{13}{27} < -c < 9 $$
よって、求める $c$ の値の範囲は、
$$ -9 < c < \frac{13}{27} $$
(2) 前半:3個の相異なる整数解をもつことがあるか。
$f(x) = 0$ が3個の相異なる実数解をもつとき、(1)の増減から、3つの解 $\alpha, \beta, \gamma$ ($\alpha < \beta < \gamma$) はそれぞれ以下の範囲に存在する。
$$ \alpha < -3, \quad -3 < \beta < -\frac{1}{3}, \quad -\frac{1}{3} < \gamma $$
これらがすべて整数であると仮定する。 中央の解 $\beta$ は $-3 < \beta < -\frac{1}{3}$ を満たす整数なので、$\beta = -2$ または $\beta = -1$ に絞られる。
(i)
$\beta = -1$ のとき
$f(-1) = 0$ より、$-1 + 5 - 3 + c = 0$ すなわち $c = -1$ である。 このとき、方程式は $x^3 + 5x^2 + 3x - 1 = 0$ となる。 $x = -1$ を解にもつので因数分解でき、$(x+1)(x^2 + 4x - 1) = 0$ を得る。 $x^2 + 4x - 1 = 0$ の解は $x = -2 \pm \sqrt{5}$ であり、これらは整数ではない。 これは3つの解がすべて整数であることに矛盾する。
(ii)
$\beta = -2$ のとき
$f(-2) = 0$ より、$-8 + 20 - 6 + c = 0$ すなわち $c = -6$ である。 このとき、方程式は $x^3 + 5x^2 + 3x - 6 = 0$ となる。 $x = -2$ を解にもつので因数分解でき、$(x+2)(x^2 + 3x - 3) = 0$ を得る。 $x^2 + 3x - 3 = 0$ の解は $x = \frac{-3 \pm \sqrt{21}}{2}$ であり、これらも整数ではない。 同様に矛盾する。
(i), (ii) より、$f(x) = 0$ が3個の相異なる整数解をもつことはない。
後半:2個の相異なる整数を解としてもつのはどんな場合か。
方程式が2個の相異なる整数 $\alpha, \beta$ を解にもつとする。 残りの解を $\gamma$ とすると、3次方程式の解と係数の関係より、
$$ \alpha + \beta + \gamma = -5 $$
$\alpha, \beta$ は整数であるから、$\gamma = -5 - \alpha - \beta$ より $\gamma$ も必ず整数となる。 したがって、このときの3つの解はすべて整数である。 前半の議論により「3個の相異なる整数解」をもつことはないため、相異なる整数解が2個となるのは、3つの整数解のうち2つが重解となる場合に限られる。 重解をもつのは、曲線 $y = g(x)$ が直線 $y = -c$ に接するときであり、(1)の極値を利用すると $-c = 9$ または $-c = -\frac{13}{27}$ のときである。
(ア)
$-c = 9$ すなわち $c = -9$ のとき
方程式は $x^3 + 5x^2 + 3x - 9 = 0$ となる。 極大値をとる $x = -3$ で直線と接するため、$x = -3$ は重解である。 因数分解すると $(x+3)^2(x-1) = 0$ となり、解は $x = -3, 1$ である。 これは「2個の相異なる整数」を解にもつという条件を満たす。
(イ)
$-c = -\frac{13}{27}$ すなわち $c = \frac{13}{27}$ のとき
重解は極小値をとる $x = -\frac{1}{3}$ となるが、これは整数ではないため不適である。
以上より、2個の相異なる整数を解としてもつのは、$c = -9$ の場合である。
解法2
(2)後半の別解:解と係数の関係を直接用いる方法。
方程式が相異なる2つの整数 $\alpha, \beta$ を解にもつとすると、(2)前半の議論より残りの解も整数となる。3個の相異なる整数解はもたないため、3つの解は $\alpha, \alpha, \beta$ ($\alpha, \beta$ は相異なる整数)とおける。 解と係数の関係より、以下の3式が成り立つ。
$$ \begin{aligned} 2\alpha + \beta &= -5 \\ \alpha^2 + 2\alpha\beta &= 3 \\ \alpha^2\beta &= -c \end{aligned} $$
第1式より $\beta = -2\alpha - 5$ である。これを第2式に代入する。
$$ \alpha^2 + 2\alpha(-2\alpha - 5) = 3 $$
整理すると、
$$ 3\alpha^2 + 10\alpha + 3 = 0 $$
左辺を因数分解して、
$$ (3\alpha + 1)(\alpha + 3) = 0 $$
$\alpha$ は整数であるから、$\alpha = -3$ に限られる。 このとき、$\beta = -2(-3) - 5 = 1$ となり、$\alpha$ と $\beta$ は相異なる整数であるから適する。 第3式に代入して $c$ を求めると、
$$ -c = (-3)^2 \cdot 1 = 9 $$
よって、$c = -9$ である。このとき方程式の解は $x = -3$(重解)と $x = 1$ である。
解説
(1)は定数分離の基本問題であり、増減表やグラフの概形を正しく把握できれば容易である。 (2)の「3個の相異なる整数解をもつか」という問いに対しては、グラフから解の存在範囲を大まかに絞り込み、しらみつぶしに調べる論証が有効である。 「2個の相異なる整数解をもつ」という表現の解釈が本問の最大のポイントである。解と係数の関係から「残りの1つの解も必然的に整数になること」を示し、前半の結果と合わせることで「実質的に重解をもつ場合のみを調べればよい」と気づけるかどうかが問われている。
答え
(1)
$$ -9 < c < \frac{13}{27} $$
(2)
3個の相異なる整数解をもつことはない。 2個の相異なる整数を解としてもつのは、$c = -9$ の場合であり、そのときの解は $x = -3, 1$ である。
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