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東北大学 1994年 理系 第2問 解説

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東北大学 1994年 理系 第2問 解説

方針・初手

条件 $$ \int_0^1 x^k f(x),dx=0 \qquad (k=0,1,\dots,n-1) $$ は、$x^n$ に $n$ 次未満の多項式を加えても、$\int_0^1 (\cdots)f(x),dx$ の値が変わらないことを意味する。

したがって、まず $$ g(t)=\int_0^1 |x-t|^n,dx $$ の最小値を求め、次に $$ (x-t)^n-x^n $$ が $n$ 次未満の多項式になることを使う。最後は $$ \int_0^1 x^n f(x),dx=\int_0^1 (x-t)^n f(x),dx $$ と書き換えて絶対値評価を行えばよい。

解法1

(1) $g(t)$ の最小値

まず、$t<0$ のときは $0\le x\le 1$ に対して $$ |x-t|=x-t\ge x=|x| $$ であるから $$ g(t)=\int_0^1 |x-t|^n,dx \ge \int_0^1 x^n,dx=g(0) $$ となる。

同様に、$t>1$ のときは $$ |x-t|=t-x\ge 1-x=|x-1| $$ より $$ g(t)\ge \int_0^1 (1-x)^n,dx=g(1) $$ である。

よって、$g(t)$ の最小値は $0\le t\le 1$ の範囲で調べれば十分である。

このとき $$ g(t)=\int_0^t (t-x)^n,dx+\int_t^1 (x-t)^n,dx $$ であるから、積分すると $$ g(t)=\frac{t^{n+1}}{n+1}+\frac{(1-t)^{n+1}}{n+1} =\frac{t^{n+1}+(1-t)^{n+1}}{n+1} $$ を得る。

ここで $$ h(t)=t^{n+1}+(1-t)^{n+1} $$ とおくと、 $$ h'(t)=(n+1)\left(t^n-(1-t)^n\right) $$ である。

$0\le t<\dfrac12$ では $t^n<(1-t)^n$ より $h'(t)<0$、$\dfrac12<t\le 1$ では $h'(t)>0$ であるから、$h(t)$ は $t=\dfrac12$ で最小となる。

したがって $$ g(t) $$ の最小値は $$ g\left(\frac12\right) =\frac{1}{n+1}\left{\left(\frac12\right)^{n+1}+\left(\frac12\right)^{n+1}\right} =\frac{1}{2^n(n+1)} $$ であり、それを与える $t$ は $$ t=\frac12 $$ である。

(2) 等式の証明

二項展開により $$ (x-t)^n=\sum_{k=0}^n {}_{n}\mathrm{C}_{k}x^k(-t)^{,n-k} =x^n+\sum_{k=0}^{n-1}{}_{n}\mathrm{C}_{k}x^k(-t)^{,n-k} $$ である。

両辺に $f(x)$ を掛けて $0$ から $1$ まで積分すると $$ \int_0^1 (x-t)^n f(x),dx ======================== \int_0^1 x^n f(x),dx + \sum_{k=0}^{n-1}{}_{n}\mathrm{C}_{k}(-t)^{,n-k}\int_0^1 x^k f(x),dx $$ となる。

ここで仮定より $$ \int_0^1 x^k f(x),dx=0 \qquad (k=0,1,\dots,n-1) $$ であるから、和の部分はすべて $0$ になる。よって $$ \int_0^1 (x-t)^n f(x),dx=\int_0^1 x^n f(x),dx $$ がすべての実数 $t$ に対して成り立つ。

(3) 不等式の証明

$|f(x)|$ は連続関数であり、閉区間 $[0,1]$ 上で最大値 $M$ をとるので $$ |f(x)|\le M \qquad (0\le x\le 1) $$ である。

(2) より任意の実数 $t$ に対して $$ \int_0^1 x^n f(x),dx=\int_0^1 (x-t)^n f(x),dx $$ であるから、 $$ \left|\int_0^1 x^n f(x),dx\right| ================================= \left|\int_0^1 (x-t)^n f(x),dx\right| \le \int_0^1 |x-t|^n |f(x)|,dx \le M\int_0^1 |x-t|^n,dx $$ を得る。

右辺は任意の $t$ について成り立つので、(1) で求めた最小値を用いれば $$ \left|\int_0^1 x^n f(x),dx\right| \le M \cdot \frac{1}{2^n(n+1)} =\frac{M}{2^n(n+1)} $$ となる。示すべき不等式が得られた。

解説

この問題の本質は、仮定 $$ \int_0^1 x^k f(x),dx=0 \qquad (k=0,1,\dots,n-1) $$ によって、$n$ 次未満の項は積分すると消えるという点にある。

そのため、$x^n$ を $(x-t)^n$ に置き換えても積分値は変わらない。すると評価したい量は $$ \int_0^1 |x-t|^n,dx $$ の最小化に帰着される。つまり、代数的条件と解析的評価をつなぐために、$t$ を自由に動かして最も有利な形に変形するのが要点である。

特に (3) は、(2) の等式だけでは終わらず、(1) の最小値と組み合わせて初めて鋭い評価 $$ \frac{M}{2^n(n+1)} $$ が出る構造になっている。

答え

$$ g(t)=\int_0^1 |x-t|^n,dx $$ の最小値は $$ \frac{1}{2^n(n+1)} $$ であり、それを与える $t$ は $$ t=\frac12 $$ である。

また、すべての実数 $t$ に対して $$ \int_0^1 (x-t)^n f(x),dx=\int_0^1 x^n f(x),dx $$ が成り立つ。

さらに、$|f(x)|$ の $[0,1]$ における最大値を $M$ とすると $$ \left|\int_0^1 x^n f(x),dx\right|\le \frac{M}{2^n(n+1)} $$ が成り立つ。

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