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東京工業大学 1962年 理系 第5問 解説

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東京工業大学 1962年 理系 第5問 解説

方針・初手

関数列の漸化式に従って $f_1(x)$、$f_2(x)$ を具体的に計算し、$f_n(x)$ の一般項の形を予測する。予測した一般項を数学的帰納法で証明したのち、得られた式が初項と公比を持つ等比数列であることを利用して無限等比級数の和を計算する。その際、無限等比級数が収束する条件である「公比の絶対値が $1$ 未満であること」を適切に示す。

解法1

$n=1$ のとき、与えられた漸化式より以下のように計算できる。

$$ f_1(x) = \frac{1}{2h}\int_{x-h}^{x+h} f_0(t)dt = \frac{1}{2h}\int_{x-h}^{x+h} \cos t dt $$

定積分を計算すると、

$$ f_1(x) = \frac{1}{2h} \Big[ \sin t \Big]_{x-h}^{x+h} = \frac{1}{2h} \{ \sin(x+h) - \sin(x-h) \} $$

ここで、和と積の公式 $\sin A - \sin B = 2 \cos \frac{A+B}{2} \sin \frac{A-B}{2}$ を用いると、$\sin(x+h) - \sin(x-h) = 2 \cos x \sin h$ となるので、

$$ f_1(x) = \frac{1}{2h} (2 \cos x \sin h) = \frac{\sin h}{h} \cos x $$

この結果から、すべての $n=0, 1, 2, \cdots$ に対して一般項は次のように表せると推測できる。

$$ f_n(x) = \left( \frac{\sin h}{h} \right)^n \cos x $$

これを数学的帰納法によって証明する。

(i)

$n=0$ のとき

$$ f_0(x) = \left( \frac{\sin h}{h} \right)^0 \cos x = \cos x $$

となり、問題の定義と一致するため成り立つ。

(ii)

$n=k$ ($k \ge 0$)のとき、$f_k(x) = \left( \frac{\sin h}{h} \right)^k \cos x$ が成り立つと仮定する。

$n=k+1$ のとき、漸化式より、

$$ f_{k+1}(x) = \frac{1}{2h}\int_{x-h}^{x+h} f_k(t)dt $$

帰納法の仮定を代入すると、

$$ \begin{aligned} f_{k+1}(x) &= \frac{1}{2h}\int_{x-h}^{x+h} \left( \frac{\sin h}{h} \right)^k \cos t dt \\ &= \left( \frac{\sin h}{h} \right)^k \frac{1}{2h}\int_{x-h}^{x+h} \cos t dt \end{aligned} $$

$n=1$ のときの計算結果 $\frac{1}{2h}\int_{x-h}^{x+h} \cos t dt = \frac{\sin h}{h} \cos x$ を用いると、

$$ f_{k+1}(x) = \left( \frac{\sin h}{h} \right)^k \left( \frac{\sin h}{h} \cos x \right) = \left( \frac{\sin h}{h} \right)^{k+1} \cos x $$

となり、$n=k+1$ のときも成り立つ。

(i)、(ii) より、すべての $0$ 以上の整数 $n$ について $f_n(x) = \left( \frac{\sin h}{h} \right)^n \cos x$ である。

次に、無限級数 $\sum_{n=0}^{\infty} f_n(x)$ を求める。これは初項 $\cos x$、公比 $\frac{\sin h}{h}$ の無限等比級数である。 公比の絶対値について考える。$h$ は正の定数であるため、以下のようになる。

$0 < h \le \frac{\pi}{2}$ のとき、$0 < \sin h < h$ であるから、$0 < \frac{\sin h}{h} < 1$ が成り立つ。

$h > \frac{\pi}{2}$ のとき、$|\sin h| \le 1 < \frac{\pi}{2} < h$ より、$|\sin h| < h$ が成り立つ。

したがって、$h>0$ において常に $|\sin h| < h$ であり、公比の絶対値について $\left| \frac{\sin h}{h} \right| < 1$ が成り立つ。 よって、この無限等比級数は収束し、その和は次のように求められる。

$$ \sum_{n=0}^{\infty} f_n(x) = \frac{\cos x}{1 - \frac{\sin h}{h}} = \frac{h \cos x}{h - \sin h} $$

解説

与えられた関数列の漸化式から数項を具体的に計算し、一般項を予測して数学的帰納法で示すという、漸化式問題の定石に則って進める。計算過程で積分変数が $t$ であり、$x$ や $h$ は積分の中では定数として扱えることに注意する。

また、無限等比級数の和を求める際、公比 $r$ について $|r| < 1$ の確認をせずに公式を適用すると論理の飛躍となるため、$|\sin h| < h$ の成立条件への言及は必須である。

答え

$$ \frac{h \cos x}{h - \sin h} $$

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