東京工業大学 1987年 理系 第1問 解説

方針・初手
方程式の係数の符号から、まずはすべての実数解が負であることを示す。その後、与えられた係数の不等式($a < 1$ および $b \geqq c$)を用いて、すべての解が $-1$ より大きいことを証明する。 関数 $f(x)$ に $x=-1$ を代入した値の符号に着目する方法と、解と係数の関係のみから直接不等式を評価する方法の2通りを解説する。
解法1
$f(x) = x^3 + ax^2 + bx + c$ とおく。 条件 $1 > a > 0, b \geqq c > 0$ より、$a > 0, b > 0, c > 0$ である。 $x \geqq 0$ のとき、$x^3 \geqq 0, ax^2 \geqq 0, bx \geqq 0, c > 0$ であるから、
$$ f(x) \geqq c > 0 $$
となり、$f(x) = 0$ は非負の実数解を持たない。 したがって、3つの実数解 $\alpha, \beta, \gamma$ はすべて負である。 一般性を失わず、$\alpha \leqq \beta \leqq \gamma < 0$ とおく。
次に、$f(-1)$ の値を調べる。
$$ f(-1) = (-1)^3 + a(-1)^2 + b(-1) + c = a - 1 - (b - c) $$
条件より $a < 1$ であるから $a - 1 < 0$ であり、$b \geqq c$ であるから $-(b - c) \leqq 0$ である。 よって、$f(-1) < 0$ が成り立つ。
ここで、$\alpha \leqq -1$ であると仮定し、矛盾を導く。 $f(x) = (x - \alpha)(x - \beta)(x - \gamma)$ と因数分解できるため、
$$ f(-1) = (-1 - \alpha)(-1 - \beta)(-1 - \gamma) $$
である。$-1$ と $\beta, \gamma$ の大小関係により、以下の3つの場合に分ける。
(1)
$\alpha \leqq \beta \leqq \gamma \leqq -1$ の場合 $-1 - \alpha \geqq 0$, $-1 - \beta \geqq 0$, $-1 - \gamma \geqq 0$ であるから、それらの積は $f(-1) \geqq 0$ となる。これは $f(-1) < 0$ に矛盾する。
(2)
$\alpha \leqq -1 < \beta \leqq \gamma$ の場合 $-1 - \alpha \geqq 0$, $-1 - \beta < 0$, $-1 - \gamma < 0$ であるから、それらの積は $f(-1) \geqq 0$ となる。これも $f(-1) < 0$ に矛盾する。
(3)
$\alpha \leqq \beta \leqq -1 < \gamma$ の場合 解と係数の関係より、$\alpha + \beta + \gamma = -a$ である。 $\alpha \leqq -1$, $\beta \leqq -1$, $\gamma < 0$ であるから、
$$ \alpha + \beta + \gamma < -1 - 1 + 0 = -2 $$
すなわち $-a < -2$ となり $a > 2$ を得るが、これは条件 $1 > a$ に矛盾する。
(1)〜(3)のいずれの場合も矛盾が生じるため、$\alpha \leqq -1$ の仮定は誤りであり、$-1 < \alpha$ である。 以上より、$-1 < \alpha \leqq \beta \leqq \gamma < 0$ となり、題意が示された。
解法2
解法1と同様に、$a > 0, b > 0, c > 0$ であることから、3つの実数解はすべて負である。 すなわち $\alpha < 0, \beta < 0, \gamma < 0$ が成り立つ。
解と係数の関係より、
$$ \alpha + \beta + \gamma = -a $$
である。条件 $a < 1$ より、$-a > -1$ であるから、
$$ \alpha + \beta + \gamma > -1 $$
が成り立つ。 ここで、$\alpha$ について解くと、
$$ \alpha = -a - (\beta + \gamma) $$
となる。$\beta < 0, \gamma < 0$ より $\beta + \gamma < 0$ であるから、$-(\beta + \gamma) > 0$ である。 これと $-a > -1$ を合わせると、
$$ \alpha = -a - (\beta + \gamma) > -1 + 0 = -1 $$
となり、$-1 < \alpha$ が導かれる。 $\beta, \gamma$ についても全く同様の計算から $-1 < \beta$ および $-1 < \gamma$ が示される。 したがって、$-1 < \alpha, \beta, \gamma < 0$ となる。
解説
本問は3次方程式の解の配置を問う問題である。 解法1は、$f(-1)$ の符号とグラフの性質を組み合わせる定石の解法である。問題文にある $b \geqq c$ という一見唐突な条件は、$f(-1) = a - 1 - (b - c) < 0$ を確定させるためのヒントとして機能している。 一方で解法2のように、解と係数の関係を用いると非常に簡潔に証明を終えることができる。「3つの負の数の和が $-1$ より大きければ、それぞれの数は当然 $-1$ より大きくなる」というシンプルな論理である。実は題意を示すだけであれば $b \geqq c$ の条件は直接使わなくても証明できる構成になっている(条件を満たす方程式が実数解を持つならば、自動的に $b > c$ が成立する)。
答え
$$ -1 < \alpha \leqq \beta \leqq \gamma < 0 $$
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